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片麻痺の着替えの順番|家族ができる介助と着やすい服

    脳卒中などのあと、体の片側に麻痺(まひ)が残る状態を「片麻痺(かたまひ)」といいます。退院して家での生活が始まると、毎日くり返す着替えに時間がかかったり、どこまで手伝えばよいのか迷ったりするご家族は多いものです。

    着替えには、麻痺のある側とない側をどの順番で動かすかという基本の考え方があります。順番を知っておくだけで、本人も介助する側も楽になりやすいです。

    この記事では、片麻痺のある人の着替えの順番と、上着・ズボン・靴下の着方と脱ぎ方、介助するときの手の位置、着やすい服の選び方、本人ができる部分を残す工夫までを、一般的な考え方として整理します。体の状態は人によって大きく違うため、実際の方法はリハビリの担当者と確かめてみてください。

    片麻痺の着替えで困りやすいこと

    片麻痺があると、麻痺のある側(患側:かんそく)の腕や脚は思うように動かしにくく、麻痺のない側(健側:けんそく)を中心に動作をすることになります。着替えは、腕や脚を袖や裾に通す、体を前に倒す、立ってズボンを上げるなど、細かい動きと姿勢の変化が多い動作です。

    家で着替えるときに困りやすいのは、次のような場面です。

    • 麻痺のある側の腕が袖に通らない、途中で引っかかる

    • かぶる服で頭が抜けず、前が見えなくなって慌てる

    • 立ってズボンを上げるときにふらつく

    • 片手ではボタンや靴下が難しい

    • 時間がかかり、家族がつい全部手伝ってしまう

    こうした困りごとの多くは、順番、姿勢、服の選び方の3つを見直すと軽くなることがあります。

    基本は「着患脱健」

    片麻痺のある人の着替えでは、「着患脱健(ちゃっかんだっけん)」という考え方がよく使われます。着るときは麻痺のある側から、脱ぐときは麻痺のない側から、という意味です。「脱健着患」と呼ばれることもあります。

    この順番にする理由は、袖や裾の余裕を、動かしにくい側のために使えるからです。着るときに先に麻痺のある側の腕を通しておけば、あとから動かしやすい側の腕を、残った狭いすき間に自分で通せます。

    脱ぐときはその逆になります。先に動かしやすい側を抜くと服がゆるみ、麻痺のある側の腕を無理に曲げたり引っ張ったりせずに抜きやすくなります。

    覚えておきたいのは次の2点です。

    • 着るとき:麻痺のある側 → 麻痺のない側

    • 脱ぐとき:麻痺のない側 → 麻痺のある側

    着替えは座って行う

    片麻痺のある人の着替えは、座って行うのが基本になります。立ったまま袖を通したり片足を上げたりすると、バランスを崩して転ぶおそれがあるからです。

    座る場所は、次のような点を目安に整えてみてください。

    • 足の裏が床にしっかりつく高さのいすやベッドの端

    • 座ったときに体が沈み込みにくい、安定した座面

    • ひじ掛けのあるいすなら、横に倒れにくい

    • 周りに物が少なく、服を手の届く範囲に置ける

    服は、着る順番に並べておくと手間が減ります。最初に着るものを一番上に置き、表裏や前後を整えておくと、本人が自分で手に取りやすくなります。

    ズボンを腰まで上げる場面など、どうしても立つ必要があるときは、手すりや安定した家具につかまり、家族がそばで支えられる状態で行いましょう。立ち上がりにふらつきがある場合は、ベッドに横になったまま腰を上げてズボンを上げる方法もあります。どの方法が合うかは、担当の作業療法士・理学療法士に相談してみてください。

    上着の着方と脱ぎ方

    上着には、前にボタンやファスナーがある前開きの服と、頭からかぶる服があります。片麻痺のある人には、前開きの服のほうが扱いやすいことが多いです。

    前開きの上着を着るときの、一般的な流れは次の通りです。

    1. 服の内側を上にして、ひざの上に広げる

    2. 麻痺のある側の手を袖に通し、肩までしっかり引き上げる

    3. 麻痺のない側の手で、背中を回して服を反対側へ回す

    4. 麻痺のない側の腕を、残った袖に通す

    5. 前を整えて、ボタンやファスナーを留める

    脱ぐときは、麻痺のない側の肩から服を落とし、その腕を袖から抜きます。そのあとで、麻痺のある側の袖をゆっくり抜きます。

    かぶる服を着るときは、麻痺のある側の腕を袖に通して肘の上まで上げ、次に麻痺のない側の腕を通してから、最後に頭を通す流れが一般的です。脱ぐときは、頭を先に抜き、麻痺のない側の腕、麻痺のある側の腕の順に抜きます。頭が服の中にある間は前が見えず不安になりやすいため、慌てずに声をかけながら進めるとよいでしょう。

