
🎧 深堀ミュージック ほぼDaily|The Clash - I Fought the Law
今日はThe Clash。
『I Fought the Law』。
この曲を聴くと、まずJoe Strummerの顔が浮かびます。
だから長いこと、なんとなくThe Clashの曲として聴いていました。
ところがこれ、
Joe Strummerが書いた曲ではありません。
書いたのはSonny Curtis。
Buddy Holly亡き後のThe Cricketsが1960年に録音し、その後Bobby Fuller Fourがヒットさせた曲です。
The Clashがカバーしたのは1979年。
つまり彼らが演奏する頃には、すでに20年近い歴史があった。
でも、
The Clashの曲みたいな顔をしてるのよね(笑)。
これも名カバーの条件なのかもしれません。
タイトルは、
I Fought the Law.
そして有名なフレーズが、
I fought the law and the law won.
「俺は法と闘った。そして法が勝った。」
ものすごくThe Clashっぽいでしょう。
反体制。
反権力。
国家なんかクソくらえ。
そんな歌が始まりそうです。
ところが歌詞を読んでみると、少し違う。
主人公は金がなくて犯罪に手を出す。
そして捕まる。
刑務所で働かされながら、離ればなれになった恋人を思っている。
要するに、
普通に法律に負けています(笑)。
革命家が国家権力と闘った話でもなければ、巨大な権力に立ち向かう英雄の物語でもありません。
悪いことをした。
捕まった。
恋人にも会えなくなった。
そして、
「法律と闘ったけど、法律が勝ったわ」
と歌っている。
なんとも身も蓋もない(笑)。
ところがThe Clashが演奏すると、これが猛烈に格好よくなる。
特に私はJoe Strummerの歌い方が好きなのよね。
悲壮感たっぷりに、
「俺は負けた……」
とは歌わない。
なんか明るいのよ(笑)。
ギターは走る。
ドラムも走る。
Strummerも気持ちよさそうに歌っている。
歌詞だけなら負け犬の歌なのに、音楽を聴いていると負けた感じが全然しない。
むしろ、
「負けましたー! 以上!」
くらいの潔さまで感じる。
そこには英国ロックらしい乾いた皮肉もあるのでしょう。
法と闘った。
法が勝った。
だから何だ。
それでも俺たちは演奏する。
そんなふうにも聞こえてくる。
私は昔、日本の自動車CMでもこの曲が使われていたような記憶があります。
どこのメーカーだったか。
どの車だったか。
そこまでは覚えていません。
でも、考えてみれば面白い。
車のCMから、
♪ I fought the law and the law won
ですよ。
「私は法律と闘いました。法律が勝ちました。」
車を売るには、あまり縁起のいい歌詞とは思えません(笑)。
でも関係ないのよ。
ギターが鳴る。
Strummerが歌う。
映像の中を車が走る。
格好いい。
それで成立してしまう。
洋楽が日本のCMで使われると、こういうことが時々あります。
歌詞を日本語にして企画会議をやったら、
「ちょっと待て」
となりそうな曲でも、音として聴けば完璧だったりする(笑)。
そして私は、それでいいと思うのよね。
音楽を好きになるとき、必ずしも最初から歌詞を理解する必要なんてありません。
私だってThe Clashを聴きながら、
「これは犯罪と刑罰について描いた作品で……」
なんて考えていたわけではない。
格好いいから好きだった。
それが先です。
あとになって歌詞を知る。
さらに調べたら、The Clashのオリジナルですらなかった。
それでまた面白くなる。
音楽なんて、その順番でもいい。
そして改めて聴くと、
『I Fought the Law』という曲には不思議な力があります。
主人公は負けている。
タイトルから負けている。
何度歌っても、
法が勝つ(笑)。
なのにThe Clash版を聴くと、こちらまで元気になる。
勝った歌だから格好いいわけではない。
負けたって格好いい音楽は作れる。
考えてみればThe Clashらしい話です。
1960年に生まれた曲を、1979年の英国の若者たちが自分たちの音にしてしまった。
そして何十年も経って、しがないおじさんが朝から聴いている。
法律は勝ちました。
でもこの曲も、相当しぶとい(笑)。
🎧 The Clash - I Fought the Law(1979)
今日はこのへんで。
きっとまた明日。🎧
©️深堀ミュージック