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砂浜で、あなたの足あとが増える日を夢見て#シロクマ文芸部

    砂浜で、娘と手をつなぐ日を、夢見ている。

    3歳の娘は、まだ“砂浜”を知らない。
    横浜の海を見に行ったことはある。
    海を前に「うみ!」と叫んだ彼女は、そのスケール感に少し圧倒されていた。
    けれど、そのときの足元は、アスファルト。
    あのザラザラした感触、ぎゅっと握れば固まる感触、海辺の砂のぬくもりは、未経験。

    夏になるたび、私は思う。
    そろそろ海デビュー、させてあげたいなぁ。
    でもどうせなら、きれいな海がいい。
    波がやさしくて、透明度が高くて、人が少なくて――
    ……と、つい理想が膨らみすぎて、なかなか決められない。

    そんな私を横目に、「うみいきたい」と娘はときどき言う。
    カクレクマノミが大好きな娘が望む海はどこだろう。
    彼女の中にある“海”は、きっとアニメや絵本で出会った世界。そこには大きな貝殻があり、足あとが並び、カニがちょこちょこと逃げていく。
    はじめて裸足で踏みしめる砂、はじめて潮のにおいをかぐ瞬間を、想像するだけで、私は胸がいっぱいになる。

    砂浜で、どんなふうに笑うのかな。
    波にびっくりして泣いちゃうかも。
    バケツで水をくんで、「ママみてー!」と叫ぶかも。
    その全部を、見届けたい。

    夏は、思い出を刻む季節。
    来年になるか、再来年になるか分からないけれど、いつか娘と並んで、初めての砂浜を歩こうと思う。
    手をつないで、波打ち際まで歩いていこう。
    「こわい!」としがみつかれたら、ぎゅっと抱きしめよう。

    その日が、来ますように。

    喜木 拝

    #シロクマ文芸部 さんの企画で綴りました。
    「砂浜で」からはじまる、ちょっと未来のエッセイ。
    まだ海水浴デビューしていない3歳の娘と、いつか歩く砂浜のことを想像して綴りました。
    わたしにとっての“夏の夢”です。
    ここまで、お読みいただきありがとうございます💖


     
     
    本が好きなのに、今は読めないあなたへ。 本とことばで、忙しい毎日に小さな余白を届けます。 図書館司書/4歳娘の母/ブックシェアコーディネーター。 メンバーシップ「凛のことのはライブラリー」運営中。

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