
【療育探偵09】「忘れちゃった」でもいい。息子と交わす言の音
はじめまして、emcOmi_in_progress です。
このnoteでは、
家族を守るために「仕組み」で戦ってきた
私の実体験を綴っています。
年長の夏。小学校進学を半年後に控え、
療育は進学を見据えた課題に
少しずつ移り変わっていきました。
【目標】
・「他者」の注意を引く:先生の安全圏を離れ、
お友達との対話を始めるために
自ら声をかけること。
・「3語文」の定着: 自分の意思が
他者に伝わるように、感情や状況を
「主語・目的語・述語」で描写する。
これらは、
親や先生という「通訳者」がいなくなった世界で、
一人で生き抜くために必須の通信手段。
この目標に向けて、
仕組みで導く夏の3ヶ月の記録です。
1. 安全圏を抜ける:お友達同士の対話を目指して
お友達の名前を呼ぶ下準備から始まりました。
マンツーマンレッスンで写真を使い、
お友達の顔と名前を一致させる練習が始まります。
7月:誠実な「わからない」という一歩
「◯◯くんはどっち?」
「わからない」
「こっちの写真は◯◯くん、こっちは●●くん」
「〇〇くんはどっち?」
直前にインプットし、
「3回に1回」正しく選び取れる程度。
まぁ、顔と名前を覚えるのは難しいよな、
パパも苦手。
8〜9月:質問に込めるヒント
ここから療育の先生は、
息子に成功体験を積ませる戦略を発揮します。
男女の写真に分けて質問することで、
「性別」のヒントを加えたのです。
男の子と女の子の写真を並べて
「●●ちゃんはどっち?」
「こっち」
「〇〇くんはどっち?」
「こっち」
先生の工夫のおかげで9月に、
「3回に2回」成功する程度になりました。
9月最後の集団レッスン。
「●●ちゃん、これどうぞ」
「●●ちゃん、これなぁに?」
療育の先生に促されつつ、
お友達同士の対話につながりそうな兆し。
2. 欲求で溢れ出す言葉:不正解をさける2語文、欲求の多語文
「3語文」の定着。
ここで、興味深い現象が観察されます。
絵本を題材に
「何してる?」と問われる課題では、
「車乗ってる」
「カステラ食べてる」
「ドングリ拾ってる」
2語文に留まる。
会話の中で主語が消えるのはよくあることだが、
なにか正解があるかのようなプレッシャーもある?
【仮説】
期待された答えから外れないよう、
含みのある2語文で留まるのではないか。
自由時間、
ひとたび「自分の欲求」が湧き上がると、
息子の言葉が、2つ、3つ、ポンポン連なります。
「ゾンビたくさん来てバーンて倒れた」
「先生爆弾やって」
「ぼくプチプチやりたい」
「先生これやりたい」
「先生もう一回やりたい」
8月、先生が花丸を付け忘れたことを指摘した出来事。
集団レッスンでは毎回、
ホワイトボードに課題が書いてあり、
レッスンの見通しになっていました。
ひとつ課題が終わると、
先生がひとつ花丸をつけるサイクルで
レッスンが進んでいきます。
「先生、花丸書いてない、書いて」
息子は「いつものサイクル」を理解し、
いつもと違う状況を言葉で戻そうとしました。
「決められた答え」ではなく、
「どうしても伝えたい」
息子の意思が、言葉を押し出していく。
何かトレーニングをと、親が背負わなくてよい。
息子と会話を楽しめばいい。息子の想いを拾って
「おもしろいね!」
「何作ったの?」
息子の会話を広げる。
息子の意志がポロっとこぼれるその音が、
パパは何よりも楽しみだったのです。
3. センサーの範囲:「ルール」と「暗黙のルール」
7月の訪問支援、これまで培ったスキルが
「実戦」で磨かれた記録でした。
ここで私が注目したのは、視覚優位を活かした
「観察によるルールハック」でした。
UNOやジェンガといった複数人でのゲーム。
彼は最初から輪に入るのではなく、
少し皆が遊ぶ様子を観察。
彼の視覚センサーは、
カードを出す順番や、
ジェンガを崩してはいけないというルールを
映像として記憶したのでしょう。
ルールを理解した後、彼はスッと輪に加わり、
お友達と対等にゲームを楽しんでいました。
しかし、その「センサー」には、
まだ改善すべき点が残っていました。
ジェンガに集中するお友達を「手伝おう」として、うっかりピースに触れようとした時。
「触ったらダメ!」
ゲームのルールは視覚で捉えられても、
「人の番には手を出さない」という
「暗黙のルール」は、
まだ掴み取れない領域だったのです。
息子の優しさが裏目に出る。
人間関係の複雑な部分が縮小されたような一幕。
あの人にこの言葉は禁句、
このタイミングで触れちゃダメ
将来そんな失敗も重ねてくれるのかな。
中学生、はたまたその先で、
人との心地よい距離感を見つけてくれたらいいな。
4. 結び:子どもと対話できる喜び
訪問支援の記録。園の担任の先生からのコメント
「もう『どうしたの?』と
声をかける必要がなくなりました」
かつては、視界に入るほど近くで
個別に声をかけられて、ようやく
口頭指示をキャッチできていた頃もありました、
今は、
「これムズすぎる」
「ぼくもおもちゃ使いたかった」
自分の限界や小さな嫉妬も、
音に乗せて周囲に届けることができる。
小学校進学まで、あと半年。
暗黙のルールを解読するセンサーをどう作ろうか、新しい課題も見えましたが、
この時期は、お風呂の湯気の中、
「今日は何して遊んだ? 砂場? ブランコ?」
「忘れちゃったかー(笑)、 楽しかった?」
なんでも良い
ただ、息子のこぼす音が楽しみで
パパだけ笑って会話をつなげていたのです。
私の言葉が、
日々、大切な人を支えるため
不安と闘っている誰かの、
足下を照らす小さな灯火になりますように。
emcOmi_in_progress
✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
✔今回の「3語文」の習得。年中の頃、私が感じていた子育てに対する先の見えない不安が「息子の個性」を紐解く気持ちの源泉です。
✔「ジェンガでの優しさ」の原点について、こちらもご覧ください。
✔次の物語は、療育最後の支援計画と、その計画に込められた療育の先生の優しさについての記事。
✔親が背負わなくてよい、家族で支え合って歩んでいくそんな想いを綴った記事です。
✔小学校進学に向けて、ここまで試行錯誤してきた全記録を療育探偵シリーズとして纏めています。