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レコード男子|1×1|⑩│The Beach Boys × Carpenters|明るい音の奥に、なぜこんなに影があるのだろう

    ※この記事には、プロモーションが含まれています。※記事の作成・構成には生成AIを使用しています。内容は筆者が確認し、加筆・編集しています。


    Chuck Berryをめぐる「1×1」を三本続けた。Beatles。
    Rolling Stones。
    Beach Boys。

    同じ源流を受け取っても、アーティストが違えば、まったく別の音楽になる。では、そのBeach Boysから今度は少し時間を進めてみたい。

    相手は、Carpenters。

    The Beach Boys × Carpenters。

    この二組を並べると、これまでとは違う景色が見えてくる。

    対立ではない。
    因縁でもない。

    むしろ、
    「なんだか似ている」から始まる「1×1」である。

    まず、どちらもカリフォルニアの音楽だった

    Beach Boysはカリフォルニア州ホーソーン。

    Carpentersはコネティカットから一家でカリフォルニア州ダウニーへ移り、そこでRichardとKarenの音楽活動が本格化していく。

    つまり二組とも、音楽人生の大きな部分を南カリフォルニアで過ごした。

    でも、同じカリフォルニアでも景色が違う。

    Beach Boysには、
    海。
    サーフィン。
    車。
    太陽。

    Carpentersには、
    郊外。
    家。
    ラジオ。
    ピアノ。
    スタジオ。

    同じ州なのに、片方は海岸線。
    片方は住宅街。

    そんな感じがする。

    Beach Boysは「声」で風景を作った

    初期Beach Boysを聴くと、やはりコーラスが耳に残る。
    Brian Wilson。
    Carl Wilson。
    Mike Love。
    Al Jardine。
    Dennis Wilson。

    声が重なる。

    サーフィンの曲でも、車の曲でも、そのハーモニーが入った瞬間にBeach Boysになる。

    Brian Wilsonが強く影響を受けたものの一つが、The Four Freshmenの高度なヴォーカル・ハーモニーだったことはよく知られている。

    つまりBeach Boysは、ロックンロールの身体に、美しいコーラスを乗せたバンドだった。

    Chuck Berry編で書いた、
    身体はChuck Berry、声はFour Freshmen。

    あの組み合わせだ。

    Carpentersもまた「声を重ねる」音楽だった

    そしてCarpenters。
    Karenの声が中心にある。
    あの低い声。
    柔らかい。
    でも芯がある。

    それをRichardが囲む。
    Richard自身の声。
    Karenの声。
    何度も録音されたハーモニー。

    Carpentersのレコードを聴いていると、二人しかいないことを忘れることがある。

    もっとたくさんの人が歌っているように聞こえる。

    でも実際には、スタジオの中で声を何度も重ねて作っている。

    ここはBeach Boysとよく似ている。

    ライブで五人が声を合わせるBeach Boysから始まり、スタジオでBrianがさらに複雑に声を構築していく。

    CarpentersではRichardが同じように、完成したレコードの中に理想のハーモニーを作る。

    方法は違う。

    でも、「声を一つの楽器として設計する」という発想は近い。

    1960年代前半|Beach BoysはCarpentersより先にいた

    時間軸ではBeach Boysが先輩になる。
    1962年。
    『Surfin' Safari』。

    1963年。
    「Surfin' U.S.A.」。

    1964年。
    「I Get Around」。

    Beach Boysはアメリカを代表する若者のバンドになっていく。

    そのころ、RichardとKaren Carpenterはまだデビュー前。

    彼らもまたレコードを聴く側だった。

    だからこの二組は、
    同時代のライバルというより、
    少し上の世代のBeach BoysをCarpentersが聴いて育ったという関係に近い。

    Richard Carpenterのレコード棚にはBeach Boysがいた

    ここはかなり面白い。

    Richard Carpenterは後年、自分たちが成功し始めたころによく聴いていたアルバムを聞かれ、
    Beach Boysの『Surf's Up』を挙げている。
    Paul McCartneyの『Ram』やChicagoの作品と並んでいた。

    つまりBeach Boysは、
    昔好きだった懐かしいグループ、
    というだけではない。

    Carpentersがすでにヒットを飛ばしていた1970年代初頭にも、Richardは新しいBeach Boysを聴いていた。

    これは大事だと思う。

    影響関係が一方通行ではなく、
    現役の音楽家として見続けていた
    ということだからだ。

    1970年|Carpentersが世界へ出る

    1970年。
    Carpentersは「Close to You」。

    続いて「We've Only Just Begun」。

    一気にスターになる。

    そのころBeach Boysは、初期のサーフ・バンドというイメージからすでに大きく変化していた。

    『Pet Sounds』を通過し、
    『Sunflower』。そして1971年には『Surf's Up』。

    ここが面白い。

    Beach Boysの方は、明るいカリフォルニアのイメージから、どんどん複雑な音楽へ進んでいた。

    Carpentersは、一見すると明るく、美しく、親しみやすいポップスで世界へ出ていった。

    二組が、少しすれ違う。

    「明るい音楽」というイメージに閉じ込められた二組

    Beach Boys。
    と聞けば、

    サーフィン。
    太陽。
    海。

    Carpenters。
    と聞けば、

    「Top of the World」。

    美しい声。
    やさしいポップス。

    どちらも、とても分かりやすいイメージを持っている。

    でも、そのイメージだけで聴くと、かなり大事なものを落としてしまう。

    Beach Boysには、
    「In My Room」。
    「Don't Worry Baby」。
    『Pet Sounds』。
    「Surf's Up」。

