
革命は壊すことから始まる | PENTHOUSE GROOVE Take A Break vol.12
創造と破壊について
音楽を聴いていて、これは果たして音楽なのだろうか、と思う瞬間がある。
旋律らしい旋律もなく、一定のリズムもなく、聴き慣れた和音さえ見つからない。人の声や物音が唐突に現れ、何かが始まったと思えば、次の瞬間には別の音に遮られてしまう。
それでも不思議なことに、私はそうした音楽にどこか心地よさを感じることがある。
美しいメロディーに包まれるような安心感とは違う。むしろ、今まで当たり前だと思っていたものが崩れていくような、落ち着かない感覚に近い。
しかし、その不安定さの奥にこそ、まだ見たことのない何かが存在しているように思えるのだ。
音楽であることをやめた音楽
1968年、The Beatlesは通称『ホワイト・アルバム』と呼ばれる作品を発表した。
その中に収録された「Revolution 9」は、彼らの作品の中でもひときわ異質な存在だ。
約8分にわたり、断片的な会話、効果音、逆回転させた音、繰り返される声、さまざまな録音素材が入り乱れる。
曲を聴いているというより、誰かの記憶や夢の断片を次々と覗き込んでいるような感覚になる。
この作品は、ジョン・レノンを中心に、オノ・ヨーコやジョージ・ハリスンらの協力によって制作された。
興味深いのは、その出発点が、もともと「Revolution」という一つの楽曲の延長部分だったということだ。
既存の録音を切り取り、別の音を重ね、逆回転させ、繰り返し、組み替える。
そうして生まれたものは、もはや元の楽曲とはまったく異なる姿をしていた。
完成したものに何かを足していくのではなく、すでに存在するものを解体し、その断片から別の作品を生み出す。
「Revolution 9」の制作過程には、創作における一つの重要な本質が隠されているように思う。
積み重ねることだけが創造ではない
私たちは、何かを作り上げることに価値を見いだしやすい。
知識を増やし、技術を磨き、経験を積み重ねる。昨日より今日、今日より明日と、少しずつ完成に近づいていく。
もちろん、それは創作において欠かせない営みだ。
しかし、積み重ねることが、必ずしも可能性を広げ続けるとは限らない。
何かを作れば、そこには形が生まれる。形が生まれれば、輪郭ができる。そして輪郭ができるということは、同時に、その外側にある可能性を選ばなくなるということでもある。
経験が増えるほど、自分なりの方法が確立される。完成度が高まるほど、その完成度を壊すことが難しくなる。
かつて自由に描いていたはずの線が、いつの間にか、自分で決めた枠の中に収まっている。
そんなことが創作にはあるのではないだろうか。
だからこそ、ときには積み重ねてきたものを壊す必要がある。
それは、それまでの努力を否定することではない。
むしろ、一度作り上げたからこそ、壊せるものがある。
何もないところからは生まれなかった断片が、解体された作品の中から現れることもある。
壊したものが元の形に戻らなくても、そこに費やした時間や経験まで消えてしまうわけではない。
過去に作ったものは、新しい作品の材料にもなれば、その背景に残る記憶にもなる。
一度作り、一度壊したからこそ、まったく別のものを作ることができる。
あるいは、かつての姿をどこかに残しながら、別の意味を持つものとして生まれ変わることもできる。
破壊の中に宿る偶然
創造という言葉には、どこか明るく、前向きな響きがある。
一方で、破壊という言葉には、喪失や失敗といった否定的な印象がつきまとう。
けれども、創作という営みに限っていえば、私はむしろ破壊の方に、より大きな可能性を感じることがある。
何かを作るとき、私たちは多かれ少なかれ、完成形を思い描いている。
そこには意図があり、計画があり、目指すべき方向がある。
しかし、それを壊すとき、必ずしも何が残るのかを予測できるわけではない。
音を切り刻んで並べ替えたとき、偶然生まれるリズム。
異なる音を重ねたとき、意図せず現れる響き。
予定していなかった失敗が、当初の構想よりも魅力的なものに変わる瞬間。
そこには、作り手自身の想像力さえ追いつかない可能性がある。
無論創造にも偶然が宿ることはあり、破壊も常に自由をもたらすわけではない。
