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兼業主夫の“なんとかする力”

    「兼業主夫」。

    この言葉が持つ響きには、どこか新しい時代の空気と、同時にいくばくかの戸惑いが含まれているように感じるのは私だけだろうか。

    フルタイムの仕事ではないにせよ、社会との接点を持ちながら、家庭運営と育児の舵取りを主に担う。

    それは、従来の性別役割分業の枠組みから少しはみ出した、いわば境界線上の存在だ。

    私自身、そんな「兼業主夫」としての日々を送る中で、否応なく鍛え上げられてきた能力がある。

    それは、決してスマートでも計画的でもないかもしれないが、極めて実践的な生存能力――言うなれば、“なんとかする力”である。

    この力は、教科書には載っていない。

    しかし、予測不能な日常を乗り切り、家庭という名の小舟を沈ませずに漕ぎ続けるためには、不可欠な羅針盤なのだ。

    ✅「完璧」という名の呪いを解く

    主夫業を始めた当初、私は無意識のうちに「完璧」という名の呪いにかかっていた。

    料理は栄養バランスを考え彩り豊かに、掃除は隅々まで塵ひとつなく、洗濯物は香り高くふんわりと。

    そして子供には常に笑顔で、成長を促すような関わりを。

    あたかも、それが家庭を守る者の「あるべき姿」であるかのように。

    メディアが描き出す理想の家庭像や、あるいは「男が家事をするからには、これくらいできなければ」という見えないプレッシャーが、私を雁字搦めにしていたのかもしれない。

    しかし、現実は甘くない。仕事の締め切りが迫る中で鳴り響く子供の夜泣き、予定通りに進まない買い出し、予期せぬ発熱。

    すべてを完璧にこなそうとすれば、心身はあっという間に擦り切れる。

    疲弊し、笑顔が消え、家庭の空気まで淀んでいく。

    その時、気づいたのだ。「完璧」を目指すこと自体が、目的を見失わせる罠なのだと。

    大切なのは、ピカピカの床よりも、そこに住む家族の笑顔。

    手の込んだ料理よりも、食卓を囲む和やかな時間。完璧なスケジュール管理よりも、突発的な出来事にも対応できる心の余裕。

    そう気づいてから、私は「まあ、いいか」という魔法の言葉を覚えた。

    冷凍食品に頼る日があってもいい。

    掃除が多少行き届かなくても、生活は回る。子供の前で疲れた顔を見せても、親子関係が壊れるわけではない。

    むしろ、完璧ではない自分を認め、許すことで、肩の力が抜け、本当に大切なことを見つめ直す余裕が生まれた。

    それは、諦めとは違う。

    優先順位を見極め、限られたリソース(時間、体力、気力)を最適配分する、極めて現実的な判断力なのだ。

    この「完璧」の呪いを解くことこそ、“なんとかする力”の第一歩だった。

    ✅変化を“面白がる

    兼業主夫の日常は、変化と不確実性の連続だ。

    子供の成長段階によって生活リズムはがらりと変わり、仕事の状況も常に変動する。


    予期せぬトラブルは日常茶飯事。当初、私はこの変化にいらだち、計画通りに進まないことにストレスを感じていた。

    しかし、ある時から、その変化そのものを「面白がる」という視点を持つように努め始めた。

    例えば、子供が突然「今日のご飯は自分で作る!」と言い出したとする。

    キッチンが粉まみれになることは想像に難くないし、時間も余計にかかるだろう。

    以前なら「やめてくれ」と思っていたかもしれない。

    しかし、今は「ほう、どんな独創的な料理が生まれるかな?」と、一種のエンターテイメントとして捉えてみる。

    もちろん、安全には最大限配慮するが、プロセスそのものを楽しむ視点だ。

    仕事と育児の狭間でスケジュールが破綻しそうな時も、「さて、どうやってこのパズルを解こうか」と、ゲーム感覚で捉えてみる。

    誰かに助けを求める、優先順位を大胆に入れ替える、いくつかのタスクを諦める。

    そこには、創造性や交渉力、そして決断力が試される。

    失敗することもあるが、その経験すらも「次への学び」として面白がる。

    この「面白がる」という姿勢は、単なる精神論ではない。

    変化を脅威ではなく、学びや成長の機会、あるいは日常に彩りを添えるスパイスとして捉え直すことで、ストレス耐性は格段に上がる。

    そして、固定観念にとらわれず、柔軟な発想で目の前の課題に取り組む原動力となる。

    計画通りに進まないことを前提とし、そのズレや揺らぎの中から、次の一手を見つけ出す。

    これもまた、“なんとかする力”の重要な側面なのだ。

    うまくいかないこと、予定調和を崩されることを、眉間に皺を寄せて受け止めるのではなく、少しだけ口角を上げて「さて、どうする?」と呟いてみる。

    その小さな態度の変化が、困難を乗り越える推進力を生む。

    ✅まとめ

    「完璧」の呪いを解き、変化を「面白がる」。

    この二つを両輪として、兼業主夫としての私の“なんとかする力”は、日々の実践の中で少しずつ磨かれてきたように思う。

    それは、洗練されたスキルセットというよりは、泥臭く、場当たり的で、しかし確実に生き抜くための知恵と呼ぶ方がふさわしいかもしれない。


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