    孤独や不安のようなものが、ずっとある。

    Carpentersにも、
    「Rainy Days and Mondays」。
    「Superstar」。
    「Goodbye to Love」。

    明るいというより、むしろ寂しい曲がたくさんある。

    つまり二組とも、明るいパッケージの中に、かなり濃い影を持っていた。

    「God Only Knows」とKarenの声を並べたくなる

    Beach Boysの「God Only Knows」。

    僕はこの曲を聴くと、派手なロックとは別の場所で、ポップスがどれだけ深くなれるのかを感じる。

    旋律は美しい。
    ハーモニーも美しい。
    でも、なぜか切ない。

    Carpentersにも同じ感触がある。
    Karenの声が明るい曲を歌っていても、その奥に少し翳りを感じることがある。

    これは技術だけでは説明しにくい。

    音程が正確だからでもない。
    声質がいいからだけでもない。
    美しいのに、少し寂しい。

    Beach BoysとCarpentersには、そんな共通項がある気がする。

    1973年|Carpentersが「Fun, Fun, Fun」を歌う

    そして二組には、はっきりした接点もある。

    Carpentersの1973年のアルバム、
    『Now & Then』。

    この作品の後半には、1950年代末から60年代前半のラジオを再現するようなオールディーズ・メドレーが収められている。

    その中に、
    Beach Boysの「Fun, Fun, Fun」
    が入っている。

    ここは「1×1」として外せない。

    CarpentersがBeach Boysをカバーしている。

    ただし面白いことに、Karenが全編を前面に出て歌う典型的なCarpentersのカバーとは少し違う。

    むしろ、あの時代のラジオそのものを再現するための一曲として置かれている。

    『Now & Then』は「僕らが聴いていた音楽」のアルバムだった

    『Now & Then』の後半には、
    「Fun, Fun, Fun」。
    「The End of the World」。
    「Da Doo Ron Ron」。
    「Dead Man's Curve」。
    「Johnny Angel」。
    「One Fine Day」。などが続く。

    その入り口と出口になるのが、
    「Yesterday Once More」。

    ♪ When I was young
    ♪ I'd listen to the radio...

    という、あの世界。

    子どものころラジオで聴いた曲を思い出す。

    その中にBeach Boysがいる。

    つまり「Fun, Fun, Fun」は、Carpentersにとって単なるカバー曲ではなく、自分たちの青春の記憶の一部として置かれているわけだ。

    これはちょっといい。

    Beach Boysが「憧れのラジオ」になっている

    Beach Boys編をこれまで書いてきたとき、
    彼らはいつも現役の革新者だった。

    Chuck Berryから受け取る。

    Beatlesと競う。

    『Pet Sounds』を作る。

    でもCarpentersの『Now & Then』へ入ると、
    Beach Boysは少し違う存在になる。

    ラジオから流れてきた憧れの音楽。

    時代の記憶になる。

    ほんの10年ほどしか経っていないのに。

    1964年の「Fun, Fun, Fun」。

    1973年の『Now & Then』。

    9年。

    いまなら、9年前のヒット曲を「懐かしの青春時代」と呼ぶには少し早い気もする。

    でも当時のポップスの変化は、それだけ速かったのだろう。

    Beach Boysは「バンド」、Carpentersは「スタジオユニット」

    二組には大きな違いもある。
    Beach Boysは、まずバンドとして始まった。

    五人がいる。
    ライブがある。
    家族関係がある。
    人間関係も複雑になる。

    そしてBrian Wilsonが次第にライブから離れ、スタジオ制作へ比重を移していく。

    Carpentersは少し違う。
    RichardとKaren。
    中心は最初から二人。
    そこへスタジオ・ミュージシャンが入り、
    Richardがアレンジを組み立てる。

