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Photo bylyricalspirit

嫁、梅仕事手伝うってよ

    梅雨の晴れ間、義母が梅仕事をしていた。


    毎年、畑で梅をもぎ、赤しそを摘み、梅干しを漬ける。


    私は梅仕事に参加したことは一度もない。


    義母もこんなアホ嫁に頼みもせず、せっせとやっている。


    80もとうにすぎ、腰も曲がり始め、「しんどい、しんどい」と、言いながら畑仕事をやっている。


    「絶対手伝わないから」


    そう言って嫁にきた。


    四六時中一緒は耐えられない、手伝ったら、あてにされる。


    その気持ちを30年持ち続け、果樹の繁忙期には時々手伝ったが、あとは見ないふり。


    その代わりに家事はきっちりやってきたつもり。


    ただ、味噌づくりだけは引き継いだ。


    私は味噌が大好きだし、まだ恋人同士だった頃、初めてこの家で飲んだ味噌汁の美味しさは感動だった。


    味噌も手伝わずにいたが、3年前から観念し、引き継いで、私の仕事とした。


    案外力仕事で、そして楽しい。


    今年は旦那も参加し、夫婦合作の味噌を仕込んだ。


    頭では梅仕事も私の番かと思っていた。

    でも、なんだかシャクだった。


    謎の意地とプライドで見て見ぬふりをし、庭に干してある梅干しをこっそり盗み食いしたりしていた。


    あったか白飯にお日様の匂いのする梅干しはサイコーだった。



    今日、庭先で義母が赤しそを塩もみしていた。


    元々小さい人だが、腰も悪いのに、力を入れてる姿を見て、「いよいよか」と思った。


    「大変だね、私もやろうか?」


    言ってみた。


    「えっ?あっ?うん…じゃあこれからやってもらおうか」


    遠慮気味に言われた。


    ちょっと!空を仰がないでくださいね。

    台風はきてませんよ。



    ふたり並んで赤しその塩もみをする。

    「手先だけじゃなく、腰を入れてね」


    指示がとぶ。


    私は指図をされるのが嫌な人間だった。

    だけど、今日は嫌じゃない。

    素直に聞き入れた。


    無言…。


    ザッザッと混ぜる音。


    頭で回想する。

    幼い頃、母が庭先で梅仕事してたこと。

    嫁いだ当初、おばあさんがやってたこと。

    母の手伝いはもうすることがない。

    なら今からは義母の手伝いをすることが親の手伝いになるんだ。


    ザッザッ…バケツの中に、濃い紫の汁が溜まっていく。

    私の中の澱みが紫色の汁の中に混じっていくようだ。

    アホ嫁が少しはマシになっていってるのだろうか。

    「もうそれくらいでいいよ」

    次の手順を教わるが、楽な作業を義母にやってもらう。

    固く絞った赤しそを梅の中に入れる。

    「こうやって色がつくんだね」

    今更な質問をする。

    梅の入った樽をまじまじと見る。

    「キイロちゃんも、またひとつ覚えたね」

    「うん、梅干しは私、食べ続けたいから」


    ちょっとご機嫌になって、やるつもりだったヨガマットを洗い始めた。


    土用の頃の暑い日、今年の梅の盗み食いは、堂々とお日様の匂いを嗅ぎながら、白飯三杯はイケるな。


     
     
    地味なオバサンの日々を書いてます。 クスッとしたり、ホロリとしたり、はちゃめちゃだったり。 ホントに何でもない日常ばかりです。 でも、書いてみて気づきました。 なんでもない日々って、意外と宝の山でした。 1分で読めるショートエッセイを綴っています

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