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わたしにとって米とは

    どうも、りんだーくです。
    スーパー主夫なんて呼ばれることもありますが、その実態は、かつて、育ち盛りの子供たちと食欲旺盛な猫三匹の胃袋を満たすため、日々キッチンとスーパーを往復していた、ごく普通の50代のオジサンです。

    さて、突然ですが、あなたにとって「米」とは何でしょうか?
    エネルギーの源?食卓の主役?わたしにとって米とは、単なる食べ物という言葉では片付けられない、少しばかり複雑で、けれどどこか愛おしい存在なのです。

    米、それは我が家代々の産業であり、この米でわが一族は大きくなったといっても過言ではないかもしれません。
    なぜかというと、その昔は、殿様に取り立ててもらえるぐらいの大地主で、じいちゃんなどから聞いた話で想像するに、かなりのお屋敷様だったらしい。
    たぶん、その大きさにじいちゃんも父もかなりのプレッシャーだったのだろうと想像がつきます。

    ✅住み込みの女中さんがいたという話

    わたしの父がまだ小さかった頃、家には住み込みの女中さんがいたそうです。
    朝になれば食事が用意され、汚れた服はいつの間にか綺麗になっている。
    そんな、まるでドラマのような生活が、かつての我が家にはあったのだとか。

    その話を聞いた時、わたしはちょうど妻の単身赴任が始まり、ワンオペ育児の渦中でてんてこ舞いになっている真っ最中でした。
    朝は戦場、夜は気絶。
    そんな毎日の中で、「女中さん、か…」と遠い目になったのを覚えています。女中さんがいた家で育った父がいて、その息子であるわたしが、なぜか時空を超えて家事と育児を一手に引き受けている。
    人生の皮肉というか、ユーモアというか。

    わたしが物心ついた頃には、もちろんそんな面影はひとかけらもありませんでした。
    ただ、「本家の長男」という、形骸化した権威だけが、古びた柱の傷のように残っている。
    そんな家で、わたしはアルコールに溺れる父の姿を見て育ちました。
    アダルトチルドレンだったわたしにとって、家は安らぎの場所ではなかった。
    だから、「女中さんがいた」という過去の栄華は、まるで別世界の御伽話のように聞こえたものです。

    ✅実家からかなりはなれた場所までがうちの土地だった

    これも、祖父や近所のご老人たちから聞いた武勇伝のような話です。
    「あの学校が建ってるところも、昔はりんだーくさんちの田んぼだったんだぞ」 「あの工業団地も、ぜーんぶな」

    子供の頃は「へぇ、すごい!」なんて素直に驚いていましたが、大人になるにつれて、その言葉の重みが少しずつわかるようになりました。
    うつ病とパニック障害で身動きが取れなくなり、ただ息をすることさえ苦しかった時期。
    そんな時、ふと、その広大だったという田んぼの風景を想像しました。

    黄金色に輝く稲穂が、風に吹かれてどこまでも続いている。
    その土地を耕し、米を育て、一族を支えてきたであろうご先祖様たち。
    その末裔であるわたしは、部屋の隅で膝を抱え、得体のしれない不安に押しつぶされそうになっている。
    その途方もないギャップに、なんだかおかしくなって、ふっと笑いがこみ上げてきたことがあります。
    それは、絶望の淵で見た、一筋の光のような笑いでした。

    病気を経験したからこそ、わたしは気づいたのかもしれません。
    広大な土地も、過去の栄光も、わたしの心を救ってはくれない。
    わたしが本当に求めていたのは、安心して「ただいま」と言える、ささやかな居場所だったのだと。

    ✅まとめ

    人生とはわからないものです。
    大地主の伝説を子守唄のように聞きながらも、わたしはその豊かさを実感することなく育ちました。
    むしろ、その「見えない重圧」が、わたしの生きづらさの一因だったのかもしれません。

    だから今、わたしにとっての「米」は、特別な感情を呼び起こします。

    それは、過去の栄光への憧れではありません。
    むしろ、その伝説から解放された安堵感と、自らの手で炊き上げる一膳のご飯への、確かな愛情です。
    妻が単身赴任を終え、不規則ながらも家族が食卓を囲む週末。
    娘や息子の「おかわり!」の声。
    わたしが淹れたコーヒーを飲みながら、「いつもありがとう」と呟く妻。
    その何気ない日常こそが、かつての広大な田んぼよりも、ずっとずっと価値のある、わたしだけの「豊作」なのです。

    そんなことを考えながら、今日もわたしは米を研ぐ。
    一粒一粒に宿る物語を感じながら。
    それが、たくさんの遠回りをしてきたわたしが見つけた、ささやかで、かけがえのない幸せの形なのです。


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