メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bytesigoto2025

子どもの「なんで?」100回ノック

    夕方の台所は、
    質問で満ちる。
    小さな声の「なんで?」が、今日だけで100回くらい降ってくる。


    「ママ、なんで空って青いの?」
    「なんでお味噌汁、あったかいの?」
    「なんで靴、右と左あるの?」
    「なんでパパはお仕事いくの?」
    (そして、だいたい最後は)
    「なんで……なんで……なんでぇ?」

    3歳の“なんで期”は、スイッチが入ると止まらない。
    かわいい。愛おしい。……のに、正直、夕方のわたしはだんだん息切れする。

    返す言葉が追いつかない。
    頭の中の引き出しが空っぽになっていく。
    「えーっとね」と言いながら、心の中でこっそり電池残量を確認してしまう。

    それでも、娘の「なんで?」には、ちゃんと理由がある気がして。

    「知りたい」だけじゃなくて、
    “いま、ここにいるよ”って合図だったり、
    “ママとつながっていたい”って確認だったり。
    質問の形をした、抱っこみたいなもの。


    「答える」より先に、「受けとめる」

    司書の仕事をしていると、よく思う。
    質問って、言葉になった瞬間に半分答えが出ていることがある。

    「なにがわからないのか」を、本人が見つけた証拠。
    だから、子どもの「なんで?」も、まずは受けとめたい。

    わたしが最近よく使うのは、この3つ。

    • 「いいところに気づいたね」

    • 「気になるよね。ママも気になってきた」

    • 「いっしょに調べてみようか」

    答えを“すぐ出す”より、
    「その気持ち、ここに置いていいよ」ってテーブルを出す感じ。


    それでも100回は、100回

    ただね。
    100回は、100回なんです。

    「なんで?」が続くと、わたしの口はだんだん雑になる。
    「なんでって言われても……」が顔を出す。
    (ごめん、ママはいま、脳内で洗濯物を畳みながら夕飯を考えてる)

    だから、今日は自分に許した。

    • 今日は“全部は”答えない

    • 今日は“全部は”優しくできない

    • でも、“投げない”だけはやる

    「わかんないなあ」って言っていい。
    「今日はここまで」って区切っていい。
    親は百科事典じゃないし、AIでもない(※たまにAIには頼るけど)。

    大事なのは、質問を終わらせないこと。
    “わからない”を、恥にしないこと。


    図書館みたいに、いったん「預かる」

    娘の「なんで?」に、答えを返せないとき。
    わたしは心の中で、図書館のカウンターを開く。

    「その質問、いったんお預かりしますね」

    レファレンスの世界では、
    その場で答えが出ないことは珍しくない。
    むしろ、「調べる時間」があるから、深くなれる。

    子どもの質問も同じ。
    今日の午後は、付箋に書いて冷蔵庫に貼った。

    • 空が青いのはなんで?

    • 花がねんねしないのはなんで?

    • どうして“ありがとう”って言うの?

    付箋が増えるほど、ちょっと笑ってしまう。
    わたしの家の冷蔵庫、いま一番“知りたい”が集まる場所かもしれない。


    絵本は、答えじゃなくて「いっしょに考える」をくれる

    子どもの「なんで?」は、
    数学の問題みたいに正解が一つじゃないことが多い。

    そんなとき、絵本は助けてくれる。
    “答え”ではなくて、考える時間をくれるから。

    たとえば、
    「空が青いのはなんで?」にぴったりの一冊がなくても、
    空の絵がたくさん出てくる絵本を開いて、こう言える。

    「この空、どんな色に見える?」
    「夕方の空って、なんで赤くなるんだろうね」
    「今日の空は、何色だった?」

    質問は質問を呼んで、
    親子の会話は、少しだけ“探検”になる。


    「なんで?」100回の午後の、いちばん最後

    夕方、ようやく質問の雨がやんだころ。
    娘は急に静かになって、絵本を抱えてきた。

    「これ、よんで」

    ——そうか。
    今日の「なんで?」は、ここに着地したんだ。

    抱っこみたいな質問。
    つながっていたい合図。
    その延長線に、「読んで」がある。

    今日も100回、うまくは答えられなかった。
    でも100回、ちゃんと娘の方を向いた(たぶん80回くらいは)。

    それでいい日にする。


    もしよかったら、あなたの家の「なんで?」も教えてください。
    最近いちばん可愛かった質問、最近いちばん困った質問。
    その話を聞くだけで、明日の午後が少し軽くなる気がします。

    喜木 拝

    画像
    クリックするとメンバーシップへとびます
     
     
    本が好きなのに、今は読めないあなたへ。 本とことばで、忙しい毎日に小さな余白を届けます。 図書館司書/4歳娘の母/ブックシェアコーディネーター。 メンバーシップ「凛のことのはライブラリー」運営中。

    あなたへのおすすめ