
霎時施|小雨の頃に重ねる、大人の静かなハロウィン
① 今日の一行
さっと降って、さっと止む雨。
ひと雨ごとに、秋が深まっていく頃です。
10月28日、七十二候は「霎時施(こさめときどきふる)」に入りました。
候が変わった途端、空気が冷えたのです。
暦と気候の呼吸は、本当にぴったり合うものだと思います。
② 今日のテーブル 霜降・次候「霎時施」

今回のテーブルは、子どもが育ったあとの、大人の静かなハロウィンです。
十三夜の残り花で、魔女のほうき
はじまりは、花。
十三夜に使った鶏頭とすすきが、まだ残っていました。
そこへ紅葉したブルーベリーの枝を足すと、黒い花器の上に、ほうきに乗った魔女の姿が見えてきます。
鶏頭の色をナプキンへ、すすきの色をキャンドルへ
花の色をリンクさせます。
鶏頭の色はナプキンに、すすきの色はキャンドルに。
同じ色がテーブルのあちこちに現れると、一卓がひとつにつながります。
ナプキンは、かぼちゃの座布団
ナプキンは、かぼちゃの座布団のイメージで。
イースターの鳥の巣の折り方を見て、とても愛らしく感じて、印象に残っていました。これ、かぼちゃにも見えるかもと思ったのが始まりです。
春の巣が、秋には座布団になる。見立ては、季節を自由に行き来します。
クロスは、霜降の三候を通して同じもの
グレーのクロスは、前の候から替えていません。
載せるものは変わっても、ベースの色は変わらず。
同じ舞台に、霜が降り、小雨が降り、やがて紅葉が訪れます。
ビタミンカラーをひとつ
和のくすみカラーが多いこの季節。
たまにはかぼちゃのオレンジで、パンチを効かせるのも実りの秋らしい。




③ 霎時施ってどんな季節?
霎時施は、七十二候の53番目。霜降の次候です。
「ときどき小雨が降る」という意味です。
「霎」は、小雨や、ごく短い時間を表す字。
降ったかと思えば止む、晩秋の雨の姿がそのまま名前になっています。
霜降の二番目の候で、次は末候「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」。
11月7日ごろには「立冬」を迎え、暦の上では冬がもうすぐそこです。
④ 今日の問い
あなたの秋の小雨で、思い出すのはどんな色ですか?
空の色でも、傘の色でも、濡れた道の色でも。
答えは出さなくてかまいません。雨の音を聞きながら、ふと思い浮かべてみてください。
⑤ 時雨は、冬のはじまり
この頃の、降ったり止んだりする雨を、昔の人は「時雨(しぐれ)」と呼びました。
神無月 降りみ降らずみ 定めなき
時雨ぞ冬の はじめなりける
(後撰和歌集・詠み人知らず)
降ったり止んだり、定まらない時雨こそ、冬のはじまりなのだ。
千年以上前の人も、この雨に季節の変わり目を感じていました。
ハロウィンのもとになったのは、古代ケルトの人々の祭りだと言われています。古代ケルト人は11月1日を新年の始まりと考え、その前夜である10月31日に、夏の終わりと冬の始まりを祝うサウィン祭を行いました。収穫期の終わりを迎える重要な節目であり、焚き火や食事をともなう祭りだったそうです。
秋の実りを祝い、冬を迎える節目の日。
遠く離れた土地でも、同じ頃に、冬の入り口を見つめていたことになります。
そう考えると、七十二候とハロウィンは、案外よく似合うのかもしれません。
⑥ 「地味だね」のひと言
実は最初、ナプキンはすべて茶色でした。
渋くて、静かで、自分では気に入っていたのです。
ところが家族のひと言は、「地味だね」。
見直してみると、たしかに花だけが浮いている。
そこでピンクのナプキンを出してきて、2席だけ替えることにしました。
還季のイメージを保とうとするうちに、明るく強い色を使わなくなっていたようです。
でも、残りの2席は深い色のまま。
黒い器もグレーのクロスも、静かなままです。
静けさの中に一滴落ちるから、その色が効いてくる。
あなたの中にも、しまい込んだままの色があるかもしれません。
⑦ 今日の和の色 韓紅(からくれない)
鶏頭には、「韓藍(からあい)」という古い名前があります。
万葉の時代から親しまれてきた花です。
そして、鶏頭のような濃く鮮やかな紅を、和の色では「韓紅(からくれない)」と呼びます。
百人一首の「ちはやぶる」の歌で、竜田川の紅葉を染めている、あの色です。
万葉集の山部赤人は、庭に蒔いた韓藍が枯れても、懲りずにまた蒔こうと詠みました。
我が屋戸に 韓藍蒔き生ほし 枯れぬとも
懲りずてまたも 蒔かむとそ思ふ
残った花を、次の食卓へ。
千三百年前の人の気持ちも、似ていると言えるかもしれません。
⑧ 霎時施のやさしい養生
雨が降るたび、気温が一段ずつ下がっていきます。
小雨の日は、一枚多めに
濡れた体は冷えやすいもの。羽織るものをひとつ、鞄に入れておきます。かぼちゃを温かい一椀に
かぼちゃは、この季節の味方。お味噌汁やスープにどうぞ。雨の音を聞く時間を
手を止めて、窓の外を少し眺める。それだけで、呼吸がゆっくりになります。
⑨ 私の記憶
子どもの頃には、ひと雨ごとに秋が深まるなんて、思ったこともありませんでした。
覚えているのは、海の色が暗く沈むこと。
少し前だと、雨の後の雲の切れ間に、茜色の夕陽がさすこと。
その風景さえ、遠浅の潮が引いた海辺の景色です。
不思議と、雨の記憶がないことに気付きます。
雨の持つ風情に想いを馳せるのは、大人になってこそ感じるものなのかもしれません。
⑩ おわりに
残った花は、色を拾って次の食卓で活かす。
すべてが巡っていきます。
霜降の末候に入る11月2日まで、
小雨の音に、どうか耳をすませてみてください。
あなたの秋の小雨にも、きっと思い出が詰まっているはずです。
季節に還る、自分に還る。
還季 金子友子
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