
救世主は今日も不審者になる
私は小さい頃から困っている生き物を見ると放っておくことができない。
部屋に蜘蛛が出たら捕まえて必ず外に出すし、飛ぶ虫も出来る限り助ける。
自分ではかなり善人だと自負している。
ただ、虫を助けるというのは時に変な目で見られがちである。
夏場になるとミミズがアスファルトの上を跳ねているのをよく見る。
そんな時はひとまず人通りがなくなるまで、不自然なくらい辺りをうろうろする。
よし、誰もいなくなった。
今だ、とミミズを掴み上げる。
その瞬間横のマンションから綺麗なお姉さんが出てくる。
計算外である。
私はたちまちミミズを掴む変な女になってしまった。
道路には、ミミズ以外にも放っておけない生き物が沢山いる。
その一つがカタツムリだ。
あいつはとにかく進むのが遅い。
何故あんなのが都会で生きていられるのか不思議なくらいである。
都会の喧騒はどこ吹く風とのろのろと進む姿を見ていると羨ましくもあるが、誰かに踏まれそうで見ていられない。
ひとまずベリッと道路から剥がして花壇などを探してうろうろするとまた通行人が変な顔をしてこちらを見てくる。
私は別にこのカタツムリを気に入って飼おうとか、エスカルゴとして食べようだとかそういう訳ではない。
断じて違う。信じてくれ。
道路だけではない。
車の中でも私は同じことをする。
芋虫などが車の中に出た時も、そのまま道路に捨てるのが可哀想で公園に着くまで何十分も手の上を這わせたりすることもある。
以前は夜に父とよく散歩していたのだが、その際も脱皮するためにのろのろと道路を歩いている蝉を見ると父に木まで運ばせていた。
私は蝉が苦手で触れないが助けたい。
いつぞやはすっぽんが道を歩いていてそれも父親に川に入れてもらった。
噛まれそうでこれまた触れないが、踏まれたら可哀想だ。
まぁ、父親が噛まれてしまったら、それは仕方ない。
こうして私は色んな生き物を日々助けている。
きっと私が死んだら沢山の蜘蛛やら何やらが糸を垂らして地獄から救出してくれるだろう。
いや、地獄には行かないと信じたいが…