
福祉用具って何がある?理学療法士が現場でよく勧めるもの10選
最近、ご家族の介護や、ご自身の身体の不安を感じて、
「何か福祉用具を使ったほうがいいのかな」
「でも、何があるのか分からない」
そんな相談を、現場でよくいただきます。
福祉用具と一口に言っても、実はたくさんの種類があります。
しかも、「レンタルできるもの」と「購入が必要なもの」があり、介護保険が使えるかどうかも品目によって違います。
この記事では、現役の理学療法士として、現場でよく勧める福祉用具を10種類に絞ってご紹介します。
選び方のポイントや費用面の話も、できるだけ分かりやすくお伝えしますね。
はじめに
こんな悩みはありませんか?
・最近、親の足元がおぼつかない
・転びそうで、見ていてヒヤヒヤする
・お風呂やトイレが心配
・何を使えばいいのか分からない
・買うのとレンタル、どっちがいいの?
・介護保険って、何にどう使えるの?
現場でも本当によく聞く相談です。
そして、こういった悩みのほとんどは、「適切な福祉用具を選ぶ」ことで、かなりの部分が解決できます。
結論:現場でよく勧める福祉用具10選
先に結論からお伝えします。
私が現場でよく勧める福祉用具は、以下の10種類です。
・杖(歩行補助杖)
・シルバーカー
・歩行器
・手すり(据え置き型)
・すべり止めマット
・シャワーチェア(入浴用いす)
・浴槽手すり、浴槽台
・ポータブルトイレ
・介護ベッド(特殊寝台)
・車いす
この10種類が、「導入してよかった」と言われることが多い福祉用具です。
ここからは、それぞれについて「どんな人に向いているか」「レンタルか購入か」を、現場目線でお伝えしていきます。
① 杖(歩行補助杖)
「ちょっと足元が不安になってきたな」という段階で、最初に検討してほしいのが杖です。
一本杖(T字杖)は介護保険の対象外ですが、「多点杖(脚が複数あるタイプ)やロフストランド杖」などは、介護保険でレンタルできます。
結構大事なことが、「身長に合った長さに調整すること」です。
自然に持った時に、肘が30°程度曲がるところ。
大転子の高さなどで持つことが一般的です。
長すぎても短すぎても、かえって転びやすくなります。
② シルバーカー
シルバーカーは、屋外を歩くときの支えになる、手押し車のような福祉用具です。
座面が付いているタイプもあり、休憩しながら歩けるのが大きな特徴です。
また、荷物入れがついているものもあるので、少しの買い物などにも便利です。
ただし、シルバーカーは「ある程度自分で歩ける方」が対象で、介護保険の対象外(自費購入)になります。
価格は1万円〜3万円ほどが目安です。
「歩行器ほどではないけど、外出時に少し不安」という方によく勧めています。
③ 歩行器
歩行器は、シルバーカーよりも体重をしっかり支えられる福祉用具です。
固定式、キャスター付き(前方のみ)、キャスター付き(4輪)など、種類がいくつかあります。キャスター付きは、ブレーキがついているものもあります。
要支援1から介護保険でレンタル可能で、こちらも2024年4月から「レンタルと購入の選択制」になりました(歩行車を除く)。
キャスター付きは段差があるところや屋外では使いにくいことがあります。
歩行能力や、家屋環境、生活を見て、固定式かキャスター付きかを判断しています。
④ 手すり(据え置き型)
手すりは、転倒予防に最も効果が高い福祉用具のひとつです。
「工事をして壁に取り付けるタイプ」もありますが、柱が入っているところしか取り付けはできません。しかしかなり安定します。
「据え置き型」は設置するだけで使えるので便利ですが、土台部分が大きく場所を取る、躓くことや、水平方向の力が加わると、ぐらつく、ずれる。こともあります。
据え置き型は要支援1から介護保険でレンタル可能です。
特に勧めることが多いのは、
・玄関の上がり框(あがりかまち)
・ベッドサイド
・トイレの横
の3か所です。
「立ち上がるときに、つかまるところがあるかどうか」で、転倒リスクは大きく変わります。
ただし、置きまくればいいってものでもありません。
場所も取るので、転倒リスクや動線をしっかり見ながら考えましょう。
⑤ すべり止めマット
地味ですが、「便利な道具」のひとつです。
特に浴室の床に敷くタイプは、効果が大きいです。
浴槽内に入れることで、滑らないため立ち上がりの補助になります。
こちらは介護保険の対象外で、自費購入になります。
ホームセンターやネットで1,000円〜3,000円ほどで購入できます。
「お風呂で滑って転んだ」という事例は、本当に多いです。
数千円で防げるなら、安いものだと感じています。
⑥ シャワーチェア(入浴用いす)
お風呂で座って身体を洗うための椅子です。
立ったまま洗うのは、思った以上に体力を使いますし、転倒リスクも高いです。
シャワーチェアは「特定福祉用具販売」の対象で、「購入のみ(レンタル不可)」になります。
基本、水にぬれるものは購入と思ってもらっていいと思います。
介護保険を使えば、年間10万円までは1〜3割の自己負担で購入できます。
選ぶときのポイントは、
・背もたれの有無
・肘掛けの有無
・座面の高さ
の3点です。
身体の状態に合わせて選ぶことが大事になります。
⑦ 浴槽手すり、浴槽台
「浴槽をまたぐ」という動作は、入浴の中で最も転倒しやすい場面です。
浴槽の縁に挟み込んで固定する浴槽手すりや、浴槽内に置いて高さを調整する浴槽台は、この場面の安全性を大きく上げてくれます。
