
鬼の系譜―わが愛しの鬼たち
主に日本の古い文献から、鬼に関することを抜き出して、紹介した本です。
中国の「鬼」と、ヨーロッパの鬼に似た怪物も、少し紹介されています。
地獄の鬼や、安達ヶ原【あだちがはら】の鬼婆、酒顛【しゅてん】童子、茨木童子などの話は、鬼を扱った本には、まず間違いなく、出ていますね。本書にも、もちろん、載っています。
本書のユニークなのは、鬼の食生活、鬼の性生活なども、取り上げていることです。著者の、鬼に対する親しみを感じます。
ユニークといえば、著者は、「鬼の好物は大豆である」と主張しています。
普通は、逆ですね。節分の豆まきで、鬼が追い出されるのですから、大豆は鬼の苦手なものとされます。
残念なことに、著者は、「鬼の好物が大豆である」論拠を、はっきりと示していません。このために、著者の主張には、全面的に賛成できないところがあります。
このように、やや引っかかる点があっても、本書は、鬼の資料として、大いに役に立ちます(^^) これほど、大量の古文献から、鬼に関する記述をまとめた資料は、少ないからです。
日本の鬼に興味があるなら、一読して、損はありません。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
まえがき
プロローグ 愛しき鬼たち
梅干しになった鬼
化粧品を欲しがる鬼
など
第一章 鬼の食生活
ブドウと筍【たけのこ】と桃
日本最古の鬼は黄泉津醜女【よもつしこめ】
桃は邪気を払う果物
など
鬼の健康食
鬼に一番売れる商品とは
豆腐屋は鬼にご用心!
など
味噌と鬼
貧乏神は鬼の仲間
なぜか福の神と化した貧乏神
など
第二章 地獄の鬼
地獄から帰ってきた人々
亡き妻はあの世で再婚
”閻魔【えんま】帳”は罪業の記録簿
など
地獄の責め苦は果てなくつづく
そこに地獄が…
火炎樹の面積は七五〇平方メートル
など
第三章 怨念とエロチシズム
安達ヶ原【あだちがはら】の鬼婆
裏切られたのは老婆
福島県安達ヶ原に伝わる鬼婆伝説
など
女が鬼と化すとき
般若面は女の怨霊を具象化
焼きもち女は〈角〉を出す
など
鬼の情愛と性
夜叉の妻になった女
男色の鬼
など
第四章 鬼退治の残虐性
酒顛【しゅてん】童子と茨木童子
酒が生命とりになった酒顛童子
酒顛童子の断末魔が意味するもの
など
前鬼・後鬼
鬼の髪を切り怪力を封じる
わが子の死骸を食べた夫婦
など
鬼の口惜しさ
鬼退治は果たして正義か
鬼にも襲う理由がある
など
第五章 宗教における利用価値
中国の鬼
姿は見えず毒を吹きつける
道教の鬼神は天地万物の諸霊
など
日本の鬼
日本の鬼はなぜ非人間的か
鬼の退散は劇的効果を狙う
など
ヨーロッパの鬼
死体をむさぼる食屍鬼
吸血鬼の正体
など
第六章 吉凶を導く鬼
屋根瓦の知恵比べ
恋女房が原因不明の病いに
鬼瓦を睨む鍾馗【しょうき】の瓦
鍾馗は鬼より強い
魔除けと民間伝承
干瓢【かんぴょう】でこしらえた鬼の面
”下の口”は鬼を食べるもの!?
など
豊作祈願の鬼文化
農業と結びついた祭りの鬼
村人たちがエネルギーを爆発させるとき
「鬼さん、永井は困ります!!」
第七章 雷神と風神
雷神と鬼
八はしらの雷神
怨念が雷を起こした!?
など
風邪と風神の関係
風神はイザナギの息子
伝染病が蔓延する時代背景
”風邪は風が運んでくる”
新装再版にあたって