メインコンテンツへスキップ
見出し画像

熱があるのに笑ってる君が、こわかった―“元気すぎる病人”にふりまわされる母より―

    「お熱あるから、今日はおうちでゆっくりね」

    そう言った朝。
    娘は、うん、と素直にうなずいた。
    額に手を当てると、たしかに熱い。体温計は38.4度。

    なのに。

    その10分後には、ジャンプしていた。
    布団の上で、ぴょんぴょん。
    「カフェいきたい〜!」
    と、叫びながら。

    あのね。
    さっきまで「ここがいたいの~」と言ってたよね?

    病人のテンションではありません

    保育園をお休みした2歳の娘。
    わたしは看護休暇を取り、仕事は全てオフ。

    「お熱ある日は、たくさん寝ると早く治るんだよ」
    と何度も言い聞かせたけど――

    寝ない。
    むしろ、元気すぎる。
    お昼寝どころか、
    「もうおきる!朝だよ!カフェいこ!」と叫び出す。

    え、あなた病人ですよね?
    ……というか、寝かせてほしいのは、母のほうです。

    ごほうびは、ハーゲンダッツ

    そんなこんなで午前中をフル稼働で過ごしたあと。
    娘の熱は少し下がってきた。

    ちょっとだけ特別に――
    ハーゲンダッツのイチゴのアイスを一緒に食べた。

    ひと口食べて、にこにこ。
    「いちごのおくすりだね」って。

    うん、まあ……薬ではないけれど。
    この笑顔なら、たしかに効果はあるかもしれない。

    パパ、はやくかえってきて!

    夕方。
    夫がいつもより早く帰宅すると、娘は拍手で出迎えた。

    「パパ〜!きょうね、アイスたべたよ!」
    「ねつあるのに、ぴょんぴょんしてたの〜!」

    自慢げに報告しながら、またぴょんぴょん。
    もはや、発熱が幻だったのでは?とすら思えてくる。

    でも、わたしは知ってる

    夜、ようやく眠りについた娘の寝顔は、やっぱりちょっとだけつらそうで。
    おでこに冷えピタを貼りながら、思い出す。

    ぐずぐず言いながらも、わたしの背中にぴったりくっついて、
    「ママ、いてね」って言ったこと。

    ―ああ、そうか。
    今日ずっと元気だったのは、がんばってたんだ。
    小さな体で、「大丈夫」って言い聞かせてたのかもしれない。

    消したくない大切な思い出

    きっと、わたしはこの日を覚えている。
    熱があるのに笑っていた君のことを。
    何度も抱きしめて、
    「寝てくれー!」って願ってたことも。

    それでも、
    「アイスたべて、パパかえってきた日」として
    君のなかで記憶されるなら、
    それもまた、いい一日だったのかもしれない。

    喜木 拝


     
     
    本が好きなのに、今は読めないあなたへ。 本とことばで、忙しい毎日に小さな余白を届けます。 図書館司書/4歳娘の母/ブックシェアコーディネーター。 メンバーシップ「凛のことのはライブラリー」運営中。

    あなたへのおすすめ