こちらも特定福祉用具販売の対象で、購入になります。
工事不要なものに関しては、レンタルも可能です。(浴槽の縁に挟み込むタイプなど)
お風呂の相談は結構あるので、まずは手すりの有無や、浴槽に入るかどうかを聞くことが多いです、
⑧ ポータブルトイレ
夜間にトイレまで歩くのが不安な方に勧める用具です。
ベッドのすぐ横に置けるので、「夜間の転倒リスクが大きく減ります」。
ポータブルトイレも特定福祉用具販売の対象で、購入になります。
木製で家具のような見た目のものもあり、最近はデザイン性の高い商品も増えてきました。
「夜中にトイレに行こうとして転んで骨折」というケースは、本当に多いです。
⑨ 介護ベッド(特殊寝台)
背もたれや脚部が電動で上がる、いわゆる「電動ベッド」です。
起き上がりや立ち上がりが楽になり、介護する側の負担も大きく減ります。
介護ベッドはレンタルが基本で、「原則、要介護2以上」が対象です。
ただし、要支援1〜要介護1の方でも、医師の意見書などで必要性が認められれば「例外給付」としてレンタルできる場合があります。
「布団から立ち上がるのが大変になってきた」というタイミングが、ひとつの目安になります。
⑩ 車いす
歩行が難しくなった方の移動を支える用具です。
自走式、介助式、電動式があり、用途に応じて選びます。
車いすもレンタルが基本で、「原則、要介護2以上」が対象です。
要支援〜要介護1の方は、例外給付の対象になる場合があります。
大事なことは、「身体に合うサイズを選ぶこと」です。
サイズが合わないと、座っているだけで疲れたり、姿勢が崩れたりします。
屋内用、屋外用など、分けて利用されている方もいらっしゃいます。
(原則レンタルは一台まで。屋外はレンタル、屋内は購入など)
レンタルと購入、どう選ぶ?
ここまで読んでいただいた方の中には、
「結局、レンタルと購入、どっちがいいの?」
と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
使い分けは、おおまかにこんな感じです。
レンタル向き
・歩行器、車いす、介護ベッド、据え置き手すりなど
・身体の状態が変わる可能性がある用具
・大きくて高価な用具
購入のみ(特定福祉用具販売)
・シャワーチェア、浴槽手すり、ポータブルトイレなど
・直接肌に触れるもの、衛生面が気になるもの
選択制(2024年4月から)
・固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、多点杖などの歩行補助杖
・長期間使う見込みがあれば購入、短期ならレンタル、というイメージ
迷ったら、まずは「ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談する」のが一番確実です。
現場で感じていること
長く現場にいて、いつも思うことがあります。
それは、「もっと早く使えばよかった」という声の多さです。
福祉用具は、「もう歩けなくなってから使うもの」ではありません。
「転ばないために、今から使うもの」だと考えています。
「転ばぬ先の杖」というやつです。
「まだ大丈夫」と思っているうちに転んで骨折し、そこから一気に動けなくなる方を、何人も見てきました。
その経験から、「少し早いかな」と思うくらいのタイミングで導入をお勧めしています。
ご家族にお伝えしたいこと
最後に、ご家族にお伝えしたいことがあります。
1つ目は、「本人の気持ちを尊重してほしい」ということです。
福祉用具を使うことを、「年寄り扱いされた」と感じる方もいらっしゃいます。
「これを使えば、もっと色々できるよ」という、前向きな伝え方が大事になります。
2つ目は、「迷ったら、まずケアマネジャーに相談」ということです。
要介護認定を受けていれば、ケアマネジャーが間に入って福祉用具専門相談員と一緒に選んでくれます。
無理に自分たちだけで決めなくて大丈夫です。
3つ目は、「早めに動く」ということです。
転んでからでは遅いことも多いです。
「少し心配だな」と思った時点が、動き始めるタイミングだと感じています。
まとめ
今回は、現場でよく勧める福祉用具10選をご紹介しました。
・歩行支援は、杖、シルバーカー、歩行器、車いす
・環境整備は、手すり、すべり止めマット
・入浴は、シャワーチェア、浴槽手すり、浴槽台
・トイレや寝室は、ポータブルトイレ、介護ベッド
選ぶときのポイントは、「本人の状態、使う場面、費用、保険適用」の4つです。
福祉用具は、上手に使えば、本人の自立度も上がり、ご家族の介護負担も大きく減ります。
「使うのは負けではなく、より良い生活のための道具」だと、私は思っています。
「うちはどれが合うかな?」と迷ったときは、ぜひ担当のケアマネジャーや、福祉用具専門相談員に相談してみてくださいね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
少しでも参考になれば嬉しいです。
参考文献
・福祉用具、住宅改修(厚生労働省)
私は、理学療法士として、病院・デイサービス・訪問リハビリの現場で働いてきました。
このnoteでは、リハビリや介護に関する情報を、できるだけわかりやすくお伝えしています。
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