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Photo byshiny_agapan5685

先生の言うことを聞いたら、怒られた

    私の言うことを、すぐには聞いてくれなくなった子がいました。

    きっかけは、ほんの些細な出来事でした。

    ある日の着替えの時間。

    私はいつものように、その子に着替えに行くよう声をかけました。

    すると別の保育士が、

    「先にここで準備するんだよ」

    と少し大きな声で注意しました。

    私は戸惑いました。

    今までそんなふうにしていたことはなかったからです。

    でも、一番戸惑ったのはその子だったと思います。

    だって、その子は私に言われた通りにしただけなのです。

    「ごめんね。先生が行っていいって言っちゃったからね」

    私はその子に謝りました。

    そして次の着替えの時間。

    準備ができていたその子に、

    「着替えるからおいで」と声をかけました。

    ところが、その子はもじもじしたまま動こうとしません。

    なので、私は先に来た別の子の着替えを手伝うことにしました。

    しばらくすると、別の保育士がその子を呼びました。

    するとその子は笑顔になり、着替えに向かったのです。

    その姿を見て、ハッとしました。

    「先生の言うことを聞いたら、また怒られるかもしれない」

    もしかしたら、そう思わせてしまったのかもしれない。

    それからも、
    「〇〇して大丈夫だよ」

    と私が声をかけても、困ったような顔をして、なかなか動こうとしないことがありました。

    でも、私を避けているわけではありません。

    むしろ、自分の気持ちはよく伝えてくれました。

    食事のときには、

    「これは減らして」
    「これは減らさないでね」

    髪を結ぶときには、

    「こうするのはイヤ」

    ある日のおやつの時間には、

    「もう食べられない」

    と私に言いに来ました。

    「そっか。残して大丈夫だよ」

    そう伝えました。

    しばらくして見に行くと、お皿は空になっていました。

    「あれ?食べられたの?」

    そう聞くと、その子は悲しそうな顔で、

    「怒られたから……」

    とつぶやきました。

    この子は、自分の気持ちを言えないわけじゃない。

    「言っても大丈夫な相手」を選んでいるのかもしれない。

    そんなふうに感じました。

    保育士によって「いいよ」と「ダメ」が違ったら、子どもは戸惑います。

    大人なら「人によって考え方が違う」と分かるけれど、子どもにはそんなこと分かりません。

    大人同士でやり方が違ったとき、一番困るのは子どもなのだと思います。

    あのとき私は、その子にとって、

    「気持ちは言える先生。でも、言う通りにして大丈夫なのかはちょっと心配な先生」

    になってしまったのかもしれません。

    それでも、自分の気持ちを私に伝え続けてくれたことは、嬉しかった。

    「先生に言っても大丈夫」だけじゃなく、

    「先生の言うことなら大丈夫」

    そう思ってもらえる保育士でいたい。

    子どもとの信頼関係って、こういう小さなやり取りの積み重ねなのかもしれません。

     
     

    らむ

     
     
    子どもたちの生活に合わせて働き方を変え、今は派遣保育士をしています。32年の保育士経験と2人の娘(高1. 専1)の母として感じたことを綴っていきます。わたしの経験が少しでもみなさんのお役に立てればと思います。HSP傾向もあるので、そちらの目線からの発信もしていきたいと思います。

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