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聞き上手な人の、最初の一言

    前回の記事で、

    聞き上手な人は、
    話すのが上手いのではなく、
    相手をよく見ている人なのかもしれない。

    そんな話を書いた。

    今回は、
    実際にその古着屋で接客していただいた時の話を少ししてみたい。

    当時、静岡でアパレルの仕事をしていた頃。

    ワードローブとして長く付き合えるレザーシューズを探していた。

    そんな時、職場の先輩から薦められたのが、以前の記事でも触れた沼津の古着屋だった。

    今振り返ると、その先輩が薦めてくれた理由もよく分かる。

    当時勤めていたのはRalph Lauren。

    トラディショナルな洋服を着る機会が多く、レザーシューズ一つ取っても実は合わせ方には相性がある。

    もちろん絶対的な正解はない。

    ただ、

    「こういうスタイルが好きなら、この選択肢もある」

    そんな相談に柔軟に乗ってくれる店だという確信があったからこそ、先輩は紹介してくれたのだと思う。

    店内へ入ると、右手には様々なレザーシューズが並んでいた。

    色も違う。
    形も違う。
    年代も違う。

    一足ずつ眺めながら、

    「これはどんな人が履いていたんだろう」

    そんなことまで想像してしまう。

    レザーシューズが欲しくて来たはずなのに、店内に並ぶ一点物の洋服やアクセサリーにも目を奪われる。

    どのアイテムにも、不思議と熱量が宿っているように感じた。
    店主が現地で買い付けてきたであろう背景や想いが、自然と伝わってくる。
    店内を一周したあと、再びレザーシューズのコーナーへ戻った。

    その時だった。
    店主が静かに声を掛けてくれた。

    「どんな服に合わせるものを探してるんですか?」

    今思うと、とても不思議な質問だった。
    サイズは?
    予算は?
    どんな形が好きですか?

    そう聞かれてもおかしくない場面だったと思う。

    でも、その人が最初に聞いたのは靴の話ではなかった。

    どんな服を着るのか。
    どんな場面で履きたいのか。
    どんなスタイルが好きなのか。

    つまり、

    自分がどんな人間なのかを知ろうとしてくれていた。
    だから自然と話したくなった。

    普段どんな服を着るのか。
    仕事では何を着ているのか。
    どういうレザーシューズを探しているのか。

    気付けば自分から言葉が出ていた。

    そこからは本当にスムーズだった。

    自分の好み。
    普段のスタイル。
    求めている用途。

    一つひとつを整理しながら、

    「それならこういう選択肢もありますよ」

    と提案してくれる。
    押し付ける訳ではない。
    知識をひけらかす訳でもない。

    でも確かな経験と知識があって、

    こちらの悩みを一つずつ解決してくれる。
    まるでスタイリストと会話をしているような感覚だった。

    そして何より印象的だったのは、
    商品を薦められている感覚よりも、

    自分を理解してもらっている感覚の方が強かったことだ。

    結果として、そのレザーシューズは購入した。

    もちろん気に入ったからだ。
    ただ、
    今振り返ると持ち帰ったのは靴だけではなかった。
    相手を理解しようとする姿勢。
    言葉を引き出す質問。
    そして会話の心地良さ。

    販売員として働いていた自分にとって、

    その体験は接客に対する考え方を大きく変えるきっかけになった。

    聞き上手な人は、
    話すのが上手い人ではない。
    相手が自然と話したくなる入口を作る人なのだと思う。

    そして今思えば、

    あの古着屋の魅力は会話だけではなかった。

    空間、音楽、人、距離感。

    そのすべてが重なっていたからこそ、あの時間は特別だったのかもしれない。

    その話は、また次回。

     
     
    「似合う」を育てる記録。 服だけじゃない。 身体も。 暮らしも。 人との関わり方も。 接客で学び、 日々の暮らしで気づき、 40歳から始めた「MOVE.50」とともに、 50歳の自分を育てています。

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