それでも私には、完成された秩序が崩れる瞬間に、まだ名前のついていない何かが顔を出すように感じられる。
「Revolution 9」の不規則な音の連なりに惹かれるのも、きっとそのためなのだろう。
表面上は不協和音のように聴こえても、その奥には無数の可能性が広がっている。
そこにあるのは、単なる混乱や絶望ではない。
むしろ、まだ何にでもなれるという、ある種の希望なのかもしれない。
メビウスの輪のように
創造と破壊は、対立する二つの行為として語られがちだ。
しかし、本当にそうなのだろうか。
創造は、何もないところから突然始まるとは限らない。何かを選び、何かを捨て、すでにあるものを組み替えることも創造の一部だ。
そして破壊もまた、何かを失わせるだけの行為ではない。解体されたものの中から、新たな形や意味が生まれることがある。
二つは、表と裏のように分かれているのではない。
メビウスの輪のように、どこからが創造で、どこからが破壊なのか、その境界はいつの間にか曖昧になっていく。
作ることは、何かを壊すことでもある。
壊すことは、何かを作り始めることでもある。
そのどちらか一方だけでは、たどり着けない場所があるのだと思う。
革命とは何を壊すことなのか
「Revolution 9」が発表された1968年は、世界各地で社会運動や政治的な対立が広がっていた時代でもある。
ジョン・レノンは同じ年のインタビューで、社会は正気とは思えない人々によって、正気とは思えない目的のために動かされている、という趣旨の発言を残している。
しかし、何かがおかしいと感じたとき、私たちは一体何を壊すべきなのだろうか。
制度なのか、権力なのか、それとも、自分自身の中にある常識なのか。
創作における破壊が、ただ作品を無意味に傷つけることではないように、社会における変化もまた、単に何かを否定するだけでは十分ではないのかもしれない。
何を残し、何を手放し、その先に何を生み出そうとするのか。
それを問い続けることこそが、変化の始まりなのだと思う。
INSANE PEOPLE FOR INSANE OBJECTIVES
今回、PENTHOUSE GROOVEでは、1968年のジョン・レノンの言葉から着想を得た新作ロングスリーブTシャツを制作した。
「INSANE PEOPLE FOR INSANE OBJECTIVES」
社会を一つのピラミッドに見立て、その土台に「INSANE OBJECTIVES」を配置したタイポグラフィは、私たちが当たり前のように受け入れている社会の構造や、その根底にある目的への疑問を表現している。
そこには、秘密結社やイルミナティを取り巻く都市伝説、古代エジプトのピラミッド、すべてを見通す目といった象徴から得たインスピレーションも重ねている。
その三角形は、PENTHOUSE GROOVEのロゴとも呼応する。
これまでの価値観や社会の仕組みを、ただ否定するためのデザインではない。
一度立ち止まり、疑い、当たり前だと思っていたものを別の角度から見つめ直すこと。
そして、そこから新しい何かを想像すること。
今回の作品が、その小さなきっかけになればと思う。
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PENTHOUSE GROOVE 2026 AW NEW ITEM
“INSANE PEOPLE FOR INSANE OBJECTIVES” Long Sleeve T-shirt
Website: https://penthousegroove.com
BASE: https://pnthsgroove.base.shop/items/163916341
For inquiries: penth.groove@gmail.com
Take A Break vol.12
今回のテーマについて、PENTHOUSE GROOVEのWebSiteでは「Who Is Behind the World?」と題し、陰謀論や神話、人間の欲望といった別の角度からも考えています。
二つの記事を通して見えてくるものもあるかもしれません。ぜひこちらもあわせてご覧ください。
🔗 Who Is Behind the World? – PENTHOUSE GROOVE