
SF小説「脳にアプリ #1」脳のカスタマイズ
なんか最近、頭の中がスッキリしない。
こういうことに詳しい田中くんに聞いてみよう。
「なんかいいアプリない?」
「えーと……これとかどう?」
「スマホのアプリじゃなくて、普通のアプリ。脳の方ね」
「ああ、ごめんごめん。普通のアプリの方ね(笑)」
「これ、最近人気らしいよ」
「何のアプリ?」
「気分転換」
「無料?」
「体験版は」
「じゃあ、それでいいや」
「入れる?」
「うん」
入れてみるか。
インストール。
ちょっとこそばゆい。
少し待つ。
完了。
……。
あ。
なんか、ちょっといいかもしれない。
さっきまで気になっていたことが、あまり気にならない。
これはいい。
私はそのままテレビをつけた。
『続いてはこちらのニュースです。
最近、若者の間で「アプリレス生活」がブームになっています。
脳アプリや認知補助アプリをあえて使用せず、生物的な「自分の脳」で生活する人が増えているということです。
街の若者に話を聞きました。
「なんか、生きてるって感じがして」
「すぐに答えが出るのに飽きたっていうか」
「最近、もやもやすることがなくなって。つまんなくなったから」
専門家によりますと、こうした「不便さを楽しむ」傾向は、便利な技術に慣れた若い世代を中心に広がっているということです。
一方、医療関係者からは、必要な補助機能まで外してしまうことには身体への悪影響もあるため、注意が必要だという声も出ています。
以上、アプリレスブームについてお伝えしました。』
それを見ていた父が言った。
「けしからん」
続けて言った。
「昔はなあ、脳アプリを入れるのにも病院に行かなきゃいけなかったんだぞ。今の若い者は簡単に考えすぎだ。」
「まあまあ、お父さん酔ったのかしらね(笑)」
母も呆れていた。
私は気分転換アプリのおかげか、家族団らんの様子を微笑ましく見る事が出来た。
しばらく使ってみよう。