
届けたい想い
カコンッ!
アパートのドアポストに何かが入れられた。
今は夜中の二時……
配達なわけがない。
普通なら怖くて確認なんてしたくない。
でも……
私は恐る恐る音の主を確認した。
ーー指輪?
そこにあったのは、
元カレから貰った指輪だった。
(昨日、公園の池に捨てたはずなのに……)
慌ててドアを開けると、
地面に濡れた跡が続いていた。
(今の季節、直ぐに乾くはずの地面がまだ湿っている。
つまり、指輪を届けたモノはまだ近くにいるということ……
これなら……)
私はそのままその跡を辿っていった。
まるで引き寄せられるように……
……そして、気がつけば公園の池の前に立っていた。
辺りを見渡すと……
……いた!
甲羅を背負い、頭に水で満たされたお皿を乗せ、
鳥のようなクチバシを持った緑色の……
「……あの!」
「……あんたか!気を付けて!
もう落としちゃだめだよ!」
そう言ってそのまま池の中に戻ろうとするそいつを後ろから羽交い締めにし確保する。
「……な……何をする……この人間風情が!」
「ふ、お前がこの池に落としたものを持ち主に届けるということは調査済みだ。捕まえたぞ!池の主!」
「……く……俺をどうするつもりだ!」
「……一緒に来てもらうぞ!」
私は追跡中に手配していたタクシーにそいつを押し込み、目隠しをして近所の水族館へ向かった。
そこにコイツを連れて行く。
それが私の役目なのだ。
◆◆◆
「じゃあ、池の主の目隠しをとるまで
……3……2……1……」
「0」の掛け声と同時に目隠しを解いてやった。
「「ありがとう!池の主さま」」
「これは……」
「……お前に直接礼を言いたかった人達だ」
「……く……礼なんて……俺はただ……」
「お前に礼を拒否する権利など与えん!
黙って礼を受け入れろ!
……お前が黙って善意を届けたようにな」
「でも……俺、こんな量のきゅうりはちょっと……」
「あ、ごめんなさい。
つい、そうなんだと思って……
……尻子玉のほうね。今準備するから!」
スタッフに目配せして、取りに行ってもらった。
「……え?尻子玉ってなに?
何を持ってくるの?
……ねぇ!答えてよ!
ねぇ!」
こちらの企画に参加させていただきました。