
月を見る そして男は変身する。
月を見る。
この行為は俺にとって最悪なものである。
「今日って満月だよ!奇麗じゃない?」
彼女がそう言ってくれたので、ついつい夜空を見上げてしまった。
俺は馬鹿だ、こんな所で変身したらどうしようもない。
もう別れを告げられてしまう。
「えっ!?可愛い!!」
俺は彼女の手の中に入るサイズのミミズに変身してしまった。
一般的に満月を見れば狼男だの、大猿に変身するという話はあるがミミズに変身する男なんて聞いた事がないだろう。
「ごめん、俺ミミズ男なんだ」
「言葉喋れるんだ~!!めっちゃ斬新じゃん」
「えっ?大丈夫?ヌルヌルしてるしミミズだよ」
「うん、平気!子供の頃、金魚に餌をあげる時、その辺にいたミミズを手で掴んで投げていたから」
金髪のギャルが幼少期にミミズを手掴みしているとは全く想像できなかった。
「じゃあ、俺も金魚の餌になっちゃう?」
「どうかな~浮気とかしたらするかもね」
「浮気はしない!絶対!!約束する」
数年後、俺は彼女の手の中でニュルニュルと動いている。
「何であんな事したの?」
「いやそれは、相談事があるからと呼び出されてさ」
「相談事なんて口実でしょ?ヤリモク女じゃん!」
「まあ、そうだったのかもしれない」
「もういい!!」
彼女は、俺を大きな錦鯉がパクパクと口を開き重なっている池に放り込んだ。
「あ、終わったな俺」
鯉の口の中に入った以降の記憶はない。
ただあの瞬間程、人生の中で絶頂を感じた事はなかった。
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