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【FROFES2026】第二夜『深淵の呼び声』|二階堂零

    第二夜『深淵の呼び声』

    与那国島へ向かう飛行機の中で、俺はポケットに忍ばせた小さな箱を確かめていた。
    この事件が解決したら、翔子に渡すつもりで用意したものだ。

    「何か大切なものですか?」

    隣の席から、久世玲央が声をかけてきた。

    「まあ、そんなところだ」

    俺は箱をポケットの奥へ押し戻した。
    俺と翔子は、子供のころからずっと一緒にいる。
    恋人でも夫婦でもない。名前のない関係のまま、今も同じ家で暮らしている。

    告白なら、一度だけしたことがある。
    ただし、自分の意思で言ったわけじゃない。言わされたのだ。
    それがどういう経緯だったのかは、もうどうでもいい。
    あの瞬間から、俺たちの何かが始まった。
    それだけは確かだった。

    翔子はいい女だ。
    俺みたいなロクデナシには、もったいないくらいの女だ。
    俺だって、あのとき以上に純粋な気持ちを、もう二度と言葉にできるとは思っていない。
    あの一瞬に、俺たちは時間ごと閉じ込められてしまったのかもしれない。

    それで十分だと思っていた。
    いや、そう思うことにしていた。

    「ずいぶん静かですね。飛行機が苦手なんですか?」
    「いや。ちょっと昔のことを思い出してただけだ」
    「いい思い出ですか?」
    「さあな。俺にはもったいない思い出だよ」

    玲央は不思議そうな顔をしたが、それ以上は聞いてこなかった。

    二年前のことだ。
    いつもの浮気調査で、逆恨みした男に腹を刺された。
    気づけば病院のベッドの上だった。
    翔子が仕事も放り出して駆けつけたことは、あとから聞いた。
    意識を取り戻した俺に、あいつは言った。

    「あんたを殺すのは、私って決めているんだから、勝手に死なないで……」

    泣いていた。
    あの翔子が。
    俺は何も言えなかった。

    あれから二年。
    俺たちの関係は、相変わらず名前のないままだ。

    「もうすぐ着きますね」

    玲央が窓の向こうを見ながら言った。

    「そうだな」
    「今回の調査、何事もなく終わればいいんですが」
    「そう願いたいね。こっちは人探しが仕事なんだ。海底遺跡なんて専門外だからな」

    玲央が小さく笑った。
    俺は携帯を取り出した。

    『今月末までに帰る。祝いのワインを用意しておいてくれ』

    しばらくして返信が届いた。

    『何の祝い?』
    『俺とお前』
    『だから何?』
    『これから考える』
    『バカなの?』

    思わず笑ってしまった。

    「どうかしました?」
    「いや、なんでもない」

    俺は携帯をしまい、窓の外へ目を向けた。
    雲の切れ間に、青い海が見え始めていた。

    「この仕事をきっちり終わらせて、次のステージだ」

    玲央は、もう何も言わなかった。


    COSMIC HORROR NIGHT
    第二夜『深淵の呼び声』
    歌唱:二階堂 零

    ぜひ、最後までご覧ください。

    庭師ふろんたさん主催「FROFES 2026」

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    ひとり言

    さすがに三夜連続は、無理っぽいな……

     
     
    AIと一緒に小説を書いたり、歌を作ったりしています。 ここではそんな作品と、その舞台裏を書いていこうと思っています。 ちょっとした暇つぶしに、楽しんでいただければ幸いです。 カクヨムでは別名義で小説を掲載しています。

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