
センブリの小束
お茶の稽古の帰り道、少し遠回りして立花山の方へ足を伸ばすと、さまざまな野草に出会うことができる。山の斜面に明るく灯ったように見える場所に、センブリの花が咲いていた。
草丈は膝までしかないが、細い茎が何本も枝分かれし、その先にたくさんの花を咲かせているので、そこだけ陽だまりのように見えるのだ。
きりっと尖った五枚の花弁が、星形を作っている。透明感のある白い花弁をよく見ると、紫色の繊細な縞模様が走っていて、どこか知的な印象を与える花だ。
ところで、この花は美しいだけではない。かつては、人々の暮らしに欠かせないものでもあった。
センブリの小さい束が軒下に吊るされいたり山里の家
(鳥海昭子『誕生日の花と短歌365日』)
開花期の、苦味が最も強い時期に摘まれたセンブリは、軒下に吊るして乾燥させる。古くから胃腸の調子を整える民間薬として用いられ、煎じて飲むセンブリ茶も親しまれてきた。ちなみに、センブリの名は、千回煎じてもまだ苦い、から来たのだそうだ。
稲刈りを終えひと息ついた頃に、野に入りセンブリを摘む。可憐な白い花の茎を束ね、紐をかけてひとつひとつ軒下に吊るす。そんな光景を思い浮かべると、野に咲く花が人々の暮らしに寄り添ってきたことが、改めて感じられる。
子どものころ、試しに飲んだセンブリ茶のあまりの苦さに驚いたものだ。その苦い味が、いまは懐かしく思い出される。