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専業主婦のお独り様ランチの脳内、覗いてく?

    「あ~、お腹空いたな。」
      

    いつも10時過ぎに
    血糖値が下がってくるのを感じるが、
    お昼にはまだ早い。
     

    「とりあえずコーヒーだな」
    と言いつつ、お湯を沸かすだけ沸かして、
    パソコンに向かっていたら、
    あっという間に11時。
     

    これが予定のない日の私のルーティーンだ。
     

    「ごはんだごはんだ、すすむくん」と
    口ずさみ、ルンルン気分でキッチンへ向かう。


    専業主婦の醍醐味は、
    好きな時間にお昼を食べられることだ。
     

    今日はなんだか、唐揚げが食べたい。
     

    市販の冷凍唐揚げを3つお皿にのせ、
    電子レンジのダイヤルを回した。

    新しいレンジのくせに、
    最近 中までしっかり解凍してくれない。
     

    「ポンコツなやつめ。」
     
    保証書がレンジの上に置かれたままだ。
     

    唐揚げがチンされるまでの間に、
    飲み損ねたコーヒーの準備をする。

    ドリップコーヒーの袋を
    開けた瞬間に広がる香ばしい香り。

    これこそが コーヒーを味わう
    最高の瞬間なのかもしれない。

    幸せだ。

    ならばと欲張って、
    ドリップのフィルターの封も開け、

    粉が舞うのも気づかず 鼻を近づける。

    「ゴホンっ、ゴホン」

    ……ポンコツなのは 
      レンジだけで十分だ。
     

    【神様との会話】
     
    私「ねえ、神様?
      こんな私にも保証書ってあるのかな?」

    神「何を言ってるんだ?
      お前が完璧だった時なんて今までにあったか?」

    私「…えっ…。」

    神「完璧なんていう保証書なんか
      最初から必要ないのさ!
      だってお前は、すでに完全無欠!

    私「……!」

    神「ポンコツそのものがお前の味であり、
      人間に生まれてきた醍醐味なんだよ。」

    私「神~♡」
     
     
    ぴーひゅるるるる~、ザザザ。

     

    気を取り直し、冷蔵庫から
    チューブのわさびを取り出して、
    出来たての唐揚げの脇に3センチほど添える。

    そして、箸でわさびを
    ちょんちょんとまとわせながら、
    体を斜めにして
    もう片方の手で丸椅子を引き寄せた。

    着席。
    さあ、お待ちかねの時間だ。 
     

    「いただきます。」

     …うまい。
      

    テーブルにするには高すぎる
    キッチン台に肘を突き、

    携帯をいじりながら、
    ジューシーな唐揚げの香りと
    鼻から抜けるツーンとした刺激を
    ひとり堪能する。

    キャベツの千切りが合いすぎる。 
     

    こうして
    日々オジサン化していく自分を、
    どこか愛おしく思う。
     

    ……だが、お腹はまだ満たされない。
     

    そうか、
    米を食べていない分、
    まだまだ余裕があるんだな。
     

    それならばと、
    昨晩のおかずの残りの
    「ピーマンとシイタケの肉詰め」を
    レンジで温め始めた。
     

    コーヒーを飲みながら、
         ふと気づく。


    そうだ。
    さっき急に唐揚げを
    食べたくなったのは、

    その前に “ 拓哉 ” が作った
    マーブルチョコのデニッシュ食パンを
    3切も食べたからじゃないか!

    塩気のあるものが
    欲しくなった理由はそれだ。
     

    朝の記憶が蘇る。

    四角くこんがり色づいた
    デニッシュ食パン。

    切れ目を入れると、
    黄金のバター色の生地に
    マーブルチョコ模様が現れ、

    控えめに散りばめられた
    チョコチップがきらりと光る。

    どう見たって間違いのないパンだ。

    期待感はMAXだった。
     

    「わあ、美味しそう!」

    眠い目をこすりながら
    パクリと頬張る子どもたち。

    喜ぶ顔を楽しみに
    朝食に出したのだが、

    「……味がしない」

    と怪訝な顔であっさりお皿を戻された。

    そう、私がさっき食べたのは、
    子供たちが残した
    “ 拓哉のデニッシュ食パン ” だった。
     

    食前のパンは別腹なのか?
    それとも
    あっさりしたデニッシュは、
    炭水化物として 脳にカウントされないのか…。
     

    デニッシュパンと言えば
    濃厚なはずなのに、

    3切も食べたことを忘れるほど、
    控えめな味に仕上げる“ 拓哉 ”は、

    JAの直売所に納品するため、
    早朝からせっせとパンをこねる
    70歳過ぎのおじいちゃんに違いない

    ──そんな妄想がふくらんでいく。
     

    「拓哉」なんて名前、当時はきっと
    キラキラネーム扱いだったろうね。

    袋に貼られた出荷ラベルの
    フルネームを眺めながら、
    どんな人生を歩んできた人なのか、
    つい想いを馳せてしまう。

    こんなに手の込んだチョコチップ入り
    マーブルチョコデニッシュ食パン…
    若者にも楽しんでもらえるように、
    きっと寝る間も惜しんで完成させたんでしょ?

    拓哉、ごめんね。
    今回は半額で買わせてもらったよ。
    朝から老体に鞭打って作ってくれたのに、
    ほんとゴメンね。

    そんな 心底どうでもいい妄想を
    していたせいか、

    箸からシイタケの帽子を脱いだ肉詰めが
    ポロリとお皿に落ちた。

    スローモーションで跳ねる甘辛いタレ。
     
    グレーのズボンにしみ込む油染み。
     

    げげげ……、拓哉!

    でも大丈夫、ここは自宅だ。

    今すぐパンツ一丁になれば済む話。
    本物の拓哉はここにはいない。

    洗面所までたったの5歩だ。
     

    もし、これが出先だったら?

    だとしても大丈夫。

    昨日ママ友から
    「外出先でも使えるシミ取りシート」
    を教えてもらったし、

    「海外製のスプレー式
    オキシクリーンなら何でも落ちる」
    という強力な知恵まで授かった。

    ふふん、
    服のシミなんて怖くないわ。
     

    洗面所で油染み汚れを
    指先で丁寧につまみ洗いしながら、
    三面鏡に映る自分の顔を見つめた。
     

    ……こっちのしみは、
    オキシクリーンじゃ取れないんだよね。
     

    急に怖くなった。
     

    目の下のシミは、
    いつか皮膚科へ取りに行こう。
      
     今度、拓哉のパンと会う時は、
    どんな染みも怖くない私になってるからね。

    そう心に誓った、
    専業主婦のリアルな
    お独り様ランチの脳内の話。


    つまりは、そういうこと。
     


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    ◆これをシュシュっとしておけば、たいていキレイになるそうです♬

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