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Photo byo4ne37

YMCAとADHD

    夫の会社の創立何周年かの記念パーティに家族で参加した。

    立食パーティとのことで広い空間に丸いテーブルがたくさん並んでいた。ファミリーで参加する方は他にも多く、連れて来られた子ども達は疲れて地べたに座り込んでいる。我が子達も例外ではない。

    会場が賑やかになった頃、パッと照明が消え一瞬 全てが真っ暗になる。
    ステージから眩しいほどの照明とともに会社のお偉いさんが現れ挨拶をした。
    大人数で囲んでいるテーブルにはそれぞれウェルカムドリンクが並ぶ。

    鈴木財閥のパーティかはたまた少年探偵団が近くにいれば間違いなく先ほどの暗闇の瞬間、誰かのドリンクに毒が盛られているはずだ。
    犯人はテーブルにかかった長く垂れ下がるクロスのなかに身を潜めているに違いない。

    私は頭の中がうるさい方の人間である。
    一つ一つの行動や見た事、聞いた事に妄想や空想、雑学に、あまりない知識など様々な考えが連想ゲームのように沸いて留まることがない。

    数年前にメンタリストDaigoにハマった時、動画で薦めていた「瞑想」をやってみようとしたが思考が邪魔をして「無」になれた試しがなかった。
    「息を吸って〜」と言われても「今吸いすぎたかも?」「お腹を膨らますのか?」「肺を膨らますのか?」「肺と言えばこの間…」とどんどん思考がどこかへ飛んでいってしまう。
    今日も私の思考は絶好調に迷宮入りし始めた。

    さておき お偉いさんの挨拶が終わり、ステージにはユニバのパレードに出てきそうな華やかな衣装に身を包んだシンガーやダンサーが出てきた。
    流行りの洋楽を歌い上げたりショーダンスを踊ったりとなかなかに豪華だった。
    今にもエルモが出てきて お尻に力が入っていなさそうな声で「みんな〜今日は来てくれてありがとう〜!」とでも言いそうなぐらいだ。
    日本人顔ではないシュっとしたシンガーがパーティが盛り上がるような誰でも知っている曲を歌ってくれているのだと思う。
    (音楽に疎いのでなんとなくそんな感じがしている)

    途中流石に私でも知っている「ヤングマン」が流れた。
    お?やるのか!アレを。
    自分は楽しい空間は人よりも楽しむタイプなのでもちろんやるつもりでいた。
    しかしヤングマンは私にはとても難しいのだ。

    まずYはビシッと決めれる。迷いようがない。手を大きく広げ上に上げる。ここまではいつも完璧なのだ。
    次にMだ。頭頂部に両方の指先を突き刺す形になるので「猿っぽいな」という思考がビシと決めたい気持ちの邪魔をする。実際に両方手を頭に突き刺している猿を見たことがないのにどうしてそう思ってしまうのだろうか。
    しかし次が問題である。

    「C」だ
    Cは私の中で最難関なのだ。
    両手で作った大きな輪を即座に左右どちらに腕を向ければいいのかわからない。
    こちらから見たCなのか?アチラから見たCなのか。
    ステージから見た私たちはバラバラとあちこち向いたCで視力検査みたいになっているのだろうか?

    考えているうちにAがくる。
    バシっと頭上で決めれるはずのAも難しすぎるCのせいでなぁなぁになってしまう。

    これを何度も繰り返して頭のエネルギーを無駄に消費し、中途半端なYMCAになってしまうのである。
    またなぜヤングマンなのにyoungではなくYMCAなのかも頭をよぎる(後でちゃんと調べた)
    今日もまたヤングマンをビシっと決められなかった。
    人生のうちでヤングマンをすることはあまりないがたまにはビシっと決めたいもんである。

    そうこうしているうちにショーは終わりBGMがながれ始めてビュッフェの時間が始まる。パンの列は人気で会場の外までずらりと並んでいる。
    どうしてもパンにありつきたいワケでもないので列が空いているカレーなどでお腹を膨らせた。カレー美味しいじゃんね。なんで空いてるの?

    ある程度食べ終わったら子どもがぐずりだす。
    自分の子どもも特性がある。彼女は
    ・たったまま食べる
    ・人が多すぎる
    ・会場が暗い
    ・ショーの音楽が大きすぎる
    ・知らない歌ばかり流れて嫌だ
    ・足が疲れた
    という事を言語化して教えてくれ、パーティは途中だったが退席した。
    しっかりとここまで自分の嫌なことを言葉で伝えられて偉い。
    令和の時代にディスコミュージックなどわかる人間がどれだけいるのか?
    私でもあまりわからないのに。
    彼女の気持ちは的を射ている。

    当たり前だが立食パーティは子どもには向いていない。

    かくしてなかなか機会のない貴重なパーティはお腹を満たすだけ満たして、夫の同僚に紹介などもされず普通に帰った。本当に夫はこの会社で働いているのか?と思うほど知り合いに会うそぶりがない。
    ヘラヘラと他所行き用の顔で「夫がいつもお世話になっております〜」と言いなれない言葉を使う場面を想像していたが一度もこなかった。
    殺人事件や誘拐事件なども起こらなくてよかった。
    会場に犯人が潜んでなくてスナイパーにも狙われていなくてよかった。

    帰路に着きながら今日もまた私の思考はグルグルと「迷走」している。


    創作大賞応募作品


     
     
    パステルカラーに魂を売った絵描き 創作とクライアントワークを行なっております。 ゲームのお仕事がしたいです! 頭の中はうるさい方です 企業様のご依頼はメールからお気軽にご相談ください Amazonアソシエイトプログラムに参加しています

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