
Levi Strauss & Co.(リーバイス)2026年度 第2四半期 決算分析(2026/7/8)
1. エグゼクティブ・サマリー
リーバイスの2026年度第2四半期は、売上・利益ともにコンセンサスを上回るクリーンなBeat(ビート)に、通年ガイダンスの上方修正(Raise)が2四半期連続で伴った好決算であった。純収益は$1,562百万(報告+8%/オーガニック+6%)でコンセンサス$1.52Bを+2.8%上回り、調整後希薄化後EPSは$0.28(+27%)でコンセンサス$0.244を+14.8%上回った。粗利率・営業利益率・調整後EBITマージンはいずれも改善し、売上成長を上回る利益成長(営業レバレッジ)を実現している。


押さえるべきポイント
①【ビート】トップライン 純収益$1,562M(報告+8%/オーガニック+6%)。前年同期の欧州DC移管に伴う出荷ズレが約2ポイントの押下げ要因となる中での実績。
②【ビート】ボトムライン 調整後EPS$0.28(+27%)でコンセンサス超過。GAAP継続事業EPSも$0.24(+20%)。一過性の水増しに依存しない「質の高い」ビート。
③【マージン改善】 粗利率62.7%(+10bp、関税・FX逆風下)、調整後EBITマージン9.0%(+70bp)。調整後SG&Aは対売上比で-80bpのレバレッジ。
④【Raise】通年ガイダンス上方修正 報告売上成長を7.0〜7.5%へ、調整後EPSを$1.46〜$1.52へ引上げ(2四半期連続)。四半期配当も+14%($0.16/株)へ増配。
⑤【全方位成長】 チャネル・性別・カテゴリー・地域のすべてで成長。女性+11%、アジア+12%、DTC+8%(comp+6%、17期連続プラス)。拡大したTAM(頭からつま先までのデニムライフスタイル)が成長の約1/3を寄与。
⑥【株価は下落】 これだけの好決算にもかかわらず、株価は時間外で約-5.8%下落。下期の慎重ガイド(Q3売上を+4〜5%へ減速見通し)と決算前の上昇に対する材料出尽くし(Sell the news)が背景(第9章)。
総じて本四半期は「業績・ガイダンスは文句のないBeat&Raiseだが、株式市場の反応は下期の減速見通しと高い期待値に対する反落」という構図であった。
2. 当四半期(Q2'26)業績の詳細


純収益は$1,562百万で報告ベース+8.0%、オーガニックベース+5.7%(社内では"+6%"と表現)。為替が報告値に約1.5〜2ポイントの追い風、前年の欧州DC移管に伴う出荷ズレ(後述)が約2ポイントの向かい風となった。粗利率は62.7%と+10bp改善したが、これは低下した製品コストと価格施策が寄与した一方、関税とFXが逆風となった純額での改善である。調整後SG&Aは前年比+6.5%(うち約1/3はFX)だが、対売上比では-80bpのレバレッジが働き、調整後EBITマージンは9.0%(+70bp)へ拡大した。

その結果、調整後EBITは$141.2百万(+18.4%)、調整後純利益は$109.8百万(+24.1%)、調整後EPSは$0.28(+27%)と、いずれも売上成長(+8%)を大きく上回るペースで拡大した。GAAP継続事業純利益も$94.8百万(+19.1%)、EPS$0.24(+20%)。なお非継続事業(Dockers®)の純損失は$(7.5)百万と前年の$(12.6)百万から縮小し、純利益合計は$87.3百万(+30.3%)となった。
3. セグメント別業績 ― 米州・アジアが牽引、欧州は出荷ズレの反動


