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武士道 第16章 #8 ルボンの様な公式的学説は既にテオドル・ヴァイツ及びヒュー・マレーによつて粉砕されたのである

    #8  Schematising theories of this sort had been advanced long before LeBon began to write his book, and they were exploded long ago by Theodor Waitz and Hugh Murray. ルボンの様な公式的学説は既にテオドル・ヴァイツ及びヒュー・マレーによつて粉砕されたのである


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    私の訳:そしてこの種の公式的学説はルボンがその著書を書き始める遙か前から提出されており、そして既に久しき前にテオドル・ワイ及びヒュー・マレーによつて粉砕されたのである。

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    櫻井訳の現代語訳:ただ惜しまれるのは、このような杓子定規な(型にはまった)議論が、ギュスターヴ・ルボン(フランスの社会心理学者)が著書を執筆するよりもずっと以前に、テオドール・ヴァイツやヒュー・マレーといった人類学者たちによってすでに論破され、反論の余地がないほど完全に否定されていた事実である。武士道に根ざしている多様な道徳を研究し、それらの比較となる説明をヨーロッパの典拠(基準)に求めて比較した結果、武士道は日本特有の伝統として特別視されるような独自の性格など、一切持っていないということが認められたのである。」

    要するに、「武士道は日本独自の特別な倫理道徳である」という主張は、ヨーロッパの道徳観と比較すると、人類学の観点からはすでに目新しいものではなく、決して日本固有の特権的な性格を持つものではないと断じている箇所になります。

    主要な単語の意味

    • 杓子定規(しゃくしじょうぎ)論

      • 意味:型にはめて、融通(ゆうづう)が全く利かないこと。ここでは、ルボンの主張がステレオタイプで紋切り型の決めつけに過ぎないことを指しています。

    • ルボン

      • 意味:19~20世紀のフランスの社会心理学者、ギュスターヴ・ル・ボン(Gustave Le Bon)。群集心理などを研究し、『武士道』の中では日本の道徳を特異なものとして捉えた人物として言及されています。

    • 夙に(つとに)

      • 意味:とっくに、早くから。ここでは、ルボンが本を書くよりも「ずっと以前から」という意味で使われています。

    • 論破(ろんぱ)して復た(また)餘蘊(ようん)なき

      • 意味:「論破」は議論で相手の説を打ち破ること。「餘蘊なき」は言い残したことや疑念が全くない、完全に打ち負かしたという意味。

    • 浸潤(しんじゅん)したる

      • 意味:思想や感情などが、じわじわと染み込んで広がっていくこと。

    • 典據(てんきょ)

      • 意味:判断の基準となるもの、根拠、よりどころ。ここではヨーロッパの文献や思想を根拠として求めていることを指します。

    • 毫も(いささかも)

      • 意味:少しも、ちっとも(否定の言葉を伴う)。

    • 殊有の(しゅゆうの・ことなる)傳產(でんさん)

      • 意味:その土地や民族に特有の(他にはない)伝来の財産や特徴。

    論破して復た餘蘊なきものなることを(ろんぱしてまたようんなきものなることを)

    • 意味:完全に論破し尽くして、もはや言い残したこと(余地)が全くない状態であること。

    • 解説:「餘蘊(余蘊=ようん)」とは、蓄え、残り、あるいは包み隠した事柄という意味です。「余蘊なし」で「すべて出し尽くして残りがない」「徹底的である」という意味になります。


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    左から シャルル=マリー・ギュスターヴ・ル・ボン、テオドール・ヴァイツ、ヒュー・マレー 3者が議論している様子 想像図 橋本指揮 Gemini作画



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