
待つ時間 《シロクマ文芸部》
「待つ時間が、嫌いだった。」と彼は、言った。
私は待つのは、苦にならない。
出会った時、彼は少し年上に思えたが同級生だった。
行列に一緒に、並んだ時彼はフッといなくなり、順番が来ると現れる。
私が待っていて、合流しているから、問題無いように最初は思えてた。
しかし、合流禁止の場合でも、彼はひょうひょうと合流し、それを誰にも注意される事は1回もなかった。
ある時、聞いた。
「いつも並んで待っている時、何処行ってるの?」
彼は、笑いながら
「何処にも行ってないよ。待つとあっという間に順番がくるんだ。」
意味不明だ、彼曰く私と出会う前、
待つのにイライラしていたら、腰の曲がったお爺さんに、
「そんなに待つのが嫌なら、わしにその待つ時間をくれないか?」と言われ「どうぞ。」
と答え差し出された手を握った。
「お爺さん、その後ピンと立って何処か行っちゃったんだよ。」
その後、待つとなると、あっという間に順番になってると言う事だった。
深くは、考えなかった。
そんな不思議な話も彼の一部だった。
彼と長い月日を過ごした。
彼が、病気になった。
医師からは、余命1年と言われていたが、彼はあっと言う間に、亡くなってしまった。
「余命を待つ時間も、あっという間に順番がきたの?」
私は部屋で、泣きながら呟いた。
ひょうひょうとした人で掴み所のない人、彼のあの老人の話が本当かどうかも怪しい。
「私が待つのが嫌いだったら、もっと長く一緒に生きれたのかな?」
待つのは嫌いじゃないけど、彼の所へ行くまで待つのは辛い。
そんな私にきっと彼は、
「俺が待つのはあっという間だから、ゆっくり来いよ。」と言いそうだ。