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Photo bymitch_mitchel

墓じまいと母のこと【母と私と樹木葬】

     こんにちは、おみそです。
    皆さまにおかれましては、いかがお過ごしでございましょうか。
     わたくしのおります某地方都市もようやく春極まって参りまして、どうやらよほどの優良物件であるらしい我が家のベランダへ内見にやってくる燕のお客様たちのご案内に日々奔走しております。(あ〜っお客様、お客様困ります!マイホームにマイホームを築かれては!!)

     さてさて。
    今回は40代子なし主婦のわたくしと、母の話でございます。

     皆様はご家族と頻繁に連絡を取り合っていらっしゃいますか?
    わたくしは誕生日や母の日や、特別なことがあった時ぐらいでしょうか。

     あるとき母から突然LINEが届きまして、電話で話したいことがあると言ってきたのです。まずこのわたくしの母、全てにおいて淡白というか家族の優先順位が低いというか、家族への対処は一番最後でいいと思っている節すらありまして、何か大事な決断をする時であっても事前に相談してくることなど皆無なのであります。
     例を挙げますと、長年別居状態であった父ともいつの間にか離婚しており、帰省の際に「そう言えば離婚したよ」と告げられ驚いた・・・
    ・・・いや、別に驚かなかったな私も。驚いてなかったな、弟も。何なら「まだ離婚してなかったんだ・・・」と思ったまであります。
     「ふうん」
     なんて返事をして、そのまま話題は別のことに移って行きました。
     ちょっと薄情なんじゃないのと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これがわたくしの家族でございます。話したいのなら自分から話すでしょというスタンスでゆるく結びついていて、誰もあまり詮索するということをしないのです。

     まあそんな母が「電話で話したい」なんて言うのですから、これは大ごとだと思いました。母ももう60代後半に差し掛かり、娘の目には元気に見えておりますがまさか健康診断で良くないものでも発見されたのだろうか・・・などと内心ドキドキしながら電話をかけました。

     ですが、母の要件は予想外のものでした。

    「○○寺(実家の墓がある寺)で樹木葬の募集をしててね」

     ・・・ん??
    「申し込んだわ」
     もう申し込んだんかい。
    「で、墓石の種類と彫る文字、一緒に考えてほしい」
     ほぉ〜〜〜〜???なるほどそう来ましたか。
    一足飛びに墓地の話とはなかなか面白い。

     この樹木葬という言葉、皆様はどんなイメージをお持ちでしょうか。
    わたくしの知識は20年前からアップデートされておりませんでしたので、散骨の山バージョン、と思っておりました。いい感じの木を植えて遺灰を撒いて、自然に還りましょう・・・みたいな。
     なんか20年ほど前に一時ブームの片鱗を見せ、しかし当時は悪徳業者も存在し、ろくに管理もされないまま数年後には荒れ山に・・・という記事も見かけた、ちょっと不安な埋葬方法でした。散骨だって海洋汚染だとか騒がれましたものね。
     
     母がいかにドライな女で常々「死んだら海に撒いて」なんて言っていたとしましても、流石に不安になります。後々問題が起きてもいけませんし・・・
     という訳で改めて調べてみますと、母の契約した樹木葬というのは寺の境内に作られた公園のような場所になる予定で、いい感じの樹の周りにいい感じで配置されたおしゃれな墓石プレート(一人用から大人数用まで様々)が配置され、管理は契約会社がするけど盆には和尚さんがお経をあげてくれるよ、でも別にうちの檀家でなくてもいいよ、という何だか新しいかたちの墓地であるようでした。

     後日母と二人現地に出向いて説明を受けたのですが、二種類の墓石、数種類のデザイン、数種類のフォントから好みのものを選んで組み合わせてゆく形で、刻む文字を好きなように設定できるというものでした(大きさに合わせて文字数制限はある)。
     ペットと共に収まりたいと望まれる方も多いそうで、もちろんそれも自由です。デザイン候補の中には犬や猫や肉球のシルエットの可愛らしいものもありました。

     ちなみに気になるお値段ですが、今までの墓石の処理(墓じまいに係る一連のもの)と新しい墓石プレート、区画代金諸々込みで58万円でした。通常ですと墓じまいだけで100万円前後かかるということなので、永代供養込みでこのお値段はかなり良心的ではないでしょうか。

     母曰く親戚や友人も一緒に契約したそうで、母の購入した区画の隣は母の従姉妹夫婦の場所になるとのこと。仲良しだなぁ。

     後は最終的なデザインが上がってくるのを待つという段階になって、ふと母がこの樹木葬を選んだ理由について考えました。
     

     母にとっての子供はふたり。わたくしと弟でございます。
    わたくしは20年ほど前に嫁いでおりますので、墓を守るのは弟ということになるのですが、この「うちの墓」というのがとても不便なところにございまして、延々と長い階段を山登りせねばならず春には熊に怯え、夏には蜂が巣を作り、秋には猪に荒らされ、冬は遭難の危機という程で・・・まあ、遭難は若干話を持っておりますが概ねこんな立地でございますので、墓参りひとつ、墓掃除するにも一苦労なのでございました。
     そんな訳ですので、ただでさえ大変な墓の管理はますます億劫になって参ります。
     前出のとおり母は離婚しております。墓に入っているのは婚家ではなく母の両親であり、祖父の購入した墓を両親の死後一人娘の母がずっと世話をしてきた訳でございます。
     母が墓に入りましたら、今度は弟が新しい墓守をすることになるでしょう(もちろんわたくしも墓参りには参りましょうが、法的な管理者は弟ということになります)。
     この弟、どうやら家庭を持つ気はないようで、家を出て自分の生きたいように生きております。姉としましては健康面など些か心配ではありますが、まあ元気でやっているのであれば文句もありません。
     しかしこの決してマメとは言えない、連絡すら滅多に寄越さない息子に託すのであれば、出来るだけ手のかからないようにしておいてやろう。何なら全く訪れなくともよいようにしておいてやろう。母の考えそうなことです。
     そして娘には子供がいない。
    我が家は子供たちの代で絶えることになりますので、どちらかが(順番通りであれば息子が)墓じまいをすることになります。
     
     

     母の選んだ墓は4人まで入ることができるものでした。
    この会社は「散骨タイプ」の樹木葬も請け負っていますが、母はそれを選ばなかった。
     既に鬼籍に入っている祖父と祖母、そして母の席。最後の空席に収まるのは弟になりましょう。

     自分の家を持たないであろう息子に、最後の居場所を残せるのです。


     息子が迷わないように。娘が苦労しないように。

     
     もちろん、母がそこまで考えているのかは分かりません。
    実際尋ねたら、結果的にそうなったから。ちょうどよかったでしょ?と言うでしょう。
     大事な事ほど何でもないことのように茶化して笑うのが、わたくしの母でございます。

     世の中には様々な家族のかたちがあり、愛情の示し方もそれぞれです。
    かつてわたくしも、母に愛されていないのではないかと、心のささくれを自分で引っ張っては血を滲ませていた時期がございました。 
     本当のことは、母にしかわからない。
     それでも思うのです。


     これって、愛だよね。
     と。
     

      
     


    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
    心理学勉強中のINFJです。転勤族の妻・40代・子なし。 面白きこともなき世を面白く すみなすものは心なりけり

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