
原子分子は教科書に書かれているような固まりなのか?
This is a real image of a molecule captured by IBM using Atomic Force Microscopy (AFM), a technique that can visualize the arrangement of individual atoms on a surface. pic.twitter.com/dkjgaLN186
— Cosmos Archive (@cosmosarcive) June 27, 2026
この画像は、ある分子の電子雲の写真を、特別な装置を使って撮られたものです。しかしたった1回の試行(シングルショット)の撮影で、この画像が得られるわけではありません。多数回の撮影の大量のデータをデータ処理をして、初めて得られる画像です。その意味では、電子雲の量子揺らぎ自体が画像として写っているわけではありません。実際の分子は、量子揺らぎを伴った量子的対象です。
我々の目の前には、ありありとした様々なモノがありますが、「それは本当に実在なのか?」と現代物理学は問いかけてきました。そして実験で、様々な視点から、その実在性を否定をしています。
しかし、身の周りのモノについて、「あるじゃないか!そこに!形状を持った固まりが!」と思ったまま人も多いようです。後天的に刷り込まれた、疑似的な実在感のせいです。たとえばミクロな水分子に対して、教材として売られている下記の分子模型のような、硬い物体のイメージを持っていると、それは量子力学の現実とは大きくずれるのです。

驚くべきことに、そのような固まりとしての水分子は、実際には存在しなかったのです。
我々は日常の感覚を信じ切っており、モノを分解していくと、原子分子という小さな固まりの「実在」の集まりになるという、素朴なイメージを持ってしまっていただけです。しかしそのように、いかにも物々しい「モノ」の存在は、ベル不等式の破れの実験によって否定されました。
つまり我々の目に映る物体は、我々が素朴に思うような「実在」では決してないのです。
たとえば太陽から降り注ぐニュートリノは、1秒あたりに10の12乗個程度、手のひらを貫通しています。マクロとして成り立つ、膨大な数です。しかしニュートリノはほとんど手の原子と力のやりとりをしないため、我々は貫通しているそのニュートリノを実感できません。人間の日常の感覚では、ニュートリノは本当に実在するのか?と思ってしまうような存在です。 そしてこのニュートリノも、量子力学的な対象、つまり「量子系」の1つなのです。水分子やニュートリノを含めた全ての量子系では、量子もつれを通じて、ベル不等式は破れています。これは「局所的実在性」ということが成り立たないことを意味しています。
拙書『無とは何か』(SB新書)では、身の周りのモノを通常の捉え方をすることを、現代物理学の視点から徹底的に否定します。そして、モノではなく、コト。つまり量子情報からこの世界は出来ているという「It From Qbit」という観方を紹介しています。この「万物は量子情報である」という観方は、現在世界中で多くの物理学者が研究をしている、物理学の一大潮流なのです。