3.1 地域別の内訳
・Americas(米州): $815.5M(報告+9.0%/オーガニック+6.8%)。米国はDTC・卸ともに堅調で報告+5%。営業利益率は関税逆風で-40bp(コスト施策・価格が一部相殺)。
・Europe(欧州): $420.2M(報告+4.2%/オーガニック-0.8%)。オーガニックのマイナスは前年(2025年)のDC移管に伴う出荷ズレ(Q1→Q2)の反動で、この特殊要因(Dawson、約8ポイント)を除けば実質+7%。H1で見れば+5%(オーガニック)とガイド通り。DTCは+7%と加速し、粗利改善と物流費減で営業利益率は21.1%(+約400bp)へ急改善。
・Asia(アジア): $283.7M(報告+10.1%/オーガニック+11.9%)。トルコ・日本・インドが牽引、中国も新経営陣の下で改善の兆し。営業利益率15.0%(+350bp)。
・Beyond Yoga®: $42.6M(+15.8%)。ECが牽引、リネン新カプセルがトップセラーに。営業損失は$(2)Mへ縮小。

4. チャネル・ブランド別 ― DTCが51%を占め成長を牽引


DTC(直販)は$793.6M(報告+10.8%/オーガニック+8.4%)で総収益の51%を占め、既存店(comp)売上高は+6%と17四半期連続のプラス。Eコマースは+17%(オーガニック)で、UPT・AUR・トラフィック・コンバージョン全てが改善し、サイト上のプロモ削減が寄与した。Eコマースは過去3年で約+60%成長したが依然全社の約12%にとどまり、ピア比で低浸透=伸びしろとされる。ロイヤルティ会員は当四半期+300万人で世界約5,000万人に。
卸(Wholesale)は$768.4M(報告+5.3%/オーガニック+3.1%)で米国卸が牽引。四半期ごとの変動はあるが、H1では堅調で、欧州の下期先行予約は高single digit成長と好調。ブランド別ではLevi's®が+8.1%(男女とも市場シェア首位・拡大)、値頃向けのSignature™は+1.6%(H1では+9%、下期加速見込み)、Beyond Yoga®が+15.8%。
5. 収益性とマージン ― 売上成長を上回る利益成長


本四半期の収益性は全マージンが改善した。粗利率62.7%(+10bp)は関税・FX逆風下での改善であり、構造的ドライバー(DTC比率上昇、女性・国際シフト、プロモ削減、コスト効率)が下支えした。調整後SG&Aの対売上比-80bpのレバレッジと相まって、営業利益率は7.8%(+35bp)、調整後EBITマージンは9.0%(+70bp)へ拡大。利益指標の成長率(営業利益+13%、調整後EBIT+18%、調整後純利益+24%)はいずれも売上成長(+8%)を上回り、規律ある費用管理による営業レバレッジが明確に効いている。成長ドライバーの内訳は数量2/3・AUR(平均単価)1/3で、AURの上昇はfull-price販売比率の上昇・DTC/BlueTab/女性のミックス改善による(通年は数量:AURが概ね50:50を想定)。
6. EPSとコンセンサス比較

調整後希薄化後EPSは$0.28で前年$0.22から+27%(定通貨+22%)増加し、コンセンサス$0.244を+$0.036(+14.8%)上回った。GAAP継続事業EPSも$0.24(前年$0.20、+20%)で、コンセンサス$0.244とほぼ同水準。一過性の税便益やのれん戻入などに依存しない、事業実態に基づくビートである点が特徴。自社株買い(ASR)による希薄化後株式数の減少(399.0M→389.6M)もEPSを下支えした。
(注)提供コンセンサスのEPS基準は明示されていないが、同社は調整後EPSでガイドしており、$0.244は調整後EPSベースと判断した(GAAP継続事業EPS$0.24とも近接する)。
7. 財政状態・キャッシュフロー・株主還元



