
『往来絵巻 貸本屋おせん』高瀬乃一
住んでいた長屋が火事になってしまい、家に置いてあった本がすべて焼けてしまい、おせんは途方に暮れていました。しばらくするうちに、客に貸していた本や錦絵が戻って来て、なんとか梅鉢屋として営業することはできるようになったとはいえ、品数が少ないのが悩みの種です。
本を担いでお得意さんや本屋を周っていると、おせんの身の上を知ってか知らずか、本屋以外の仕事を頼まれることが増えました。あそこの家へ届け物をしてくれとか、こんな仕事を引き受けてくれる人を紹介してくれないかとか、しまいには、事件の調査まで頼まれてしまいます。本を届けるという仕事柄、いろんな所へ行くし、調べ物が好きだから、探偵には向いてるのかもしれません。
おせんが生きていたのは、2代目の蔦屋重三郎のころです。昔ほど厳しくはないけれど、本の内容に関する決まりはけっこう厳しくて、幕府の悪口なんか書いたら、牢屋に入れられてしまう時代です。でも、書いちゃいけないと言われると、やりたくなるのが人の性です。ご禁制の本を見つけたら、高く買ってくれるという客だっているからこそ、事件が起きるのです。
第一話 らくがき落首
第二話 往来絵巻
第三話 まさかの身投げ
第四話 みつぞろえ
第五話 道楽本屋
江戸時代に出版されていた本のうち、大きな本屋が出すのは、版木を作って刷るという方法でしたが、これには技術もいるし、お金もかかります。ですから、安い貸本屋の場合は、文章を書き写していました。そして、ページ数が多いものの場合は分冊にして、短時間で読み切れるようにするという工夫もしていました。貸本屋は、大勢の人に読んでもらう必要があるから、そういう手法を考え出したのですね。そういえば、前作(貸本屋おせん)では、おせんも夜なべで書き写しをしていましたね。
貸本屋がいるということは、それだけ本を読む人がいたということで、江戸の町での識字率はかなり高かったのでしょうね。
おせんの夢は、いつか店を持つことなのだけど、それは見果てぬ夢なのかなぁ。でもがんばれ、おせん!