
絵本を読まなくても、絵本は読める― ページをめくる、その手のぬくもりと ―
「ママ、つぎ、めくっていい?」
娘のそのひとことが、ふと心に残りました。
絵本がただ読むだけでなく、子どもたちの手の中で、五感を使い、自由に広がる世界なのだと気づかされたのです。
読んでいたのは『りんごです』(川端誠/文化出版局)。
「ママ、つぎ、めくっていい?」
そう言いながら、娘はゆっくりとページをめくっていきます。
娘のその言葉に、私は少し驚きました。
いつもなら「よんで!」と本を差し出してくるのに、その日は自分でページをめくりたがったのです。
この絵本に書かれている文字は、たったひとこと―「りんごです」。
けれど、ページをめくるたびに、食べかけのりんご、りんごの種、りんごの花……
さまざまな“りんご”が、いきいきと現れてきます。
娘は、真剣なまなざしで絵を見つめ、時折、私に問いかけます。
「これ、りんご?」
そして次の瞬間、絵本にがぶりとかじりついてしまうのです(笑)。
まだ文字は読めないけれど、
彼女の中にはたしかに“物語を読む心”が育ちつつあるのを感じます。
読み聞かせじゃなくても、「読んでいる」
私たちはつい、「絵本は読んであげるもの」と思いがちです。
けれど、絵本を前にした子どもたちは、もっと自由で、もっと柔らかく、
自分なりのやり方で、“物語”を受け取っているように思います。
ページをめくる。
指をさす。
絵に向かって話しかける。
それらすべてが、子どもにとっての「読む行為」なのかもしれません。
では、文字を読めない子どもが「読む」って、どんなこと?
声に出していないときの読書って、どういうもの?
今日はそんな、“ことばのない読書体験”について、
娘の姿を通して、母として・司書として、静かに、でも確かに心に残った3冊とともに綴ってみたいと思います。
▼ここから先は、メンバーシップ限定です▼
母として、司書として感じた、絵本を「読まないように読む」体験を3冊の絵本とともにお届けします。