    ズボンの着方と脱ぎ方

    ズボンも、着るときは麻痺のある側から、脱ぐときは麻痺のない側からが基本です。座ったまま両足を通してから、最後に腰まで上げる流れにすると、立っている時間を短くできます。

    座った姿勢が安定している人が、いすに座ってズボンをはくときの、一般的な流れは次の通りです。

    1. 麻痺のない側の手で、麻痺のある側の脚を持ち上げ、もう一方の脚の上に組む

    2. 麻痺のある側の足を先にズボンに通し、ひざの上まで上げる

    3. 組んでいた脚を下ろし、麻痺のない側の足をズボンに通す

    4. できるだけ座ったまま、ズボンを太ももの付け根近くまで上げる

    5. 手すりなどにつかまって立ち、腰まで上げる(片手がふさがるため、腰まで上げるのは家族が手伝うか、壁にもたれるなど、方法をリハビリの担当者と決めておく)

    脚を組む動作が難しい場合は、足台を使ったり、家族が足先をズボンの裾に導いたりしてもかまいません。脱ぐときは、座った状態でできるだけ腰から下ろし、麻痺のない側の脚、麻痺のある側の脚の順に抜きます。

    ズボンの裾を踏んだまま立つと、つまずいて転ぶおそれがあります。立つ前に、裾が足に絡んでいないかを確かめておきましょう。

    靴下と靴

    靴下は前かがみになって足先に手を伸ばすため、座っていてもバランスを崩しやすい動作です。座面に深く腰かけ、足を組むか足台に乗せて、足先を手元に近づけてから履くと安定しやすくなります。

    靴下や靴で見直したい点は、次の通りです。

    • 口がゆるめで伸びやすい靴下を選ぶ

    • 靴下を履かせる補助具(ソックスエイド)を使う方法もある

    • 靴はかかとまでしっかり包み、面ファスナーで留められるものが扱いやすい

    • 麻痺のある側の足に装具(足首を支える道具)を使っている場合は、装具が入る靴かどうかを確かめる

    • 室内では、脱げやすいスリッパより、かかとのある履物のほうが転びにくい

    装具の付け外しの順番や、装具に合う靴の選び方は、本人の状態によって変わります。装具をつくった病院や、担当の理学療法士・作業療法士に確認しておくと安心です。

    介助するときの手の位置と注意点

    家族が介助するときは、本人の麻痺のある側に立つのが一般的な目安です。麻痺のある側は体を支えにくく、倒れるときもその側に倒れやすいことが多いからです。

    介助するときに意識したいのは、次のような点です。

    • 麻痺のある側の腕は、手首だけを引っ張らず、ひじや肩の下を支えるようにして動かす

    • 袖を通すときは、腕を袖に押し込むより、袖のほうを腕にたぐり寄せる

    • 本人が前かがみになるときは、肩や体の横に手を添えて、前や横に倒れないようにする

    • 立ってズボンを上げるときは、腰のあたりに手を添え、ひざが急に曲がらないか気を配る

    • 次に何をするかを先に伝えてから動かす

    麻痺のある側の肩は、筋肉の支えが弱くなって痛みが出やすいことがあります。腕を強く引っ張ったり、肩より高く無理に持ち上げたりすると、痛みのもとになるおそれがあります。着替えのたびに肩を痛がる、腕がむくんでいるといった様子があれば、主治医や担当の作業療法士・理学療法士に相談してみてください。

    着替えは、皮膚の様子を見るよい機会でもあります。赤くなっている場所、すり傷、むくみがないかを、さりげなく確かめておくと、床ずれ(圧迫で皮膚が傷つくこと)や皮膚のトラブルに早く気づきやすくなります。

    着やすい服の選び方

    服の形を変えるだけで、着替えがずいぶん楽になることがあります。おしゃれをあきらめる必要はなく、本人の好みに合うものの中から、扱いやすい形を選べば大丈夫です。

    着やすい服を選ぶときの目安は、次の通りです。

    • 上着は前開きで、身幅や袖ぐりにゆとりがあるもの

    • 生地は伸縮性があり、すべりのよいもの

    • ボタンは大きめのもの、または面ファスナーやマグネットで留められるもの

    • ズボンはウエストがゴムで、ファスナーやボタンのないもの

    • 裾が長すぎず、足に絡まりにくい丈のもの

    • 前後や表裏が分かりやすい、目印のあるもの

    介護用の衣類として、袖や脇が大きく開くものや、片手で留めやすい工夫がされたものも市販されています。ただ、まずは手持ちの服の中から、ゆとりのある前開きの服を選ぶところから試してみてもよいでしょう。