    つまり、
    Beach Boysは、
    バンドからスタジオへ進んだ。

    Carpentersは、
    スタジオを中心にして、そこから世界へ出た。

    この違いは面白い。

    それでも二組とも「録音された音」を完成形にした

    ライブも素晴らしい。

    でもBeach Boys、とくにBrian Wilsonの作品を語るとき、やはりレコードが重要になる。

    『Pet Sounds』は、ステージ上のBeach Boysをそのまま録った音楽ではない。

    Brianの頭の中にあるものをスタジオで組み立てた音楽だ。

    Carpentersも同じ。

    「Close to You」。
    「Superstar」。
    「Only Yesterday」。

    Karenがそこで一回歌って終わり、ではない。

    アレンジする。
    声を重ねる。
    楽器を置く。
    録音する。
    バランスを整える。

    完成したレコードそのものが作品。
    この考え方で二組はかなり近い。

    Brian WilsonとRichard Carpenter

    この二人を並べるのも面白い。

    Brian Wilson。
    Richard Carpenter。

    どちらも、
    前に出てスターとして歌う人、
    というイメージではない。

    むしろ、
    後ろから音楽全体を設計する人。

    BrianにはBeach Boysの声がある。
    RichardにはKarenの声がある。

    そして、その声が最も美しく響く場所を作る。
    もちろん作曲法も性格も人生も違う。

    でも、
    「自分が目立つより、理想のサウンドを作りたい」
    という職人気質には、どこか共通するものを感じる。

    BrianにはCarlの声、RichardにはKarenの声があった

    これも面白い共通点だ。
    Brian Wilsonは素晴らしい歌手でもある。

    でも「God Only Knows」のリードを歌ったのはCarl Wilson。

    Brianは、
    この曲にはCarlの声がいい
    と判断した。

    Richard Carpenterにも、Karenという圧倒的な声があった。

    自分が作った曲やアレンジを、
    誰の声で完成させるか。

    二人とも、
    「声を選ぶ耳」を持っていた人なのかもしれない。

    家族で音楽を作るということ

    Beach BoysにはWilson兄弟がいる。
    Carpentersは兄妹。

    これも共通している。

    家族だから分かり合える。
    家族だからこそ難しい。

    音楽だけの関係ではない。
    スタジオを出ても家族である。

    成功しても家族である。
    衝突しても逃げられない。

    Beach Boysの歴史を見ても、
    Carpentersの歴史を見ても、
    家族で音楽を作ることの強さと難しさを感じる。

    美しいハーモニーの裏側に、
    人間関係の複雑さがある。

    このあたりまで似ているのは、少し不思議だ。

    そして、二組とも「明るい音の人」と思われすぎた

    Beach Boysといえば、
    夏。

    Carpentersといえば、
    やさしいポップス。

    でも、Brian Wilsonの人生を知ってから「In My Room」を聴くと、昔とは違って聞こえる。

    Karen Carpenterの人生を知ってから「Superstar」を聴くと、やはり違って聞こえる。

    もちろん、後から人生を曲へ全部重ねるのは危険だと思う。

    曲は曲である。

    それでも、なぜこの人たちは、こんなに美しくて、こんなに寂しい音を作れたのだろう
    とは思ってしまう。

    「Fun, Fun, Fun」の向こう側

    今回の二組には、
    「Surfin' U.S.A.」のような因縁はない。

    『Pet Sounds』と『Sgt. Pepper』のような歴史的競争もない。

    でも、「Fun, Fun, Fun」という小さな橋がある。

    Beach Boysが作った青春の歌。

    それをCarpentersが、
    「昔ラジオで聴いていた音楽」として歌う。

    そのわずかな距離が面白い。

    Beach Boysにとっては現在だったものが、
    Carpentersにとっては記憶になっている。

    音楽は、そうやって世代を渡っていく。

    そしてRichardは『Surf's Up』を聴いていた

    でも話はそこで終わらない。
    Carpentersが成功した後も、Richard CarpenterはBeach Boysの『Surf's Up』を聴いていた。

    つまり、
    過去の憧れになったBeach Boysと、
    現在進行形のBeach Boys。

    その両方を聴いていた。

    これがいい。

    影響を受けた相手を、
    「あの人たちは昔すごかった」で終わらせない。

    新作を買う。
    聴く。
    刺激を受ける。

    同じ音楽家として追い続ける。
    レコード好きとしても、とてもよく分かる。

    明るい音の奥にあるもの

    The Beach Boys × Carpenters。
    二組を並べてみたら、
    最初に思っていた以上に近かった。

    カリフォルニア。
    家族。
    ハーモニー。
    スタジオ。
    多重録音。
    完璧主義。

    そして、明るい音の奥にある、少しの寂しさ。

    Beach Boysは海を歌った。
    Carpentersは部屋の中でラジオを聴いた。

    片方は太陽の下。
    片方は窓辺。

    そんな違いはある。

    でも、レコードに針を落としてしばらく聴いていると、二組の音楽がどこか同じ夕方へ向かっていくように感じることがある。

    昼間は明るかった。

    楽しかった。

    でも日が少し傾いた。

    その瞬間に聞こえてくるハーモニー。

    The Beach Boys × Carpenters。

    明るい音の奥に、
    なぜこんなに影があるのだろう。

    たぶん、その影があるから、
    50年以上たっても、
    僕らはこの二組のレコードを何度も聴くのだと思う。


     
     
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