
【noteでBL】「アルハンブラの幽霊」あとがき
なみさん主催の#noteでBL企画に参加いたしました。
はじめまして、鳩野公園と申します。noteでBL企画は3回目、久しぶりの参加です。
ご覧になった方々がちょっとでも楽しんでくださればと思います。私が私のためにノリで書いたものなので。
最初に断っておくべきかと思いますので書きますが、今回の作品はいち素人作家のフィクションです。アルハンブラに美男と騎士の幽霊は出ません。
書き出しが降りてきてしまった
お題を見てから数日、さて何を書こうかなあと思っていた時に突然書き出しが頭の中に出てきました。
「アルハンブラの宮には幽霊がいる」。
え、何これは。なんで急にアルハンブラ宮殿が。こっからBLに持っていくって何?だってアルハンブラってさ、よく知らないし行ったこともきちんと見たこともないけど、スペインのイスラーム様式を所々に備えた城塞都市で、えっと、どう足掻いてもBLは無理じゃない?(宗教上の理由)
っていうか、お題で例示されてるみたいなものが求められている回答であって、どう考えても「アルハンブラの宮には幽霊がいる」から始まるのは風呂敷デカすぎるよ。
でも他に何も思いつかなかったのです。こういう書き出しが突然出てくることがあると、大抵はその引力に抗えずに物語が動き始めます。「閉ざされた庭」(文フリで頒布予定の小説)の冒頭、「撫でてしまったのか」もそうです。もう自分では止めようがないのです。そういうわけで、私は突然この数日でアルハンブラ宮殿とイスラーム建築のwikipediaを読み、ワシントン・アーヴィングの「アルハンブラ物語」を数ページ齧ることになったのでした。
コンビニのトンチキ本のせいかもしれない
コンビニの書籍売り場ってなんというか、普段小説を読まない人向けの書籍があったりしますよね。私が二十年前くらいに愛読していたこの変な本もコンビニで母に買ってもらったものです。
大人になってみれば有名な話ばかりかつこう……盛りまくってドヤ顔する感じの内容なので、子供向けの「人間のイヤなとこ入門書」なのですが、幼い私は夢中でこれを読んでいました。エリザベート・バートリの話とマヤ文明の生贄の話と、アルハンブラ宮殿の話がとりわけ好きでした。以来アルハンブラはいつか行ってみたい場所です。それが突然思い出されたのでしょうか。
noteに載せる内容としてそぐわないな〜と思いつつ正直に書くと、遠い過去の歴史というフィルターを通して見る処刑とか謀殺とか、好きなんですよね。
もう少し考えると宗教とか国とか行った何か大いなるものや、その場の人間の総意みたいな「抗い難いものが作用して起きる行為」が好きな気がします。京極堂の言っていた「魔がさす」的な概念ですね。道理の通らない行為が好きというか。良くも悪くもなので、美女と野獣の村人たちがガストンに喚起されて野獣を殺すべく決起するシーンと同じ快感を、十字架を降ろされたイエスのようになったピーター・パーカーに手を差し伸べる、彼に守られた市民たちのシーンにも感じています。どちらかといえば残虐行為に向くものがとりわけ好きということで……
※この文章は現実でのいかなる犯罪行為や残虐行為も肯定・賛美する意図を持ちません。
物語として消費する
ドラマMIU404のあるキャラクターの言っていた「俺はお前たちの物語にはならない」という台詞が好きです。私は全く真逆で、誰かの物語になっておもしろニンゲンとしてどこぞの誰かをちょっといい気分にさせて語り継がれたいので。
世界史とか歴史を物語として消費するのが好きというか、そうして世界を解釈せずにいられないというのがあります。この世は舞台で、自分はその役者だと思って振る舞うのでなければ、私は他者に優しくしたり善く生きようとできません。こんな世生きるのに正気でいられるか〜〜〜〜〜!!
なので、誰かを物語として消費する時に、それを嫌がる人が多数いるというのを忘れないために上記の台詞を心の中に持つようにしています。
物語を書くということは、物語を消費することとセットです。モブBLというお題がそれを意図しているものではないのだとは思いつつも、人間が他者を眺めてそれについて思い巡らせ、時には自分の都合のいいように解釈するということは避けられませんよね。それでも企画に参加して物語を紡いでいる皆様はその営みを愛するからこそしているのですよね。そういう営みを書くのにいいお題だったなと思います。アーヴィングの物語だって、男と女でそうやって書いてるわけだし……
ご想像にお任せします(無責任)
この企画のBL小説の読者はみなさんご自分で何か書かれる方がほとんどかと思いますので、二人の幽霊について実際?のところはどうだったのかはお任せします。全然無関係の可能性だってあります。降って湧いた語り手の語る幽霊話とかいう何も的を得ない話を信用できますか?
そこを何の抵抗もなく通り過ぎて、ただ幻の内容に想いをはせることができるって特殊能力なんじゃないかなと思います。その特殊能力をもってたくさん創作してほしいのです。頼む。
掌編:アルハンブラの思い出
Am、E7、Am、E7、次はDm。
楽譜に書かれている文字の意味はちんぷんかんぷんで、文字を追いかけているとだんだん腹が立ってくる。宇宙人の書いた暗号を読まされているようだった。それか、化学のテストをさせられてるみたい。
楽譜を読み解くのは諦めて、レコードプレイヤーに手を伸ばす。円盤の溝に針を落とすと、ぷつぷつした音の後に、ギターの音色が聞こえてくる。両手をもたもた動かしながら音を探す。このトレモロとかいうのは、本当に人間の指でできるものなのだろうか。
階下から夕飯に呼ぶ母さんの声がした。レコードを止めて、ギターを壁に立てかける。
先日、祖父が亡くなった。
久々にグラナダへ行って、葬儀をあげて、父と母が祖母のために家をととのえている間に、彼女を慰める役を引き受けるためだった。足の悪い彼女を、祖父が人生の大半を過ごしたアルハンブラ宮殿に連れて行く時の手伝いも。
彼の形見は色々あったけれども、レコードとギターと、古くなった楽譜をもらったのは、それがレトロでかっこいい気がしたから。それにギターを弾けるとモテるっていうし。実際のところ道のりは遠そうだけど、祖母は泣いて嬉しがっていたし、頑張ってものにしたい。
「アルハンブラの思い出」の楽譜、五線譜の始まりの部分に、祖父に向けての誰かのメモ書きが残っている。
誰が書いたのかはわからない。祖母に聞いても知らないと言っていたから、多分彼がとても若い頃の恋人だったりして、なんて思う。本当のところはどうなのか全くわからないけど、そうだったら面白い。好きな人のためにギターを弾くって憧れだから。なんて言ったら、私のパートナーは笑っていた。弾いてくれるならチャーリー・プースがいいらしい。彼女が私のオールドファッションなところをその実気に入っているのは知ってるから、私はビートルズを覚えるよ、と言ったけど。
母さんがまた階下から呼んでいる。部屋のドアを開けた。
"Tal como cuando tocas para mí"
私に弾いて聞かせてくれる時のように