
人間関係|あなたのご専門は?
発言には注意しよう。
私が特にそう思った、ある日の出来事です。
私が就職後、実家にまだ住んでいたときのことです。
父の知人の男性が、家を訪ねてきました。
その方を、仮にAさんとしましょう。
父が出迎えます。
お彼岸で、Aさんは仏壇を拝みに来てくださったとのこと。
母は留守でした。私が代わりにお茶やお菓子をお出しするため、自分の部屋には戻らず、やむなくその場にいることに。
父は雑談としてAさんに、彼が経営しているお店の調子はどうかと尋ねていました。
Aさんは「まあ、ぼちぼち……」のような反応をしていたかと思います。
人見知りを発動させていた私は、一刻も早くその場から離れたい気持ちで、なんとなく二人の会話を聞いていたのですが。
会話がそのうち「ん?」と疑問に思う流れになっていきました。
父がAさんに、値段などのアドバイスをしていました。
「低価格帯のラインナップやあんな商品を追加して、もっと集客した方が良いんじゃないか?」
Aさんは頷きながら聞いています。
私は以前にも一度、同じような場面を見ていました。
お店の様子を父が聞き、Aさんが現状を話し、こんな風にしたらどうかと父が提案する。
Aさんは、自分としてはコンセプト的に少し高価格帯にしていたい、低価格帯にするつもりはない、と話している。
当時の私はまだ学生だったためか、その話に何も感じませんでした。
でも、二回目に聞いてしまった私は社会人。違和感に気づいてしまいました。
父の言葉に、モヤモヤしてきます。
聞いているAさんは、相槌のみでとても反応が薄い。
父はその様子に気づくこともなく話し続けている。
私は恥ずかしくなってきました。
だから、思わず。
本当に思わず、言ってしまいました。
その時に言った言葉を、正確には覚えていませんが。
父に言った内容はこちらです。
「お父さんがそんなこと言える立場じゃないでしょ。何のお店もやったことがない、会社員なんだから」
これでお分かりかと思います。
経営者になったことのない父が、お店を経営するAさんにアドバイスをしていたのです。
もしかしたら、Aさんがお客側の視点を聞きたいと思っている可能性もあるかもしれません。
それでも、Aさんの様子から、父が言ったような話を聞きたいとは思えなかったのです。
そんなわけで、つい出てしまった私の一言は、たった三人しかいない部屋の空気を見事に凍らせました。
やってしまった、と私が慌てたところまでは覚えています。
思わず言った直後の会話が、どうなったかは思い出せません。
自分でどうにか話題を変えたのか、もしくはAさんが変えてくれたのか。
それまで饒舌だった父が数秒の間、無言になったことは覚えています。
そして、お店の話を早々に切り上げることになったことも……。
どうしても言わずにはいられなかったんですよね。
娘としては、とにかく恥ずかしかったんです。父が素人なのにアドバイスしていること。
誰が何を言ってるの、と思っちゃったんですよね。
でも、父が言いたくなる気持ちもわかるんです。
私だって言ってしまうことがあります。
自分が既婚者になった時、つい独身の友達にも幸せになってほしいと思って色々言ってしまったり。
当時は良かれと思って言ったけれど、今思い出したら恥ずかしい。
独身時代の自分を頭の中に呼び出して、今の自分に問いかけてみればわかります。
あなたは、結婚生活何年目で言っているんですか?
独身の時より本当に幸せになったんですか?
毎日、夫と喧嘩せずに仲良く暮らせているんですか?
日々、夫と喧嘩しているあなたがよく言えますね?
そもそも結婚だけが幸せなんですか?
今のあなたを見ていると、とても幸せに見えないんですが?
……自分にグサグサ刺さりますね。
聞かれてもいないアドバイスは、求められていないんですよね。
アドバイスできる立場の人は、相手から質問をされた人だけ。もしくは、その道の専門家に限ります。
私は今でも、つい言いたくなる気持ちを抑えることがあります。
「良かれ」のアドバイスは、相手にとって余計なお世話。
自分にそう言い聞かせています。
例えば、本当に素敵な夫婦関係を築いていれば、独身の人の方から、
「どうしたら私も◯◯さんみたいな素敵な結婚ができますか?」
と聞いてくれそうですよね。
(結婚に憧れている方のみの話です。)
余計な事は言わずに、素敵な背中を見せられる人の方がかっこいいですよね。
肝に銘じて、日々楽しく幸せに、何歳であっても素敵な大人を目指して頑張っていこうと思います。
余談ですが。
空気を凍らせた数分後、私はAさんを玄関までお見送りしました。
彼は私に対して、以前はしなかった、にこやかな笑顔で挨拶をしてお帰りになられました。