
謝り過ぎてYOSHIKIみたいになった
「すみません」
「ごめんなさい」
「申し訳ないです」
学校で、駅で、スーパーで、公園で……私はいつも謝っている。見知らぬ人に向かって。
隣に息子がいるからだ。重度知的障害を伴う自閉症の息子。多動で衝動性が強い息子。彼は学校で問題行動ばかり起こす。外ではジグザグに歩き、突然大きな奇声を発する。外遊びに連れて行っても遊具の順番を守ることはできない。
いつもため息ばかりついている私。先回りして謝る癖がついてきた。だって、先に謝っておけば急に怒鳴られる確率を低くできる。
明らかに障害のある子どもと横にいる疲れた顔の母、我々は何度か見知らぬ人に怒鳴られたことがある。
今だから怒りを感じられるようになったけど、当時は申し訳なさでいっぱいだった。
生きててごめんなさい。
親子で死ねなくてごめんなさい。
本当にそう思っていた。
ただ、今はこう思う。
知らない人間を急に怒鳴る奴とかさ、どう考えても正気じゃない。
謝り疲れる毎日。
夫とテレビを観ていた時、X JAPANのYOSHIKIがいた。ファンでない私は、
「YOSHIKIってお肌キレイだなー」
くらいの感想しか抱いていなかった。
すると、近くの夫が突然こう呟いた。
「YOSHIKI、首は大丈夫なのかな」
……
YOSHIKI、首は大丈夫なのかな
YOSHIKI、クビハ ダイジョウブ ナノカナ
!?
言いようのない怒りがこみ上げてくる。
おいおい、きみの妻だって首が痛いんだ。
なぜか。
毎日毎日!
他人に謝り続けて首を酷使しているんだ!
心配すべきなのは、遠くのYOSHIKIより隣の妻ではないのか!?
もう怒りや疲れや悔しさが止まらなくなり、赤ん坊のようにギャンギャン泣いてしまった。
泣き疲れたところで夫が、私の首の心配をしてくる。
首だけでなく頭も疲れている。マッサージに行きたいから息子を見ていて欲しいと夫に伝えた私は、すぐにスマホでヘッドスパを予約した。
ゆったりとした音楽が流れ、セラピストさんが柔らかく私の頭や首をほぐしてくれる90分のヘッドスパは最高だった。
あまりに気持ちよくて寝てしまったのだが、こんなに柔らかい眠りはいつ以来だろう。
スマホをオフにし、息子が隣にいない。洗濯機の音も聞こえない。ただ「自分」にのみ集中できる貴重な時間だった。
サロンの近くには老舗の和菓子屋があり、大福が好きな息子と夫にお土産を買い、帰宅した。
3人で食べていると、ふと
大福が美味しい。生きてるっていいな。
という気持ちになれた。
多分、大福じゃなくてもドーナツでも、何ならうまい棒でもそう思ってたに違いない。
ヘッドバンギングし過ぎて首を痛めているYOSHIKI
謝り過ぎて首を痛めている私
全然違う人間だけど、あの日からYOSHIKIに好感を抱いている。
そして、YOSHIKIがいなかったら、ヘッドスパに行くこともなかった。
ありがとう、YOSHIKI!
近頃は息子も落ち着いてきて首を痛めるほど謝る機会も激減した。でも、そろそろまた行きたい。