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初めての海外旅行でアルメニア人タクシー運転手に大事なことを教わった話

    人生の節目節目で、ふと思い出す言葉がある。

    大学1年生の2005年9月。初めての海外旅行。
    高校時代から仲が良かった女子3人で、5泊7日のロサンゼルスに行った。

    塾講師のバイトで貯めたお小遣いと、少しの英語力をもって飛び込んだ世界で、いろんなトラブルの果てに「人生で最も大切なこと」を教わる出会いがあった。

    出発前日に初めてひったくりに遭う

    旅行の直前までバイトを詰め込んでいた私。深夜1時にバイト仲間と食事を終えて塾に戻り、「明るくなったらチャリで帰ろう」と教室で仮眠をとった。

    午前5時過ぎ、空が白み始めた頃に自転車で出発。いつもの住宅街をボーッと走っていたら、後ろからゆっくりバイクが近づいてくる。

    「距離近いな…誰か、知り合いかな?」

    と思って振り返ろうとしたその瞬間、茶髪の男が

    「あ〜りがと〜〜!」

    と言って私の自転車のカゴからバッグを奪い、走り去った。

    一瞬、何が起きたかわからなった。

    ひ っ た く り だ !

    すぐに自転車で追いかける。
    「ちょ、ケータイ!返して!!」と叫びながら。

    男はバッグの中身を確認しながら、ペットボトルやタオルを次々と投げ捨てる。

    道の角でついにバッグも捨てられた。中身は空っぽだ。私はバッグを拾い、また追いかける。

    国道16号に入った。
    ついに捕まえられると思ったが、その男は赤信号で走り去ってしまった。

    携帯がないので塾に戻り、バイト仲間に事情を説明して、警察に電話した。

    「男の特徴は?」
    「ヘルメットはかぶってた?」
    「バイクの色は?」

    と聞かれたが、何も覚えていなかった。

    盗られたのは、財布、携帯電話、電子辞書。財布には200円しか入っていなかったのが、せめてもの救いだった。

    これが、初めて海外旅行に出発する前日のできごと。

    「ロスで危ない目に遭わないように、日本で厄払いをしたんだ」
    ーーそう自分に言い聞かせて、翌日出国した。

    性格がまるで違う女子3人、小さな違和感が続く

    なんとかロサンゼルスに到着したものの、私たちの価値観は三者三様だった。

    私は、海外でも自由時間をつくって1人で行動したい派。

    A子は、1人で動くのは怖いから、常にみんなと一緒に行動したい派。

    B子は、あまりお金を使いたくないから外食もお土産も控えたい派。

    ーーもう、うまくいかないのが目に見えている。

    最初は小さなトラブルだった。

    お土産屋さんが並ぶ通りで、時間を決めてそれぞれショッピングして、また集まることになった。

    集合場所に行くと、待ち合わせ時間を勘違いしたA子とB子になぜか私が怒られた。

    気を取り直してみんなで食事をしようとしたら、B子が

    「私は節約したいからあまり食べたくない。2人が好きなものを選んでいいよ。」

    と言い出す。これに対してA子は

    「せっかくみんなでロスに来たのに、それはないんじゃない?」

    と反論。

    こうした「小さな違和感」が積み重なり、空気はじわじわと険悪になっていった。

    ディズニーランドで1人が迷子になる

    この旅のメインイベントは、カリフォルニア・ディズニーランド。

    日本のランドの1.5倍の広さで、雰囲気も違う。本場の迫力に圧倒されながら、大興奮でパークを回っていた。

    ーー2時間くらいは。

    気づいたら、「常にみんなで行動したい」と言っていたA子が迷子になっていた。

    スマホもなく、英語も話せないA子が心配で、私とB子はパーク中を歩き回った。場内アナウンスもお願いしても、A子は現れない。

    ツアーバスのお迎えの時間が近づく。
    このまま見つからなかったらバスに待っててもらおうと思い、1人が出口近く、もう1人がパーク内を順番に見てA子を探すことにした。

    何往復か繰り返して、ついにB子がA子を見つけて連れて帰ってきた。

    見つけたとき、A子はのんきにお土産を買っていた。

    「心配して今までずっと探してたのに!」と私もB子もブチギレ。最悪の雰囲気のままホテルに帰った。

    最終日、バスに乗り遅れたら運命の出会いがあった

    最終日。サンタモニカビーチを歩いて、軽く食事をして、お土産も買った。

    「いろいろあったけど、無事ここまで来られたね」なんて話しながら集合場所に行くと…
    待っているはずのツアーバスが見当たらない。

    時計を見たら、集合時間を2〜3分過ぎていた。人数確認なしで出発してしまったようだ。

    急いでツアー会社に電話をかけると、「バスは出てしまったので自力で戻ってきてください」と言われる始末。ホテルまで20km以上ある。

    そのとき、ホテルのロビーでいつも声をかけてくれたタクシー運転手の顔が浮かんだ。ホテルに電話して繋いでもらうと、すぐに来てくれた。

    タクシーのなかで、旅行中のトラブルや3人の仲が悪くなってしまったことを正直に話した。

    アルメニア人タクシー運転手が教えてくれた「人生で最も大切な3つのこと」

    運転手さんは、アルメニアからアメリカに移住した50代くらいの男性だった。「移民として大変なこともあるけど、幸せに暮らしている」と、穏やかに話してくれた。

    そしてホテルに着くと、にこやかにこう言った。

    「まだ若い君たちに、ぜひ覚えておいてほしい。人生において、大切なことが3つあるんだ。」

    1つ目は、自分が好きなことを知ること。
    Know what you love.

    2つ目は、その好きなことを続けること。
    Keep doing what you love.

    そして3つ目は、慈悲の心、謙虚な心をもつこと。
    Have compassion and stay humble.

    「この3つを覚えていれば、人生はうまくいくさ!」

    旅行中はケンカばかりしていた3人が、この瞬間だけは揃って感動した。

    トラブル続きだった記憶を塗り替えてくれるくらい、あの言葉は鮮やかだった。

    好きなことを続けた結果

    あの旅から私が自覚して続けた「好きなこと」は、語学の勉強と異文化交流だった。

    海外旅行で英語が通じたのが嬉しくて、さらに勉強に熱が入った。
    大学時代はモスクワ大学に留学して、ロシア語を本格的に勉強した。

    初めての就職先はウズベキスタンの日本大使館。
    今は日本の企業に勤めているが、海外のキャリアの方がまだ長い。

    海外生活で培った順応性と「ちょっとしたことではへこたれない」根性は、あの運転手さんの言葉に背中を押されて、好きなことを続けた結果だと思っている。


    今日、私は40歳になった。来月、双子を出産する。

    こういった人生の節目節目に、このタクシー運転手さんの言葉を思い出して、自分に問いかける。

    「私いま、好きなこと、続けられているかな?」


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    横田久子|アイデアの視覚化・橋渡しが得意な女性コンサル。企業支援策や副業について毎週発信してます。 【経歴】大学でロシア語を専攻▶︎在ウズベキスタン&ラトビア大使館勤務▶︎海外コーディネーター▶︎中小企業勤務の診断士。2歳&0歳双子の母。https://keiei-navi.com/

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