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「そっか、あの時も」ーそっかー

    目を開けると、白い天井が見えた。
    自分がどこにいるのか分からない。

    腕には点滴。
    体は重い。

    周りには、何人か人がいた。

    家族。
    知っている顔。

    そして。
    その中に、あの子がいた。

    私は、ぼんやりした頭で聞いた。

    「俺、どれぐらい寝てた?」

    誰かが答えた。
      
      「半年ですよ。」

    半年?
    ……半年だけ?

    長い走馬灯、
    人生のやり直し。

    30年は寝てた気がする。

    「えっ、じゃあもう。」

    半年。
    いつから数えて半年?

    2026年の7月から?
    2025年の10月から?

    どっちの過去が本当の過去なのか。
    もう自分では、わからない。

    でも。

    「受験、終わってるやん」

    思わず声が出た。
    そして、そのあとに続けた。

    「受験まで一緒に走れなくて、ごめん」

    あれだけ早くからやり直したのに。
    必要なときに、何もしてやれなかった。

    あの子は、少し笑った。

      「大丈夫です」

    そして言った。

      「先生の作ったテキストで乗り切って、合格したし。」
      「先生おらんでも、いけたで。」

    作ったものだけは、
    残っていた。

    「……そっか。」

    よかった。

    いや。
    俺、いなくてもよかったのか。

    娘が飛び込んできた。

      「パパ、暑い時の自転車は、」
      「もう、あかんで。」

      「はよ家に帰ってきて。」
      「ママを手伝ってな。」

    「そっか、いつものことやな。」

    ー完ー
     

    (この物語は、『ほぼ』ノンフィクションです。)
    ・熱中症で倒れたことはフィクションです。
    ・監査役のことをめんどくさい人と思っていたことはフィクションです。
     最初からずっと感謝していました。
    ・テキストは、本当に存在します。

     
     
    tkです。 20年以上、英語教育に携わっています。 教材・アプリ・小説・漫画を制作。 Project Traverseとして、 「読む・観る・学ぶ」をつなぐ 新しい学習体験に挑戦中です。

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