
療育を「もう少し増やしませんか」と言われたとき
その場で決めず、家庭で整理してから相談していい
「療育の回数を、もう少し増やしてみませんか」
面談の終わりや、迎えに行ったときに、そう言われることがあります。
その場で返事をしなければならない気がします。
子どもの様子を見たうえでの提案だと思う。
機会を減らしたくない。
今のうちに取り組んだほうがよいことがあるのかもしれない。
けれど、家庭には、その場では確かめられないことがあります。
仕事や送迎をどうするか。
園や学校と両立できるか。
子どもの疲れは増えないか。
家族全体の予定に組み込めるか。
療育を一回増やすことは、予定を一つ足すだけではありません。
だから、その場で決めなくてもよいのだと思います。
「一度、家族で相談してから、改めてお返事してもよいですか」
持ち帰ることは、提案を断ることではありません。
子どもと家庭に必要な情報をそろえるための時間です。
なぜ今、増やす話が出たのか
同じ「回数を増やす」という提案でも、背景は一つではありません。
最初は場所や支援者に慣れるため、少ない回数から始めていたのかもしれません。
通うことに慣れ、次の目標へ進めそうな姿が見えてきたのかもしれません。
就園や就学など、生活の変化を見据えた提案の場合もあります。
反対に、親の側が
「もっと通ったほうが、早くできるようになるのではないか」
と焦り、回数を増やしたくなることもあります。
まず確認したいのは、増やすことへの賛成や反対ではありません。
「どうして今、増やす話が出たのでしょうか。増やすと、どんな経験が増えますか」と聞くなど
理由と目的が分かれば、家庭で何を考えればよいかも見えやすくなります。
療育の日だけでなく、一週間全体を見る
持ち帰ったあとに見るのは、療育の日だけではありません。
園や学校を含めた一週間で、疲れが強くなっていないか。
食事や睡眠は安定しているか。
通所の前後に、崩れたり動けなくなったりしていないか。
家で落ち着いて過ごす時間が残っているか。
そこに、家庭側の条件も重ねます。
仕事を調整できるか。
距離と送迎に無理はないか。
費用を続けて負担できるか。
きょうだいや家族の予定と両立できるか。
ここで分けておきたいことがあります。
「今は通所回数を増やす優先度が高くない」ことと、
「回数を増やす意味は感じていても、通所日を増やす形では続けられない」ことです。
後者は、親の意欲が足りないという話ではありません。
子どもに必要な支援と、実際に続けられる生活条件を、同じ場所に置いて考えます。

増やせないときは、役割を分けて相談する
わが家も、通所先が遠く、回数を増やすことはできません。
家庭で試せることを教えてもらい、次の通所時に相談する形をとっています。
ただし、同じようにできるかどうかは、支援の内容や体制によって、通う先ごとに違います。
通所日を増やせないときは、まず通っている先に聞いてみます。
「この目標に近づくために、療育先でできることと、家でできそうなことを分けて教えてもらえますか」
療育の場でできたことが、家庭や園、学校でもそのまま使えるとは限りません。
場所や人、使う物、声のかけ方が変われば、子どもが手がかりにできるものも変わります。
だから、家庭でも生活の中で試してみる意味があります。
ただし、療育先と同じ道具や時間を用意できないこともあります。
その場合は、家庭で自己流に方法を変えるのではなく、
「同じようにはできないのですが、家の生活の中でできる形はありますか。変えないほうがよいところも教えてください」
と相談します。
家庭で行うことと、療育先で行うことは、まったく同じである必要はありません。
何を目指しているのか。
どこは変えないのか。
難しいときは、どこで止めて相談するのか。
そこを共有しておけば、家庭の事情に合わせることと、自己流に変えることを分けやすくなります。
家庭で試した様子をどう伝えるかも、通う先に合わせて確かめます。
通所時に口頭で伝えるのか、連絡帳などを使えるのか。続けて連絡できるかどうかも、支援先によって異なります。
続けにくい条件も、相談の材料になる
家庭での取り組みを示されると、
「言われたから、きちんとやらなければ」
と強く受け止めることがあります。
できなかった日に自分を責めたり、うまくいかない場面で何度も促したりすれば、親子ともに苦しくなります。
自分の性格を詳しく説明する必要はありません。
ただ、
「毎日と決めると焦りやすい」
「うまくいかない日が続くと、どこで止めればよいか迷いそう」
「朝は難しいが、入浴前なら取り組めそう」
など、続けにくい条件や、できそうな条件を一つ伝えることはできます。
これは、できないことを認めてもらうためではありません。
家庭の役割をなくさず、親子が続けられる方法を一緒に考えるための情報です。
回数だけを答えにしない
「増やしませんか」と言われたときに考えたいのは、回数だけではありません。
何のために増やすのか。
療育先と家庭で、それぞれ何をするのか。
いつ、何を見て見直すのか。
その三つまで確認できれば、増やす場合も、今の回数を続ける場合も、判断の理由が少し見えやすくなります。
「増やしませんか」という提案を、家庭だけで抱える判断ではなく、子どもの今を一緒に考える話し合いの入口にしてよいのだと思います。
療育の時間に、何を見てもらっているのか分からないときは、こちらの記事にも、支援先へ聞くための言葉をまとめています。