    サイズを1つ大きくすると着やすくなる場合もありますが、大きすぎる服は裾や袖を踏んだり引っかけたりしやすくなります。動きやすさと安全の両方を見て選んでみてください。

    本人ができる部分を残す

    着替えは、毎日くり返す動作だからこそ、本人ができることを続けやすい場面でもあります。時間がかかるからといって家族が全部手伝うと、本人の「自分でできた」という感覚や、動作の練習の機会が減ってしまうことがあります。

    すべてを任せるか、すべてを手伝うかの二択ではなく、工程を分けて考えるとよいでしょう。たとえば、次のような分け方があります。

    • 服を並べるのは家族、袖を通すのは本人

    • 麻痺のある側の袖だけ家族が通し、残りは本人

    • ズボンを太ももまで上げるのは本人、立って腰まで上げるところだけ家族が支える

    • ボタンは下の2つだけ家族が留める

    時間に余裕のある朝や、体調のよい日は本人に任せる部分を増やし、急いでいる日や疲れている日は手伝う部分を増やす、という使い分けもできます。どこまで本人に任せてよいかは、転倒の危険とあわせて、担当の作業療法士・理学療法士に聞いておくと判断しやすくなります。

    うまくいかなかったときに責めず、できたところを言葉にして伝えることも大切です。着替えに時間がかかることを前提に、少し早めに準備を始めるだけでも、本人も家族も気持ちに余裕が出やすくなります。

    よくある質問

    Q. 麻痺のある側から着ると、かえって大変なことはありますか?

    A. 体の状態によっては、別の順番のほうが楽な人もいます。「着患脱健」は多くの人に当てはまりやすい基本の考え方なので、合わないと感じたらリハビリの担当者に相談してみてください。

    Q. 毎日、全部手伝ってしまっても大丈夫ですか?

    A. 本人の体力や体調によっては、手伝う量が多くなるのは自然なことです。ただ、できる部分まで手伝い続けると、動作の機会が減ることがあります。どこを本人に任せられるかを、専門職と確認しておくと安心です。

    Q. 立ってズボンを上げるのが怖いときはどうすればよいですか?

    A. 座ったまま太ももの付け根近くまで上げておく、手すりにつかまる、ベッドに横になったまま腰を上げてはく、といった方法があります。どれが安全かは体の状態で変わるため、担当の作業療法士・理学療法士に実際の動きを見てもらうとよいでしょう。

    Q. 介護用の服を買いそろえたほうがよいですか?

    A. まずは手持ちの前開きでゆとりのある服や、ウエストがゴムのズボンで試してみる方法があります。それでも難しい部分があれば、その部分に合った介護用の衣類を検討してみてください。

    まとめ

    • 片麻痺のある人の着替えは「着患脱健」(着るときは麻痺のある側から、脱ぐときは麻痺のない側から)が基本

    • 着替えは座って行い、服は着る順番に並べておく

    • 上着は前開きのほうが扱いやすいことが多い

    • ズボンは座ったまま両足を通し、立つ時間を短くする

    • 介助するときは麻痺のある側に立つのが一般的な目安で、腕や手首を強く引っ張らない

    • 前開き、ゆとりのある形、伸びる生地、ゴムのウエストなどが着やすい服の目安

    • 工程を分けて、本人ができる部分を残す

    • 転倒や肩の痛みが心配なときは、リハビリの担当者に実際の動きを見てもらう

    参考文献

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    転倒は「不注意」じゃない 家の中で人が転ぶ本当の理由https://note.com/reha_prompt_lab/n/nd699e04eaf31

    手すりをつける前に知っておきたいこと 場所・高さ・種類の選び方https://note.com/reha_prompt_lab/n/n834ea34308fe

    在宅生活・退院後サポート(マガジン)https://note.com/reha_prompt_lab/m/m19bc56b7b07d

     
     
    OT歴8年(回復期・訪問リハ)|脳卒中・転倒予防・認知症・リハ栄養の論文を読んで、臨床を考えています。エビデンスは正解じゃない。でも知っていると、見える景色が少し変わる。最新の海外論文を日本の現場目線で整理。専門職向けに発信中。

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