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Photo byinagakijunya

サービスエリアの松屋から始まる知性の物語

    前から思ってたんですけど、

    パッシングってすごくないですか?


    車のハイビームを一瞬だけチカチカさせるやつです。譲り合いや感謝、警告を表します。

    本来なら対向車の視界を遮る可能性のあるハイビームを点灯させることで逆に対向車と意思疎通を図ってるんですよ?

    あと短いクラクションもそうですね。

    「プッ」ってやつです。

    長く鳴らせば相手への威嚇につながる警笛を、ドライバーのさじ加減だけで、譲ってくれたことに対する感謝を表せるのです。


    これは、旅を長く続けるために必要なのは、目的地へ最短で着く効率性ではなく、ましてや周りをねじ伏せる力でもなく、その力をコントロールする品性と、環境に適応する知性だということを、静かに伝えてくれる物語。


    旅は道連れ。

    全く別々の道を辿り、連絡をしなくなって久しい仲になっても、いつもの交差点で、どこかの駅でパッシングみたいに浮かんで消える思い出は、なんでかだらだらとした旅行でみんなで寄ったサービスエリアの、松屋のカウンターの映像だったりするのです。

    その一瞬を、思い出したところでまあ意味はないですけれど、たまに思い出して、その頃聴いていた曲をかけてみるのもいいかもしれません。

    思い出を道連れに、イッサイガッサイのみこんで!


    旅のラゴス - 筒井康隆

     
     
    パリ在住の出稼ぎ翻訳家。仏語と英語と日本語が苦手です。夕暮れのドライブに合う曲を選ぶように、本を通じて底に残った、形にならない心象を言葉にしています。先日、異国で保険制度が使えないまま2人目が生まれました。そんな経験をもとに、誰かのなにかの網目から抜け落ちた出来事を掬い上げます。

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