
【わたしはナニモノ?】
◆scne1 帽子小姐(帽子ちゃん)
元気なのに休むとズル休みだよ?
子どもの時に刷り込まれちゃった。
ところで、ズルって何?
私の身体の老闆は私です。
たっぷり3時間。
読んだのは詩集。
台灣華語の。
アイスコーヒーがすっかり薄くなってたよ。
ありがとうテクノロジー。
でも、まだ叶わない夢がある。
6月あたりにあなたと会うこと。
まあ、いつか。
ご機嫌で歩く帰り道。
「買って帰りなよ」
電話越しに簡単そうに言うけどね、
日本でお目にかかれることは滅多にないんだから。
「デパ地下は1周目は愛でるだけがセオリーだよ」
1人ぶらぶらしていると、
ふと目に浮かんだの。
あなたの姿が。
◆scne2 寶石小姐(宝石ちゃん)
おかしいな
素朴さがチャームポイントだったのに
おかしいな
いつもみんなとくっついてたのに
どうしてこんなことになったのかな
みんなの色と私だけ違う
綺麗な服
最初はちょっと誇らしかった
光に照らされたオンステージ
最初はちょっとワクワクした
みんなが見つめる眼差しは
最初はキラキラしてるのに
すぐに去っていってしまう
今はさみしいよ
どうしてこんなことになったのかな
わたしはひとつも変わってないのにな
みんなと同じ、普通の女の子なのにな
◆scne3 兩位小姐(2人の女の子)
センチメンタルの先に視線を感じた
透き通った茶色の瞳のお姉さんだわ
嬉しそうにキラキラしてる
わたしを見てるみたい
キラキラのベクトルはわたし...かな
「あ、見つけたぁ...えっ!!」
お姉さんたら、1人なのに賑やかね...
「ねぇ!見つけたよ!!でも私が思ってるのと違った!」
どなたかとお話してるみたい
お姉さんの期待に添えなかったみたい
わたし、何だかまた寂しくなっちゃった
でも、お話が終わっても、お姉さんの瞳のキラキラはなくなってなかったの
わたしを少しだけ見つめて、そっとカメラに収めて行っちゃった
連れて帰ってはもらえなかった
困ってそうだった
でも、優しい笑顔だった
————
歩く。
お酒のコーナをうろつきながら、
何度も画面を見返す。
648円...
どうして...?
どうして648円なんだろう...
「世界って、
ぜんぜん納得いかないことばかり!
しかも彼女だけひとりぼっちだったの!
私なんかより一番びっくりしてるのは彼女だよ!そう思わない?!」
あなたが画面越しに笑う。
すぐに物語が生まれるね。
あなたはいつも私をからかう。
あなたのからかいは私を緩ませる。
沈黙...
画面を見つめる瞳が一段大きくなった。
そして、私の足は来た方へと向かった。
———
...お姉さん?
わたし、何度もまばたきしたの
一度去った人が戻ってくることは
初めてだったから
お姉さんがまたわたしを見つめてくれてる
おじさんたちがお姉さんを怪訝そうに見てるわ
やめて、このお姉さんはわたしの理解者よ
すると、おねえさんは二つ隣の彼女を抱き上げ見つめた
わたしびっくりした
わたしじゃないの?
息が止まりそうだった
しばらくすると
お姉さんはコクンと頷いて、
彼女を下ろした
ホッとしたのも束の間だった
次も抱き上げられたのはわたしじゃなかった
もう心の中はお姉さんでいっぱいだった
でも、
気づくとお姉さんの瞳はわたしを見つめてた
これまでのわたしにはわからなかったけど、
一目惚れってこういうのかな
わたしをそっと抱き上げる手は小さかった
わたしの向きをゆっくりと変える
そして背中を見つめて叫んだの
「えっ!!あなた宮崎生まれなの!!?」
———
お姉さんはびっくりした後
大きな口を開けて笑った
「私たち日本で生まれ育ったんだね。
私もあなたもとびきり箱入り娘だね。
あなた、今はとっても大切にされてるけど、
ちょっと退屈じゃない?
飛び出せる日がそのうちきっと来るからね!」
お姉さんは笑いが止まらない様子で去って行ったの
今度は写真は撮らなかった
やっぱり連れて帰ってはもらえなかった
だけど、何だかいい気分になったの
お姉さんへ
わたしは宮崎生まれのライチだよ
648円を背負わされてるライチだよ
だけど、
本当は、
どこにでもいる普通のわたしだよ
お姉さんもわたしも
ただそこにいるだけでいい
特別で普通の女の子だね