
前後の文章を見ないと正しい翻訳はできない CATツールが前後を見てくれる理由
翻訳の現場では、
CATツール(Computer-Assisted Translation / 翻訳支援ソフト)
と呼ばれるツールが広く使われています。
CATはねこではありません。
翻訳支援ツールです。AI が組み込まれています。
使い方は至極簡単で、
機械翻訳で、左覧に原文、右覧に訳文が入っています。
これを人間が修正するのがポストエディティング(後編集)です。

CATツールには、Trados, memoQ, Phraseがよく使われます。
過去の翻訳データを蓄積・活用することで作業を効率化できる便利なソフトですが、使い方には注意が必要です。
例えば代表的なCATツールである memoQ では、翻訳メモリに原文と完全一致する文章があると「100%」と表示され、過去の訳文が自動で呼び出されます。
しかし、「100%一致=そのまま採用してOK」とは限りません。
前後の文脈によって、適切なトーンやニュアンスが変わるからです。
例文で考える「文脈」の違い
次の英文を例に考えてみましょう。
“The other customer’s data was then transferred to the user terminal.”
単体では「そして他の顧客データがユーザ端末に転送された」という訳になりますが、直前の文章によって状況は一変します。
訳例1: 「ユーザが条件にマッチしたデータを要求した。そして他の顧客データがユーザ端末に転送された」
・訳例2:「何者かによるハッキングが発生した。そして他の顧客データがユーザ端末に転送されてしまった」
パターン①はマッチングサイト等の通常処理ですが、パターン②は重大な情報漏洩です。
②では「〜されてしまった」と訳すことで、緊急性のニュアンスが正確に伝わります。
memoQの「101%一致」とは?
このように、原文がいくら完全一致していても、前後の文脈を見なければ正しい訳文は判断できません。
memoQでは、文章だけでなく前後関係まで一致している場合に「101%一致(コンテキスト一致)」と表示される機能があります。
「100%一致」と出たときこそ一立ち止まり、文脈を確認する姿勢が翻訳の精度を大きく左右します。
この新刊にはCATツールについても詳しく書いてあります。