現金及び現金同等物は$849.3M、総流動性は約$1.8B。在庫は前年同期比-7%と規律ある管理が続き、当期・地域横断で健全な構成。H1営業CFは$482.3M(前年$238.0M)とほぼ倍増し、Q2単独の調整後FCFは$230.9M(前年比+約58%)へ拡大した。
株主還元は、Q2に配当$53.9M($0.14/株、+5%)を支払い、さらに四半期配当を+14%の$0.16/株へ増配(約$62M、8/5支払、7/22基準)を宣言。これは過去2年の年間増配幅の倍にあたる。Q1に着手した$200MのASR(加速自社株買い)はQ3に決済見込みで、自社株買い枠は$240M残存。会社はFCFの少なくとも55〜65%を配当と機動的な自社株買いで還元する方針で、2026年はDockers売却収入とASRにより還元余力が一段と強い。
8. FY2026 通年ガイダンス ― 2四半期連続の上方修正


強い上期実績を背景に、通年(2026年11月29日期)ガイダンスを引き上げた。報告純収益成長を7.0〜7.5%(旧5.5〜6.5%)、オーガニック純収益成長を5.5〜6.0%(旧4.5〜5.5%)、調整後希薄化後EPSを$1.46〜$1.52(旧$1.42〜$1.48)へそれぞれ上方修正。粗利率は前年比+約10bp、調整後EBITマージンは12%(+60bp)を見込む。前提は中国からの輸入に対する追加関税30%・その他20%で、関税還付(累計約$80M支払済)や前四半期示した$35M/COGSの便益はガイダンスに未算入=上振れ余地。
8.1 下期の見通し(Q3ガイダンス)
一方で下期は減速を見込む。Q3の報告・オーガニック純収益成長は+4〜5%(FX寄与なし)、調整後EPSは$0.34〜$0.36(税率・FXで$0.02〜0.03の逆風含む)。経営陣はこの減速を「保守性・慎重さ(prudence/conservatism)」と明言し、実際にはDTCで数ポイント、卸でやや保守的に見積もっているとした。Q4は関税影響のラップ・A&P費用の正常化・物流費(Hebron閉鎖)改善・数量レバレッジで営業利益率が約14%へ大きく改善し、通年で調整後EBITマージン+60bpの達成を見込む。
9. 株価リアクション ― 好決算でも時間外は下落


クリーンなBeat&Raiseにもかかわらず、株価は好意的に反応しなかった。 発表直前の7/8通常引けは$24.37(当日は決算前に-1.2%)で、引け後の決算発表を受けて時間外で一時$22.70(-6.9%)まで下落、終盤で約$22.96(-5.8%)。翌7/9のプレマーケットでは約$23.30〜$23.59(-3.2〜-4.4%)へ下げ幅を縮小した。
下落の背景は主に3点と整理できる。①下期の慎重ガイド:Q3売上を+4〜5%へ減速見通しとし、H1の報告+8%からの鈍化が意識された(経営陣自ら保守的と認めた点も、逆に「上振れ確度」への確信を欠くと受け取られ得る)。②材料出尽くし(Sell the news):決算前にかけて株価が上昇していた分の反動。③フロースルーへの物足りなさ:Q2の売上が予想を約3ポイント上回ったのに対し調整後EBITマージンがガイド上限止まりだった点を、複数アナリストが質疑で指摘した。業績の質は高いものの、株式市場は「相応に織り込み済み+下期減速」を優先した反応となった。
(注)株価はyfinance取得の参考値。7/9の通常取引は本レポート作成時点で進行中のため、時間外・プレマーケットの値を記載している。
10. カンファレンスコール Q&A(全8問)

