リンツチョコレート爆弾
よく行くスーパーのおつとめ品コーナーで、リンツのリンドールが安く売られていた。
3粒入って360円くらい。それが、190円くらいになっていた。
1粒百円超えの高級チョコレートが、1粒60円くらいならめちゃめちゃお得。
当然、カゴに入れた。家に帰る前に、車で食べちゃおって思った。
家までの帰り道は絶妙にしんどくて、すごく遠いわけではないけれど運転しているといろんなことが脳内に溢れてきて、7割くらいは思い出したくないようなことで、それについて考えなくちゃならないから帰り道はしんどい。車のエンジンをかける前に、よし、帰るぞと自分のエンジンをかけなきゃいけない。それにすごく時間がかかって、いつも買い物終わりの駐車場で帰ろうと決心するまで1時間とかかかってしまう。
ぐだぐだ書いてしまったが、要は車に乗ってからエンジンかけるまでの自分のガソリンにしようと思ったのだ。リンツを。
外袋を開けて、1粒取り出した。
そしたらなんだか手がベトベトする。
なぜ?
よく見ると、リンツは爆発していた。

潰れて、溶けて、中身が外に漏れ出て固まってしまっていた。
私も固まった。
ほかの2粒を取り出してみても、同じザマだった。
一瞬、「中が潰れて溶けているから割引なのか」と思ったけど、いやさすがにこの状態で売られているわけがない。
交換してもらおう。
レシートを探そうとして私はまた固まった。
レシート、捨ててきた。
私は家計簿をちまちまつけているのだが、財布にパンパンになったレシートを整理するのも非常に億劫で、何十枚も溜まったレシートを整理するためのエンジンがかかるのにも1ヶ月くらいかかる。
なので最近は、レジで支払ったらすぐにアプリに記入し、レシートはその場で捨てるようにしていた。
家計簿もつけられてレシートも溜まらなくて、我ながら良いアイデアだと思ったのに。
ここにきて仇となってしまった。
悔しいけど、腐っても鯛。溶けてもリンツ。
美味しくても美味しくなくても悲しいなと思いつつ、もう粒とも呼べない形をしている1粒を口に放り込んだ。
うん。うまい。
この状態でもまあまあ美味いんだから、溶けていない、球体を保った正しいリンツはどれ程美味しいんだろう。
ああ、リンツ。こんな形で食べられるなんて、リンツ側もさぞ悔しいことだろう。
「これは本当の自分じゃないんです。自分まだやれます。これが本来の味だと思わないでください。」
残った2粒の悲痛な声も聞こえる。
だが、お腹を壊してまでチョコレートに飢えているわけではない。
そっと、残りのリンツをゴミ箱に捨てた。
私は、「溶けたリンツをゴミ箱に捨てる」ことで自分のプライドを守ったのだ。
溶けているとはいえ、リンツ。私はそれをきちんとゴミ箱に捨てられる女です。本当は、、本当は全部食べちゃいたいけど。
私は数十分かけて車のエンジンをかけ、よろよろと家路に着いたのだった。
その日、運転中の脳内は珍しくネガティブ反省会ではなく、7割くらい「正しいリンツ」に思いを馳せていた。口の中が甘ったるかった。