
「#14 詩のかけらが物語になるとき」詩人・千代原礼苑(れおん)
オリジナルポエムから生み出した短編小説、読み上げています。
1.狭間の人魚

空が青く染まり、海が照らされたとき、1人の美しい人魚が姿を現す。
人魚は、いつも、海に潜ることもなく、岩に座って尾びれをほんの少し、海水に浸けて空を眺めている。
2.海からの恵み

海に尾びれを浸けていると、人魚の尾びれは少しずつ色鮮やかになり、潤ってくる。
青空からは、海鳥がやってきて、海から跳ね上がった魚を獲っていく。
海が、やさしい波を立て、穏やかに時間が流れてゆく。
人魚は、海の中を少しだけ覗き込んだ。
「海の世界って、美しいのかしら。」
3.空からの恵み

青空から太陽の光が降り注ぐと、海と人魚は照らされ、人魚の上半身はまるで人間のようであった。
深い海中まで、光が降り注ぎ、きらめく世界。
人魚は、目を細めて空を見上げた。
「この空を眺められる大地は素敵だわ。」
4.人魚の想い

人魚は、ある日は、空や大地の美しさを海の中へ潜り、他の人魚に伝えた。
すると、他の人魚達も、岩に座っては、空や大地の美しさを受け入れるようになった。
人魚は、ある日は、海の中の美しさを、海辺にやってきた鳥や少年少女に伝えた。
すると、鳥は海の上を気持ちよく飛び回るようになり、少年少女は海に憧れながら砂浜で貝殻を沢山拾うようになった。
5.海と大地の人魚

海と大地の狭間にいた人魚は、海に入って思いっきり泳ぐようになり、陸に上がると姿を変えて人の姿になり、大地を走り大空を見上げるようになった。
狭間の人魚はもういない。
どちらの世界も、人魚が好きな世界。
どちらの世界も、人魚がいれる世界。
それからしばらく経ち、人魚のウロコは剥がれていき、海色と緑色の新しいウロコを身にまとい、人魚姫となって、この世界を長く長く愛していった。