
神様と雨音と命懸けの和歌。
落葉如雨といふ心をよめる
木の葉散る
宿は聞き分く
ことぞなき
時雨する夜も
時雨せぬ夜も
源頼実「後拾遺和歌集・冬・382」
意訳:木の葉が時雨る屋根の下に在っては微かな音が落葉か雨か聞き分ける術もない。雨降る夜も、降らぬ夜も。
住吉明神に命を対価に秀歌を詠ませ給えと祈願し作られたとされる歌。その5年後に重病に陥った頼実が助命歎願すると住吉明神に秀歌の対価故、叶わぬと告げられ(詳細諸説有り。藤原清輔「袋草子」、藤原為経?「今鏡」、鴨長明「無名抄」他多々)、30歳で夭折した。虚実の程は別にして、披露した当時は不評。頼実は訝りつつ没したのだとすれば甚だ気の毒である。──「後拾遺和歌集」に収められたり、藤原定家が本歌取りをしたり…価値が判るのはずっと後の話。
雨は降るのか、降らぬのか。雨予報を信じ神田神保町の古本祭りへ行く予定を延期した。而して先の和歌を想起した。
今週末は穏やかに晴れますように( ̄人 ̄)。
冒頭写真は渡部泰明著「和歌とは何か」(岩波書店)。和歌のレトリックを「演技」という視点で読み解く入門書。教養・学術書である岩波新書は軒並みカタい文章が多いのだが本書は柔らかい口語体で「解らない」に寄り添う姿勢に貫かれている。「あとがき」に御尊父の言葉が記されている。
「一番大事なことを、誰にでもわかる言葉で語れる人のことを、学者と呼ぶのではないか」
意に順う良書。※「木の葉散る─」は「和歌とは─」内では取り扱っておりません。興味が湧きましたら更に古人の言葉に耳傾けてみてください。今昔「心」は不変。時を超えた友を得るのは良いものです。