メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bytarohanamana

「お受験」の世界の慣習に違和感を覚えたとき保護者が知っておきたいこと――特殊な価値観に流されず、わが子の育ちを守るために

    「なんか変だな」と感じる慣習が、お受験の世界には意外と多いものです。その違和感は、保護者としての健全な感覚です。大切にしてください。

    小学校受験の準備を進めるなかで、「これって本当に必要なのかな?」「なんだか違和感があるな」と感じる場面に出会ったことはありませんか。

    幼児教室に通い始めると、独特の慣習やことばに触れる機会が増えます。長年その世界に携わってきた指導者から、さまざまな「お受験ルール」を伝えられることもあるでしょう。

    しかし、その「ルール」のすべてが、お子さんの育ちにとって本当に必要なものとは限りません。今回は、「お受験」の世界の慣習を改めて見つめ直しながら、保護者の方に大切にしていただきたいことをお伝えします。

    「お」をつければ丁寧になるのか

    お受験の世界でよく見られる慣習の一つに、あらゆることばに「お」をつけるというものがあります。

    「お試験」「おテスト」「お机」「お教室」「お道具」「お洋服」「お靴」「お鞄」「お弁当」「お箸」「お受験」……

    丁寧な表現を大切にすることは、もちろん素晴らしいことです。しかし、何でもかんでも「お」をつければ丁寧になる、というわけではありません。

    特に気になるのは、「おテスト」という表現です。「テスト」は外来語です。外来語に「お」をつけることは、日本語として自然な表現とは言えません。「おトイレ」も同様で、日常的に使われているため違和感を持ちにくいですが、本来は外来語に「お」をつける必要はありません。

    幼児は、周囲のことばをそのまま吸収してことばを覚えていきます。「おテスト」「おリボン」「おズック」のような表現が日常的に使われる環境で育つことが、正しいことばの習得につながるかどうか、少し立ち止まって考えていただきたいと思います。

    ことばの丁寧さは、「お」の数ではなく、場面に応じた適切な表現を使えることから生まれます。

    「この学校の願書はこうでなくてはいけない」という思い込み

    もう一つ、よく見られる慣習があります。それは、願書の書き方に関する「絶対的なルール」です。

    「この学校の願書は、書き出しをこうしなければいけない」「この表現を使わないとだめ」「〇行以上書いてはいけない」――こうした「ルール」を、まるで絶対的な正解のように伝える指導者がいます。

    しかし、少し考えてみてください。もしすべての家庭が同じ「ルール」に従って願書を書いたら、どうなるでしょうか。どの家庭の願書も同じような書き出しで、同じような表現が並ぶことになります。

    学校の先生方が願書を通じて知りたいのは、その家庭の教育観や、わが子への思い、学校への理解の深さです。型にはめられた表現より、その家庭らしい、心のこもったことばで書かれた願書の方が、読む人の心に届きます。

    もちろん、募集要項に指定された形式や字数制限は守る必要があります。しかし、それ以外の「こうでなくてはいけない」というルールは、一度「本当にそうなのか?」と立ち止まって考えてみてください。

    お受験の世界の「その他の慣習」を見直す

    「お」をつけることばや願書の書き方以外にも、お受験の世界には独特の慣習があります。

    服装の「暗黙のルール」
    「考査にはネイビーかグレーの服でなければいけない」「お母さんはパールのネックレスをつけるべき」――こうした服装に関する「ルール」も、よく耳にします。清潔感があり、場にふさわしい服装であれば、特定の色やアクセサリーにこだわる必要はありません。

    面接での「決まり文句」
    「志望理由はこう答えなければいけない」「子育てで大切にしていることの答えはこれ」――こうした「模範解答」を丸暗記させる指導も見られます。しかし、面接官が知りたいのは、その家庭の本当の考え方です。模範解答より、自分たちのことばで答える方が、誠実さと個性が伝わります。

    「縁故がなければ合格できない」という思い込み
    「あの学校は縁故がないと合格できない」という言説は、お受験の世界で根強く残っています。しかし、実際には縁故のない家庭でも合格している例は多くあります。こうした思い込みに振り回されることなく、お子さんの力を育てることに集中していただきたいと思います。

    お受験グッズへの過度なこだわり
    「この幼児教室のバッグでないといけない」「お道具はこのブランドでなければ」――こうしたグッズへのこだわりも、お受験の世界特有のものです。道具はあくまでも道具です。大切なのは、その道具を使ってお子さんがどう学ぶかです。

    長年の経験が「固定観念」になることもある

    幼児教室で長年指導に携わってきた先生方の経験は、本来とても貴重なものです。しかし、長年同じ世界に身を置くことで、その世界の慣習がそのまま「正解」になってしまうことがあります。

    社会心理学における「集団思考(groupthink)」の概念が示すように、特定のコミュニティのなかで長く過ごすと、そのコミュニティ内の価値観が絶対的なものに見えてきます。外から見れば「なぜ?」と感じることでも、内側にいると「当然のこと」として疑わなくなっていくのです。

    お受験の世界の慣習の多くは、こうした「集団思考」のなかで長年維持されてきたものです。時代が変わり、学校の教育観が変わっても、慣習だけが残り続けることがあります。

    保護者の方へ――自分たちの価値観を大切にしてください

    「お受験」の世界に入ると、さまざまな情報や慣習が押し寄せてきます。そのなかには、本当に大切なものもあれば、時代遅れになった慣習や、根拠のない「ルール」も混ざっています。

    大切なのは、保護者の方ご自身がしっかりとした価値観を持ち、お子さんの育ちに本当に必要なものを取捨選択する力を持つことです。

    「おテスト」ということばに違和感を覚える感覚は、正しいものです。「願書はこうでなくてはいけない」という言葉に「本当にそうなのか?」と問い返す姿勢は、とても健全なものです。

    お受験の世界の特殊な慣習に染まりすぎることなく、普通の感覚を大切に持ち続けてください。そのバランス感覚が、お子さんに健全な価値観を伝えることにつながります。

    受験はゴールではなく、通過点です。その先に続く長い子育ての道のりのなかで、わが子に何を伝えたいか。その問いをいつも心に持ちながら、お受験の準備期間を過ごしていただけたらと思います。

     
     
    小学校受験を中心に、中学・高校・大学受験まで、指導歴40年。現場の目線から、等身大のことばで発信しています。塾や学校からの情報に加えて、セカンドオピニオンとして気軽にお読みいただければ幸いです。横浜FMarinosサポーター。

    あなたへのおすすめ