
【連載】全前置胎盤の記録|第3話 娘に会いたい――突然始まった長期入院生活
# 第3話 長い入院生活のはじまり
突然の大量出血から始まった、病院生活。私は出産まで絶対安静となり、病室のベッドの上だけで過ごすことになりました。トイレ以外は、すべてベッドの上です。
お腹の赤ちゃんを守るためには、天井を見つめたまま、とにかくじっと安静にしているしかありませんでした。
けれど、安静の負担よりも、私にとって何よりつらかったのは、長女と離ればなれになったことでした。
当時の長女はまだ2歳。もうすぐ3歳になる、ママが大好きでたまらない甘えん坊の時期でした。昨日まで毎日、片時も離れずに一緒にいた娘が、ある日突然目の前からいなくなったのです。
「ママ、どこ行ったの?」
娘は今、どう思っているだろう。寂しくて泣いていないだろうか。ご飯はちゃんと食べているだろうか。考え出したらキリがなく、気が狂いそうになるほど心配でした。
幸いにもつわりはもう落ち着いていましたが、それがかえって時間の流れを遅く感じさせました。
狭い病室でできることなんて、ほとんどありません。私はひたすらゲームの画面をタップして、無理やり時間をつぶしていました。けれど、本当に欲しかったのはゲームではありません。
娘の声が聞きたい。娘の笑顔が見たい。抱きしめたい。
今日は何をしていたのか、元気にしているのか。ただ、それだけが知りたかったのです。
夫は毎日仕事で帰りが遅く、義実家にいる娘と電話をつないでくれたり、写真を送ってくれたりすることは、ほとんどありませんでした。
それでも、私は夫を責めませんでした。「毎日遅くまで仕事をしているんだから、忙しくて仕方がないよね」と自分に言い聞かせ、納得させていたのです。
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週末になると、娘が面会に来てくれる日がありました。暗い病室に差し込む光のような、その日だけが私の唯一の生きがいでした。
けれど、娘を連れてきてくれるのは、毎週夫というわけではありませんでした。
私の両親が、実家から義実家に寄って長女を連れてきてくれることも珍しくありませんでした。
それでも私は、夫を疑いませんでした。
「平日の仕事で疲れ果てて、土日は動けないくらい疲れているんだろう。家族のために頑張ってくれているんだから」と、心の底から労っていたのです。
あの頃の私は、本当に、何も疑っていませんでした。
けれど、会いに来た娘の様子が、どこか違うように感じました。以前のように「ママ!」と飛びついてくることもなく、なんとなくよそよそしいのです。私に会えて嬉しいというより、戸惑っているような、どこか遠慮しているような。
(環境が変わって、戸惑っているだけかな)
そう自分に言い聞かせ、深く考えないようにしました。けれど心の片隅に、小さなひっかかりが残ったのも事実でした。
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娘に会えない狂おしいほどの寂しさと、お腹の赤ちゃんが無事に生まれてくれるかという不安。その二つを抱えるだけで、私の心はとっくに限界だったのです。
病室のカレンダーを見つめながら、私は毎日指折り数えていました。
「あと何日頑張れば、娘に会えるだろう」
「あと何日頑張れば、この子を無事に産めるだろう」
ただ、それだけを支えに。
長い長い入院生活は、まだ始まったばかりでした。
(第4話へ続く)