
接客とは、声をかけることではない。
アパレルで働いていた頃、入店されたお客様への最初の声掛けを「ファーストアプローチ」と呼んでいた。
「ごゆっくりご覧くださいませ」
「サイズよかったらお伺いしますよ」
よく聞く言葉だ。
もちろん、声を掛けること自体が悪いわけではない。
ただ、いつしか「とりあえず声を掛けておけばいい」という行為になってしまうことがある。
販売員としては「アプローチした」という結果が残る。
でも、お客様にとって、それが心地よい接客だったとは限らない。
僕自身、ラルフローレンで働いた経験が大きかった。
そこで教わったのは、"お客様を自宅に招き入れるようにお出迎えし、もてなす"という考え方。
必要なら声を掛ける。
一人で見たいなら、そっとしておく。
相手の様子を見ながら、距離を変える。
決して声を掛けないという事ではない。
声を掛けることが接客なのではない。
相手が今、何を求めているのか。
どのくらいの距離なら心地よいのか。
それを空気感や目線から感じ取る。
そのうえで、必要なタイミングに一歩だけ近づく。
それが、僕にとっての接客だった。
ブランドが変わっても、職種が変わっても、この考え方だけは変わらない。
接客とは、声をかけることではない。
相手が心地よくいられる空気をつくること。
今でも、僕はそう思っている。