
期待と現実の間にあるもの。
一度は経験があると思う。
雑誌で見た服。
お気に入りのブランドから届いた新作の通知。
友人から聞いた話や、誰かの噂話。
知らないうちに、期待が膨らんでいる。
実際に見た時。
手に触れた時。
着た時、履いた時。
初めて店に入った時。
「思っていたのと違う。」
そんな経験はないだろうか。
期待し過ぎていたのかもしれない。
それとも、自分が想像していたものと、実際に感じたものが違っただけなのかもしれない。
感動するほどではなかった。
思っていたほど魅力を感じなかった。
理由は、その時によって違うと思う。
ただ、ひとつ確かなことがある。
自分が感じる価値と、他の人が感じる価値には、必ず差があるということ。
同じものを見ても、同じように感じるとは限らない。
その差を埋めることも、接客という仕事の大きな役割だったと、今でも思っている。
例えば、一枚のTシャツ。
お客様が興味を持ってくれた。
でも、実際に手に取ってみると、思っていた印象とは違った。
そんな時、どうするだろうか。
商品のスペックや個性を説明することはできる。
けれど、それだけで相手の感じ方が変わるとは限らない。
大切なのは、まず相手が何を感じているのかを知ることだった。
なぜ興味を持ってくれたのか。
何を期待していたのか。
実際に触れてみて、どう感じたのか。
そこを理解したうえで、自分が知っている魅力を伝えていく。
最初の印象を覆そうというわけではない。
相手が感じたことを否定するのでもない。
ただ、まだ知られていない魅力を知ってもらうことで、最初の印象が変わることもある。
もちろん、変わらないこともある。
どちらも間違いではない。
相手が自分の意思で、もう一度その商品と向き合ってくれる。
その瞬間に、接客という仕事の面白さを感じていた。
自分が良いと思うものを、相手も同じように感じるとは限らない。
だからこそ、相手が何を感じているのかを知ることに意味がある。
これは、服や買い物に限った話ではないと思う。
人との会話でも、仕事でも、家族との関わりでも。
自分が伝えたいことと、相手が受け取ることの間には、少しずつ違いがある。
その違いを知ろうとすること。
そして、自分の考えを伝えたうえで、相手自身に判断してもらうこと。
期待と現実の間には、そんなやり取りがあるのかもしれない。