
眠れない夜のお話「小さな駅の待合室」
夜眠れないときに。
眠れずにスマホでここにたどり着いた方へ。
あなたが眠くなり、スマホを閉じることができるようなお話をご準備しました。
このお話は、読むのではなく、絵と文字を同時に「眺めて」ください。
Edited by REI / with support from ChatGPT, Image generated with Canva
小さな駅の待合室
小さな駅の待合室は、淡い光が窓から差し込み、白くかすんでいます。
木のベンチが静かに並び、そこに五人の人が黙って座っています。彼らは次に来る電車をまっています。
声はなく、呼吸や小さな物音だけが、空気に溶け込むように響いています。
一番端に座る年配の男性は、新聞を広げています。ページをめくる音はかすかで、まるで自分だけに聞こえているかのようです。文字を追う視線は落ち着いていて、ただ時間を刻むように紙を繰っています。
その横の学生は、制服のカバンを膝に置いたまま、窓の外に視線を投げています。何かを考えているようにも見えますが、実際にはただ揺れる草や遠くを過ぎる雲を、目に映しているようです。

反対側のベンチには、買い物帰りらしい女性が座っています。足元に置かれた紙袋からは、緑の葉が少し顔をのぞかせています。
彼女は両手を膝に置き、視線を落としたまま、ただ電車を待つ時間を受け入れているようです。
その隣には会社員風の男性がいます。腕時計を時折確かめ、息を整えるように肩を上下させていますが、それもやがて一定のリズムに落ち着きます。
周囲を気にする様子もなく、ただ椅子の上で体を預け、規則正しい音に馴染んでいきます。
ベンチの端には若い女性が本を開いて座っています。文字を追う瞳は淡々としていて、指先が小さく動くたびにページが静かにめくられていきます。
本の内容はわかりませんが、その規則的な仕草だけが、待合室に一つのリズムを生んでいます。

待合室全体は、人の存在があるにもかかわらず、時間の流れをどこか遠ざけたように見えます。

壁に掛けられた時計の秒針は、正確に刻まれながらも、不思議とゆっくり響いています。
窓の外では線路沿いの草が揺れ、揺れる影が床に淡く映り込んでいます。その影はまるで空気と同じ速さで動き、人々の沈黙に溶け込んでいきます。
やがてこの静けさは、現実を少しずつ遠ざけるような感覚をもたらします。
新聞の紙の音、ページをめくる仕草、腕時計に視線を落とす動作。
どれも淡々と繰り返されるうちに、まるで同じ流れに揺られているかのように一体になっていきます。
窓から射し込む光は柔らかく拡散し、空気に薄い膜を張るように漂います。
音も匂いも、誰のものでもない時間の中に広がっていき、待合室はまるで現実と別の境界に差し掛かったように感じられるのです。