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Photo byiwa_nori

もう二度と、僕は長ぐつアイスホッケーをやらない。

    長ぐつアイスホッケー:長靴を履いてアイスホッケーを行うスポーツ。

    Wikipediaより


    北海道出身だからといって、皆が皆ウィンタースポーツに現うつつを抜かしていると思わないでほしい。

    中には、「冬はやっぱりサビーナ~」と身を縮こませながら、ストーブの前で体育座りをしている人種だっているのである。

    さらには、僕は道東(北海道東部のこと)出身ではなく、スケート経験はおろか、スケートリンクに入ったことすらない。

    そんな僕に「長ぐつアイスホッケーやらないか」と声をかけた先輩は、大変失礼ではあるが、常軌を逸しているとしか思えない。

    そりゃあね、ピチピチの新卒ですから? 先輩の言うことは絶対に等しかったわけですから? やりますよ。ええ、やりますとも。


    ◇


    不本意ながら、長ぐつアイスホッケーをやることになった。社会人1年目の冬のことだ。

    わらわらとリンクに集まり、簡単な説明を聞かされ、レンタルの道具やら防具やらを受け取る。

    先輩(声をかけた人とは別)が僕にゼッケンを渡した。番号は「1」となっている。
    そして彼は、僕に絶望を与える一言を発した。


    「アルロン、お前キャプテンな」


    キャプテン!?
    キャキャキャキャプテン!?!?!?

    おいおい、大丈夫なのかこのチーム!?
    ろくにスケートも滑ったことのない人間をキャプテンにするだと!?

    しかも、キャプテンはフィールドを縦横無尽に駆け回る、非常に疲れるポジションだというではないか。

    冗談じゃない! こんな競技やってられっか! バーカバーカ!

    …なんて言えるはずもなく、僕はテンションどおり低い声で「はい」と答えるしかなかった。



    ついに長ぐつアイスホッケー大会が始まった。始まってしまった。

    チームは全部で4つ。試合は総当たり戦で行われる。
    社会人だけでなく、地元の小学生のチームもあった。皆アイスホッケー少年団のメンバーなので、どう考えても僕より上手だ。

    長ぐつアイスホッケーの基本ルールはよく知らないが、スティックでボールをゴールに突っ込めばいいみたいだ。
    ボールを打つか蹴るかの違いだけで、基本的にはサッカーと同じ要領というわけか。

    試合開始のブザーが鳴った。

    ボールは相手チームにある。
    とりあえず、ボールを相手からなんとか奪取しなくては。

    …と思ったら、味方がボールを捉えた。そして、チームメイトが叫ぶ。


    「アルロンー! 上がれー!」


    僕は駆け出した。氷上では、走るより速く我が身を風に乗せられた。

    しかし、誤算があった。止まれない。


    「わーーーーー」


    ボール奪いの小競り合いをしている集団を抜け、相手のディフェンスを抜け、相手のゴールを抜け、僕はリンクの壁に衝突した。いってぇ。

    振り向くと、ボールはなんと相手チームに。

    すかさず、チームメイトが叫ぶ。


    「アルロンー! 下がれー!」


    僕はまた駆け出した。運動量だけは、このスケートリンク内の誰よりも多い自負がある。

    しかし、技術は未熟。やっぱり止まれない。


    「わーーーーー」


    今度こそ止まろうとジタバタするが、走り出した僕を止められるものは何もない。こんな言い方だとなんかちょっとカッコいいが、ただ下手くそなだけなのである。

    フィールド上の全員をごぼう抜きにした後、案の定リンクの壁(今度は味方のゴール側)にびたーんとぶち当たった。いってぇ。

    すると、またチームメイトの声が聞こえてきた。


    「アルロンー! 上がれー!」


    無理無理無理無理! もうやめて! とっくにアルロンのライフは0よ!

    …なんて言えるはずもなく、僕は再三ロケットスタートを切ることになった。

    しかし、千代の富士さながらに体力の限界である。苦手なスポーツ、慣れないリンク、キャプテンの重圧、すべてが僕の体力を蝕んでいた。

    ヘロヘロになりながらもなんとか前に進もうとする。あまりにもヘロヘロすぎて、普通に滑走することもままならない。僕は何もないところで転んでしまった。

    すると、観戦していたアイスホッケー少年団の小学生が、僕を指さしこう言った。


    「あはは! 何あれー!」


    屈&辱。何が悲しくて小学生に蔑まれなければならないのか。
    大学を卒業して、見知らぬ町に一人移り住み、粛々と公務を全うしてきた。にもかかわらず、こんな仕打ちを受けることになろうとは。このことをお母さんが知ったら、涙がちょちょぎれること必至だ。

    決めた。もう二度と、僕は長ぐつアイスホッケーをやらない。

    もうやらないからな! 誰か長ぐつアイスホッケーなんてやってやるもんかよ! バーカバーカ!

    …なんて言えるはずもなく、数年後、また先輩に声をかけられた僕は、再び氷上のピエロと化すことになる。


    #66日ライラン

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    物書き(エッセイ、小説)。kindle『不憫男子〜フビダン〜』発売中。商業作家を目指して修行中。宮崎智之エッセイ講座1期生。ミキアカ生。ポケモンとDOMOTOと特撮とコナンが好き。Amazonアソシエイト参加中

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