
ノルマンディーの宝物、今年も解禁!:ホタテ漁シーズンインに寄せる漁師たちの誇りとこだわり
はじめに
フランス・ノルマンディー地方のローカルラジオ局「ici Normandie」の番組『ICI matin』で、今年も熱い注目を集めるホタテガイ(Coquille Saint-Jacques)漁の解禁について特集されていました。
フランス人がこよなく愛する秋の味覚の到来。今年のセーヌ湾における漁の様子や、漁師たちが守り続けてきた知られざる舞台裏についてご紹介します。
過去最高だった昨年に続き、今年も「異例の豊漁」へ
11月2日、ついにセーヌ湾でホタテガイ漁が解禁され、翌年5月までの長いシーズンがスタートしました。
前シーズン(2025-2026年)は、約4,800トンが水揚げされるという歴史的な記録的大当たりとなりました。それに比べると、今シーズン(2026-2027年)の資源量はやや落ち着くものの、過去50年の観測史上でも上位10に入るほどの好水揚げが確実視されています。
バイオマス(生物量)は6万トンに達し、すべてを乱獲するのではなく翌年へと残しながら管理していくため、今後4〜5年にわたっても資源の心配はない見通しとのこと。すでに次シーズン(2027-2028年)のさらなる好調も予想されており、ノルマンディーの海はまさに「宝の山」状態が続いています。
欧州のルールじゃない、自分たちで守る「ノルマンディー流」の誇り
これほど安定した資源を維持できている背景には、行政や欧州連合(EU)に頼らない、漁師たち自身による徹底した自主管理があります。
漁のできる日や時間(現在は週4日、1回わずか1時間半)の厳格な制限
禁漁日・解禁日の設定
稚貝の繁殖を守るために完全に封鎖する保護区(休漁ゾーン)の設置
これらはすべて漁師たちが自ら決め、科学機関(Ifremer)の調査とも連携しながら厳格に守り抜いてきたものです。長年かけて培ってきたこの仕組みこそが、海の豊かさを絶やさない最大の秘訣となっています。
「1時間半で2トン」でも、現場からは漏れる葛藤
順風満帆に見える現場ですが、すべての漁師が手放しで喜んでいるわけではありません。
ル・アーヴルなどの港では、定められた割当量に達するために遠くまで移動を強いられることや、解禁以来吹き付ける北東の風など小型船泣かせの悪天候に対し、不満や士気の低下を懸念する声も上がっています。遠くダンケルクから遠征してくる漁師もいるほどです。
それでも、ノルマンディー漁業委員会のディミトリ・ロゴフ会長は、「少し移動する手間はあるが、わずか1時間半の操業で最大2トンのホタテが獲れる。挑戦する価値は十分にある素晴らしい漁だ」と力強く語っています。
スーパーの特売に警鐘?「ホタテの価値」を守りたい理由
フランスで水揚げされる年間約4万トンのホタテのうち、実に3万5,000トン以上がノルマンディー産です。
消費者の手に届く方法には、魚市場での競りや仲買人を通じた販売のほか、岸壁での直接販売などがありますが、漁師たちは長年の常連客との絆を守るため、価格高騰の中でも工夫を凝らしています。
一方で、ロゴフ会長が強い危機感を示しているのが、大手スーパー等で見られる「原価割れに近い3.5ユーロなどの特売」です。燃料費や資材、船のメンテナンス費が高騰する中、ホタテの品質に見合った「船上価格で最低4ユーロ」の適正価格が望まないと、生産者の生活が成り立ちません。
他の多くの魚介類やサーモン、高級食材が値上がりしていく中で、ホタテの価格はここ20〜30年間ほとんど据え置きのままでした。だからこそ、「安易に価格を崩壊させてはならない、誇り高き高級ガストロノミーの産品として正当に評価されてほしい」という切実な想いがあります。
おわりに
来年5月まで続く長いシーズンに向けて、11月中旬にはディエップなどで恒例の「ホタテ祭り(Fête de la Coquille Saint-Jacques)」が開催されます。
現地では、伝統的なバター焼きだけでなく、地元水産団体のサイトで紹介されている「タイ風ココナッツミルク仕立て(ご飯とともに)」といったユニークなレシピも人気を集めているようです。
厳しい自然環境と向き合いながら、厳格なルールで海の豊かさを未来へ繋ごうとするノルマンディーの漁師たち。そんな人々の手で大切に守られた極上のホタテを、今年の冬もありがたく味わいたいものです。