コールのQ&Aでは8名のアナリストが質問した。要旨は表10の通りだが、投資家の関心が高かった論点を補足する。
・下期減速の性質(JPM/Citi):経営陣は「消費者は依然resilient、需要はhealthy」とし、減速見通しは実需の悪化ではなく保守的な見積もりと明言。四半期進行中のトレンドはQ3ガイド・通年ガイドを支持するとした。
・Q4マージンの急改善要因(Wells Fargo):数量レバレッジ、A&P費用の対前年減、Hebron閉鎖による物流費改善、関税影響のラップの4点で、Q4営業利益率は2024年並みの約14%を見込む。
・関税(BofA):$35Mの便益・累計約$80Mの還付はいずれもガイダンス未算入。環境が流動的(7月下旬に税率が19〜20%へ戻る観測)なため保守的に据え置いており、実現すれば上振れ要因。
・成長エンジン(JPM/Raymond James):拡大TAMが成長の約1/3を寄与、数量2/3・AUR1/3。BlueTab(プレミアム、$200〜350)は2四半期連続+40%で、将来$100〜200M規模への成長余地。ERP刷新(2027年半ば完了予定)はデータ解放・AI活用・会計年度変更の基盤になるとした。
11. 論点整理
本書は投資判断・推奨を行うものではなく、開示情報からの客観的な論点整理を目的とする。
11.1 ポジティブ材料
①クリーンなBeat(売上・EPSともコンセンサス超、一過性依存なし)/②2四半期連続のRaise(売上・EPSガイド引上げ+増配+14%)/③全方位成長(channel/gender/category/geo、女性+11%・アジア+12%・DTC17期連続プラス)/④営業レバレッジ(売上+8%に対し調整後EBIT+18%)/⑤拡大TAM・プレミアム化(頭からつま先のライフスタイル化が成長の1/3、BlueTab+40%)/⑥強い財務・FCF(在庫-7%、調整後FCF+約58%、総流動性約$1.8B)/⑦関税還付・便益がガイド外の上振れ余地。
11.2 警戒・留意すべき点
①下期の減速見通し(Q3売上+4〜5%へ鈍化、経営陣自ら保守的と明言)/②好決算でも株価は時間外-5.8%(高い期待値・材料出尽くし)/③関税・FXの不確実性(前提は中国30%/他20%、7月下旬に変動観測)/④欧州オーガニックのマイナス(特殊要因だが表面上はマイナス)/⑤Q2フロースルーへの市場の物足りなさ(EBITマージンがガイド上限止まり)/⑥非継続事業Dockers(売却進行中、継続事業ベースの見方が必要)/⑦AUR依存の一部(値上げ・プロモ削減の持続性は消費環境次第)。
12. 出所と免責事項
12.1 一次出所
・プレスリリース(Exhibit 99.1) ― Levi Strauss & Co./2026年7月8日発表/第2四半期(2026年5月31日締め)実績・財務諸表・非GAAP調整表・ガイダンス
・Form 8-K ― 2026年7月8日提出(Item 2.02、Exhibit 99.1添付)
・Form 10-Q ― 2026年5月31日締め四半期報告書
・カンファレンスコール文字起こし ― 2026年7月8日開催(経営陣説明+アナリストQ&A全8問)
・コンセンサス ― アナリスト予想(調整後EPS $0.244/純収益 $1.52B)
・株価: yfinance(30分足・時間外・日足、参考値)
12.2 免責事項
本レポートは、Levi Strauss & Co.が公表した2026年度第2四半期決算関連資料の内容を整理・要約・分析する目的で作成されたものであり、投資推奨・売買勧誘・レーティング付与・目標株価の提示を一切目的としていません。 記載した財務数値は原則として同社開示(プレスリリース/8-K/10-Q)をそのまま転記・計算したものであり、独自の監査・検証を経たものではありません。数値は特記なき限り継続事業ベース・米ドル建てです。オーガニック純収益・調整後EBIT・調整後EPS等は非GAAP指標であり、GAAP指標を代替するものではありません。
株価はyfinance取得の参考値であり、確定値ではありません。時間外・プレマーケットの価格は流動性が低く、通常取引の始値・終値と乖離する可能性があります。ガイダンス・見通しは将来予測であり、関税・為替・消費環境・供給網等の不確実性により実際の結果と大きく異なる可能性があります。最終的な投資判断にあたっては、必ずSEC EDGARで公開される一次資料、適格な金融商品取引業者の助言、その他独立した情報源を参照してください。本レポート作成者は、本書に基づく判断によって生じた如何なる損害についても責任を負いません。